小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”こちらゴーイング・メリー号甲板大砲前ウソップ”



〜Side ウソップ〜



「あーあー、こちらウソップ、こちらウソップ!! ルフィ、聞こえますかどぉぞー!!…………?」


 ルフィからの返事が無ェ事を不振に思っていると、突然砲撃音が聞こえてきた。


「おわっ!!? お前何やってんだ、突然!!?」

「大砲の練習だよ。でもうまく飛ばねェもんだな」


 音のした方を見ると、どうやらルフィが撃ったみてェだったから何事かと思って聞いてみたら、練習だと?


「練習ってオイッ!!! 何この距離で道草食ってんの!? てめェは船の端から端まで集中力もたねェのか!!」

「おっ!! ウソップもやってみねェか?」


 おれがキレてる理由をルフィは分かって無ェみたいで、無邪気におれに聞いてきた。我慢の限界だ。


「『やってみねェか?』じゃねェェェ!! お前が船内無線が欲しいっていうから、糸電話作ってやったんだろうが!! そんなとこで立ち止まってるせいで糸だるんだるんだぞ?? だるんだるん!!!」

「そんなもん無くても声きこえてるじゃねェか??? それよりお前やってみろよ!!」


『そんなもん』って、作れって言ったのはコイツなのに、


「一発じゃあ!! いっぱつで当てたるわァ!! あの岩か…………っココだァ!!」

「すげーーーーー当たった、一発で!!!」


 当てる気で撃ちはしたけど、まさか一発で当たるとは思わなかった。


「んナ!? 言っただろう? こんなおれを讃えるなら、キャプテンと呼んでいいぜ!!」

「お前は”ツッこみ”だってタクミが言ってたぞ?」


 アイツ、マジでおれの事を”ツッこみ”として推薦しやがった!!!


「あ・の・野・郎〜!!! 合流したら精神的攻撃(スピリチュアルアタック)だ!!! もうむし!! ムシムシ!!」

「はっはっはっは!!! やっぱお前おもしれェなァ!! そう言ってからかってみろって言われてただけだよ。お前はさ、”狙撃手”に決まりだな!」


 おれの反応を予測して、他人にボケを託すとは、アイツなかなかやるな? にしても”狙撃手”か。コイツの話じゃオヤジも射撃の名手らしいし、悪くはねェな。


「まァ”ツッこみ”よりは、マシだな。ひとまず”狙撃手”に甘んじといてやるが、おれの渾身の力作”糸電話EX”を無駄にすんじゃねェ、遊ぶぞ!!」

「だってそれって、無線じゃねェじゃん」


 ルフィにまともにツッこまれちまった。修行が足りねェな……って何の修行だよ!!!



〜Side ゾロ〜



 帆のマークを書き終え、おれとナミが休憩を取っていると、船に轟音が鳴り響いた。


「おわっ!!? お前何やってんだ、突然!!?」

「大砲の練習だよ。でもうまく飛ばねェもんだな」


 アイツにそんな事させてたら碌なことが起きねェから止めようかとも思ったけど、ウソップが行ったから任せよう。

 それよりナミが少し心配だ。あの二人と要るときは楽しそうに笑ってるし、別にそれが演技の様には見えねェ。

 けど、おれと二人の時はあんまり喋らねェで何か考え事をしてるみてェだ。たぶんおれからほとんど話しかけねェからだと思うけど。

 ナミは、昨日の夜、タクミの為に買った酒を一人で飲んでた。まあ何となく理由がわかったけどおれにはどうしようもねェから黙って一緒に酒飲んだだけだ。

 あんなにタクミを置いてきた事に憤慨していたルフィは、今はウソップとわいわいやってる。

 コイツもあれぐらい気楽になれりゃあ楽だろうに。

 まぁ一人にしとくのもなんだし、しばらくはココにいるか。



〜Side ナミ〜



 タクミを置いて出航した昨日は、ルフィが本当にうるさかった。

 あまりにしつこいから『わたしの為にやってくれてることがあるのよ……今はわたしに勇気がなくて言えないから。もう少し待ってて』って言ったら、『そっか、タクミらしいな』って納得したみたい。

 その反応を見て、ルフィはタクミのこと解ってるんだなって思ったわ。話さなくても解るんでしょうね。

 男ってイイなって思いながら、タクミに買った「オロロソ・シェリー」を一人で飲んでたら、テーブルの向かいにゾロが座った。

 ゾロはそのまま黙って一緒に飲み始めたわ。ゾロはわたしを心配してくれてる。それくらいは付き合いの短いわたしにも解ったから、心の中でだけありがとうと呟いて、わたしはここち良い酔いを楽しんだ。

 今はルフィデザイン、ウソップ主導製作で海賊旗と帆が完成して、ゾロとわたしはメインマストの下で休憩している。ゾロはやっぱり何も言わないけど昼寝もしないでそこにいてくれる優しさが嬉しかった。

 タクミと海軍との交渉が上手くいく事を願いながら、わたしはメリー号の甲板に寝そべって目を閉じた。
 
 
 

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