” 〜ツッこみのウソップ〜 ”
〜Side ウソップ〜
おれ達は今、三人でレストランを出て、ナミの暮らしていたココヤシ村に、メリー号で向ってる。甲板ではタクミがタバコを吸っていて、ナミはその近くで本を読んでいる。
そして、おれはというと、『見張り、お願いね』とナミに言われて、ひとりメインマストの見張り台の上だ。
ナミのヤツ、おれを追っ払いたいだけじゃねェのか? 今までは本を読むなら船内だったじゃねェか。タクミとナミってこんなに仲良かったんだな。
大体あの時はすんなりこのチーム分けに納得したけど、コレっておれを雑用に使うためじゃねえのか? そうなのか? いや、タクミはおれをからかうのを心底楽しんでるみてェだけど、そんなことは考えねェだろ……一応聞いてみるか。
「なあタクミ、そういえばよ、なんでおれがコッチのチームなんだ?」
「んー? 簡単なことだろ? 現在の戦力を均等に分配しただけのことだ」
なるほど、ルフィもゾロも強いのはクロネコ海賊団との戦いで知ってる。でも、タクミがぶっちぎりで一番強いんだろう、ナミもかなり強かったな…………ん?
「それはおれが極端に弱いってことかァ!!!」
おれはかなり憤慨した。どう考えてもタクミだけで戦力過多の状態だ。案内役のナミが必要なのは当然だけど、おれまでコッチに入れる必要はねェ。
つまりおれはマイナス要素、タクミが守らなきゃならねェ存在って認識されてる事になる。
「……ウソップって強かったっけ? この数日でレベルアップしたんだ、やるじゃん。こっちのチームに入れて悪かったな」
こ〜の〜野〜朗〜!!? 人が真面目に聞いてるのに、バカにしたボケをかますとはやってくれるじゃねェか……そうだ、おれはコイツをムシするって決めてたんだ。今こそ実行の時!! 今後コイツとは口を聞かん!!
ボケをムシされる事ほど辛いことは無いだろう。ツッこみの大切さを思い知るがいい!!
「………………」
「そんなに落ち込むなよ……頑張ってナミを超えるところから始めてみろ」
タクミは慰めてきた。って事は、さっきのはいつものボケじゃなくて、本気で言ってたってことだ。おれはなんかムカついてきて、ムシ発動中だったが思わず言い返した。
「本気で言ってたのかよ!! 余計にタチ悪いぞお前!! 今までのも全部本気か!! 喧嘩売ってんのかコラァ!!」
「はっはっはっは!!! そんな訳ないだろ? ルフィは性格上、約束をしたんだからあそこを一週間離れられないし、ゾロはあそこに居れば”鷹の目”に会えるかもしれないから残したんだ。後の俺達三人は、目的地に直ぐに向かったほうが効率的だろ? 後、ヨサクとジョニーのこと忘れてないか? まぁ、アイツらは案内役として置いて来たし、ゾロの傍を離れないと思ったからだけどな。戦力的には大差ないだろ? もっと自分に自信を持て!! あと、ツッこみがくどいから何とかしてくれ」
結局冗談だったらしい。ふざけやがって最初からそう言え!! いや、被せボケに対応できなかったおれがいけなかったのか?……!!?
「ツッこみはもういいだろうがァ!!」
いつの間にか、ツッこみを真面目に考察するようになっちまってる自分を否定する為に声を張ったんだが、続くナミの言葉におれは愕然とした。
「……結局ツッこんでるじゃない」
…………おれもう”ツッこみ”でイイや。
〜Side ナミ〜
タクミはウソップといるときが一番楽しそうかもしれない。そう思うと、何か意地悪したくなって、ウソップを見張り台に追いやってしまった。
タクミは例の大佐に貰ったっていうタバコを吸っていて、真剣な顔して何かを考え込んでいるから、近くに座って本を読む事にした。
しばらくするとウソップが降りてきて、またタクミと漫才をはじめた。
はぁ、やっぱりわたしといるときより楽しそう。
わたしはウソップが少し羨ましくて話に割って入った。
「結局ツッこんでるじゃない」
呆けているウソップの顔はかなりおもしろくて、わたしはタクミと声を上げて笑った。
コノミ諸島に着くまでの間、わたしもウソップで遊んでみようかしら?