小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”わたしの妹がこんなに笑顔なわけがない”



〜Side ノジコ〜



「……ノジコ、わたしはもう迷わない…………わたしはアーロンと戦う!!」


 驚いた。今日の昼過ぎに仲間を二人連れて帰ってきたナミは、自分とこの村が置かれている現状を説明し、あろうことか打倒アーロンを宣言した。

 確かにその状況からすると、このままではココヤシ村はアーロンの支配から逃れる事は出来ないんでしょうけど、魚人に戦いを挑むなんて馬鹿げてる。


「ナミ、あんた自分が何言ってるか解ってんの? 今まで海軍の船が何隻沈められてきた? アーロンには勝てない!! そんな事は解りきってるじゃない!!」


 わたしは思わず声を荒げてしまった。もしもナミが死んでしまったら、わたしはベルメールさんに顔向け出来ない。


「じゃあどうするの? このまま支配され続けるって言うの?……」


 そんなわたしにナミは静かに問いかける……わたしには答えが出せない。出せるワケがない。

 ナミは、今度はハッキリした口調で語り始めた。その表情には余裕すら見える。


「わたしは初めて、本当に信頼できる、命を預けても構わないと思える仲間に会えたの。ノジコ、わたしを信じて。わたしと、わたしが信じた仲間を!!」


 わたしはナミの言葉に、仲間だと紹介された二人をみる。

 探るようなわたしの視線を受けて、銀の長髪の男は静かに頷く。

 長い鼻が特徴的で、少しだけアーロンに似た顔立ちの男は、わたしの視線に驚いたみたいだけど、隣の男の様子を見て決意したように頷いた。

 わたしは観念して溜め息をつき、変わらないとは思ったけど、ナミの意思を再度確かめた。


「わかったわ。わたしはあんた達を信じる……でもね、村のみんなにはなんて言うの? みんな……本当はあんたが裏切ってないって事も、わたし達の為にお金を貯めている事も全部知ってんのよ? あんたの負担にならない様に知らない振りをして、8年間一緒に戦ってきてくれたんだ。アーロンを倒せなければ、おそらく村は見せしめの為に潰される…………アンタはそれでも戦うの?」


 ナミはかなり驚いてた。それはそうでしょうね、8年間のみんなの思いを知ってしまったんだから、もう自分一人の考えではアーロンと戦えない。

 それでも、少しだけ嬉しそうな顔をしながらナミは言った。


「ちゃんと言うわ。その時は……わたしと一緒に、死んでって!!!」

「…………ははははは、あんたらしいわ。頑張んな。でも、あんた達だけでは戦わせない!! その時はわたし達もついて行くわよ!! それだけはみんなだって譲らないハズだから」


 断ろうとしたんでしょうね。ナミは一瞬キツイ顔をしたけど、わたしの目を見て、引き下がらない事を悟ったのか、苦笑いして手を差し出してきた。


「ありがとう、ノジコ」


 わたしが手を握り返すと、ナミは今度はとびっきりの笑顔で応えた。


 ナミが元気でいてくれるなら……これは正しい選択なんだ。


 ナミのを笑顔を守ってくれた仲間に、わたしは心から感謝した。



〜Side タクミ〜



 ノジコに話を通した俺たちは、今それぞれ動き始めている。ナミはノジコと二人で村のみんなに説明をしに行って、その後は一度アーロンパークに顔を出してきてもらう事にした。

 ナミにとっては行くだけでも辛い場所だろうが、ナミがこの村に帰ってきている事はおそらくバレている。俺たちはナミの私兵で、次の航海にも連れて行く予定とでも行っておかなければ、ルフィ達が来る前に事が起きてしまう可能性があるからな。

 俺とウソップは、とりあえずお金の場所を移さねばという事で、箱を掘り返しているところ。

 ウソップは先程から無言で穴を掘り続けている、ナミに聞いたアーロン一味の戦力を聞いて血の気が引いたようだ。


「なあ、おれはどいつと戦えばいいんだ?」


 堪らなくなったようでウソップが訊ねてきた、サンジを計算に入れてないだろうからちょっとからかっておこう。


「そうだな、アーロンは船長のルフィが戦うとして、六刀流のタコはゾロ、一番体つきが細いヤツをナミがやるから、ウソップの相手は空手家だな」

「……ちょっと待て!!? お前はどうすんだよ!!?」


 幹部との戦闘に俺の名前が挙がってこないのに気づいたウソップは、凄い勢いで食いついてきた。俺と代わってもらおうとか考えてるな? 甘い!!


「俺か? 一般戦闘員を全滅させて、グランドラインの生物を倒して、ネズミ大佐を撃退する。大忙しだな」

「た、たいへんそうだな……頑張れよ」


 俺の言ったことは聞けば大変そうだが多分一番簡単な仕事だろう。ウソップは俺が助けに入れないと悟り、どう足掻いても勝てそうに無い、対クロオビ戦をシュミレートし始めたようだ。


 悩め。大いに悩め。俺は笑わせてもらう。


 ……自分で言うのもなんだが、何かさらに性格悪くなってきたな。



〜Side ウソップ〜



「俺か? 一般戦闘員を全滅させて、グランドラインの生物を倒して、ネズミ大佐を撃退する。大忙しだな」


 コイツ今回は何もしないつもりじゃないかと思って聞いた俺に、タクミは事も無げに言った。コイツはこれからも常に矢表に立とうとするんだろうな。

 何か言ってやろうかと思ったけどヤメた。タクミは一度出し抜かれたって言う海軍大佐に挑むんだ。コイツをどうこうするような相手に、おれなんかのアドバイスは役には立たないだろう。


「た、たいへんそうだな……頑張れよ」


 おれにはそれぐらいしか掛けてやれる言葉は無かった。


「ああ、お前もな。ウソップならやれるよ」


 タクミはおれを励ましてくれた。おれならやれると、信じていると。

 いつもふざけてばかりのコイツにそんな事言われたら調子くるっちまうじゃねェか。


 そうだ……おれはあの時タクミをみて決意を固めたんじゃねェか。おれも海賊に、”勇敢なる海の戦士”になるんだって。


 無理でも何でもやってやらァ!! おれは一味の信頼に応えて見せる!!!
 
 
 

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