小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”眉と藻”



〜Side サンジ〜



 おれは今、賞金稼ぎユニットを名乗る”ヨサクとジョニー”の船に乗り、バラティエで出会った”姫”ナミさんの故郷へと向かっている。ルフィとあの”海賊狩りのゾロ”も一緒だ。

 海賊王を本気で目指す船長ルフィに誘われて、コイツらの生き様を目の当たりにしたおれは、この一味にコックとして加入し、”オールブルー”を目指す決意をした。

 まぁ、クソジジイやパティ達の後押しがあったからこその決断で、おれとしちゃあ何とも締まらねェ船出になっちまったがな。

 その別れの船出に、ヨサクとジョニーは感動したとかで、ついさっきまで号泣していた。そういえば、コイツらはロロノアの元賞金稼ぎ仲間で、本当の意味では一味の仲間じゃないらしい。

 まだおれを入れて六人しかいねェ一味らしいが、おれは少数精鋭ってヤツは嫌いじゃねェし、何よりあのナミさんとの旅に心が躍る。コイツらの為なんかじゃなくて、早くナミさんに料理を作って差し上げたい。


 そのナミさんの事情は、さっきコイツらから聞いた。ヨサクとジョニーは無茶な相手だと必死になってロロノアを説得していたが、相手が半魚野郎だろうと知ったことじゃねェ!!

 ナミさんが今まで泣かされてきた。戦う理由はそれだけで十分だ!! それより早くいかねェと胸騒ぎがする。

 バラティエで少し見た程度だが、あの銀髪を見るときのナミさんの目は危険だった!! 早急にあの男の毒牙からナミさんをお助けしなければならない。


 ルフィは信じられねェことにクリークとやりあった傷は肉食わせたらほとんど治って、今はバラティエでおれが張ってやった絆創膏すらしていない。どういう体してんだ? コイツ?

 ロロノアも平気そうな顔をして眠っちゃいるが、コイツのは只のやせ我慢だろ。”鷹の目”にやられた傷は自分で縫って包帯を巻いたようだが、ありゃあ普通に死ねるくらいの大怪我だ。コイツはしばらくは戦えないだろう。


「ルフィ、ロロノアが戦えない以上、おれとお前が気合入れとかねェと勝てねェだろ。飯でも食うか?」

「おお、そうしよう!!」


 ルフィは足で拍手みてェな事をして、喜びを表現している。コイツにはマナーってヤツを……まぁ、イイか。


「何が食いたい?」

「骨ついた肉のやつ!!!」



 コイツ、また肉か……料理しがいがねェヤツだ。そういや今までのコック代理はあの銀髪が務めてたらしいな。

 大雑把な味付けになれたナミさんの舌を、おれの繊細な料理が絡め取り、そのままナミさんのハートも鷲掴みに!!!……イケる!! イケるぞこの作戦!!

 おれはナミさんへの恋のフルコースを考えながら、ルフィの為に適当に肉を焼く事にした。



〜Side ゾロ〜



 おれは寝たフリをしてるだけだった。”鷹の目”からもらった傷は治療をしても熱をもっていて、いくらなんでも休んでねェと体が持たねェからだ。

 そしたらあのコックが聞き捨てならねェ事を言いやがった。おれが戦えない?

 確かにおれは”鷹の目”からアイツとの距離をまざまざと見せつけられる一太刀を受けた。おれの体は普通なら当分動かせねェような状態なんだろう。

 だが、普通じゃないアイツに勝つためには、おれは普通であることを捨てなくちゃならねェんだ。アイツに再び相対するその時まで、おれは決して負ける事を赦されない、逃げる事も赦されない、そんな戦いの道を歩いて行かなけりゃ駄目なんだ!!!

 ルフィのヤツまでコックの意見を流しやがって。

 アーロン一味なんぞおれが叩き切ってやる!!!

 その為にも今は休憩だ必要だ。コックに反論するのは後回しにして少しでも回復に努めよう。

 迫りくる……決戦のその時まで。
 
 
 

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