小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”VS アーロン一味 開戦”



〜Side タクミ〜



 まさかルフィが、こんなに早い段階で副船長に俺を指名してくるなんて思ってもいなかった。頭脳派を気取ってたせいで、憧れのベックマンでも想起したのか? 長身とか長髪とか、確かに似通った特徴があるからな。

 まぁ、あの場で俺が拒否したところで、ルフィは迷惑スキル”断るのを断る”を発動してくるだろうから、どうしようもないと考えて受け入れることにした。

 流れは大丈夫なのか? もうかなり介入してしまってはいるが、ルフィの海賊王とロビン加入が動かなければ俺としてはあまり問題ない。

 世界の修正力とやらが働いて、この先俺が死ぬような困難が立ち塞がったり……まさか!!!? それがネズミ大佐!!!?………………まぁ、なるようになる!! コレは忘れよう!!

 障害があの程度ならどうにでもなるし、もう原作なんか知ったことじゃない。ロビン早期加入案でも考えよう。アラバスタ編の終了まで待ってられるか!!

 俺はきっと、夢とロビンの為にこの世界にやってきたんだ!!!

 俺がスキル”妄想暴走”を発動させていると、轟音が鳴り響き、辺りに木片が散らばる。


「アーロンっての、どいつだ?」


 はやっ!! いきなりかよ!? 一声くらいかけろよな!!

 まあ、ボケッとしてた俺が悪いか。っていうかココヤシ村の人達はいつの間についてきた!!!


「……アーロンってのァ、おれの名だが?」


 アーロンのヤツ不機嫌なオーラが丸出しだな。この距離からでも怒気が伝わってくる。


「おれはルフィ」

「そうかルフィ……てめェは何だ?」


 簡潔に名乗りを上げるルフィに、アーロンは表情を変えずに質問を返す。『何だ?』って聞き方はどうかと思うけどな。


「海賊」

「おい、待てよてめっだはぁ!!?」

「雑魚どもが、うちの船長の邪魔してんじゃねぇ!!」


 またも簡潔に答えだけを発するルフィに、見るからに下っ端の二人が立ち塞がろうとしたが、俺が「獣厳」ですぐさま排除した。よし、登場のタイミングは大丈夫だっただろう。


「!!?……てめェは”銀獅子”か!?……そうか海賊になっていたのか。アイツの情報も当てにならねェな」


 俺の事がバレてる?……ネズミか!!? ということは、俺の悪魔の実の能力もバレてるってことだな。早期離脱が望ましいみたいだ。

 ルフィは俺達のやり取りに興味がないようで、そのままアーロンへと歩みを進める。


「その二つ名を呼ぶって事は、ネズミから情報が洩れたって事か。アイツ以外と使えないな」

「シャハハハハ!!! 全くだ!! それで? 海賊ルフィと殺し屋”銀獅子”が何のようだ?」


 近づいてくるルフィではなく、煙草を吸ってそれを眺めている俺の方に、アーロンは注意を払っている。おそらくネズミから誇張した情報を高値で売りつけられたんだろうが、俺なんかに構っていたら、痛い目に……合ったな。

 ルフィに殴り飛ばされ、派手に飛んでいくアーロンの巨体を目にし、騒ぎ出す雑魚どもとココヤシ村の住人達。だがアーロンは軽い驚きをみせる程度だ。ダメージはほとんどないらしい。


「うちの航海士を泣かすなよ!!!!」


 アーロンを見据え、怒りに顔をゆがませるルフィ。


「おれが切るのはあのタコ助か??」


 満身創痍だが気迫で挑発するゾロ。


「ロロノア・ゾロ……!!」

「ニュ!? おれを倒す!? あいつがロロノア・ゾロか!! 人間の剣士がおれに勝てると思うなよ!!」

「あのガタイのいいのがおれの相手か、かかって来いサカナマン!!」


 既に東の海では有名どころのゾロを警戒するクロオビと、アーロン程ではないが種族主義を……ハチはちょっとアホなだけだな。それと、サンジはちょっと調子に乗りすぎだ。


「海賊か……本気でナミを仲間にしようってんだな。シャハハハハ!! たった5人の下等種族に何ができるっ!??」


 高笑いするアーロンをよそに、人獣形態「紙絵武身」を発動し、俺は魚人達の間を縫う銀色の影になる、難しいことは何も要らない。

「剃刀」で縦横無尽に駆け回り、雑魚どもの背中に次々と「獅子 針銃」を打ち込む。倒れていく同胞達の姿に、アーロンは今度こそ驚愕の表情を浮かべた。


「ふぅ、コレで五対四だ。数の上ではこちらが有利になったわけだが……どうする? アーロン!!」


 初めて俺の戦闘を目にしたサンジは驚いているようだ。

 今回は急所も何も狙っていないので、おそらく死んだ者は極僅かだろう。苦しそうに呻き声をあげる同胞を前に、アーロンの目の色が変わった。


「心配するな、おれが全員殺してやる!!!」

「よくも同胞を!! お前らなんか、アーロンさんが相手にするかァ!! エサにしてやる!!! 出て来い巨大なる戦闘員よ!!!」


 ハチがその場の雰囲気に似つかわしくない、間の抜けた|口(くち)ラッパの音を鳴らす。

 コレから何が起きるのか不安なんだろう。村の住人達が騒ぎ出す……?……!!? ちょっと待て!! なんでナミがそこにいる!!?

 やっぱりバレてたか、安全地帯に追いやったのが。まぁ、仕方ない。


「モォ〜…………「なんだ、あいつか」!!!?「魚人の仲間だったか」……ンモ……!!!? モ〜……」


 姿を現した海牛モームは、ルフィとサンジを見て明らかに動揺して、そのまま海に帰ろうとする。あの態度からして、モームは原作と同じ目にあったのだろう。

 だがこんなオモシロ生物を前にして、この俺の探究心は黙っていない!!!


「珍獣……はっけ〜〜〜〜ん!!!「モオオォォォォ!!!!?」逃がすかこらァ!!!」


 逃走するモームに、俺は両手足を使って「嵐脚 獅連(シレン)」を繰り出す。獅連=四連、この世界でありがちな駄洒落ネーミングの技で、要は四つの斬撃を放つ技だ。

「嵐脚 乱」と違って、数は少ないが一撃の切れ味は通常の「嵐脚」と変わらないこの技も、巨体のモームには動きを鈍らせるくらいの効果しかなかったが、俺はその隙に、鼻輪にロープを取り付ける事に成功した。モーム……逃がさん!!

 これ以上やりすぎる前に、俺はこの場を離れるとしよう。アーロンが呆然としているがスルーだ。


「……アイツはいつも、ああなのか?」

「いや、あんなタクミは初めて見た……ゾロ、副船長、早まったかな?」

「知るか」
 
 
 ロデオ状態の俺に、後の怪物三人組の会話が微かに聞こえたが、俺の意識はモームに集中していた。
 
 
 
 

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