小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”銀獅子”



〜Side タクミ〜



 動物系 ”ネコネコの実” モデル 獅子(ライオン)



 どうやらこれが俺の喰った悪魔の実の名前のようだ。獣形態の姿からして間違い無いだろう。

 突然だが、俺はライオンが好きだ!! 以前どっかのテレビ番組で陸上生物最強はホッキョクグマだの何だの言っていたが、そんなモン俺は知らん!! 最強の陸上生物はライオン!! 俺はそう信じている!!!

 ……たとえライオンがハイエナから獲物を横取りする事が多々あろうとも!! その獲物に爪を立ててポーズを決め、さも自分が仕留めたかのように誇示する事があろうともだ!!

 悲しい事に事実なんだよな。アフリカゾウ最強説を唱える友人に、鼻で殴り飛ばされるライオンの映像を見せられたついでに、ハイエナよりよっぽどハイエナっぽいライオンの行動を見せられて愕然としたモノだ。

 ちなみにハイエナは一日中くらい平気で獲物を追い続けて、疲弊したところを仕留めるという戦術が得意で、まさにサバンナのハンターだ……何でハイエナって嫌われてるんだ? 確実に”ライオンキ〇グ”の悪影響だろ。

 T-REXが最強の恐竜みたいに言われてるのも”ジュラシックパ〇ク”のせい。アイツらは体型のバランス悪くて、死肉を貪るのが基本だったっていう説が今では有力なんだ。皆メディアに踊らされすぎなんだよなぁ……俺もか。


 閑話休題


 とにかく(?)最強のライオンが好きな俺は、喰った悪魔の実がこの実だったことはすごく嬉しいし、獣形態の自分を見たときはかなり興奮した!!……でも、悪魔の実を食べてしまった事自体が問題なんだよな……

 これじゃあイカダでこの島から脱出するのはメチャクチャ危険だし、なにより海中生物の調査が釣りや網に限定されてしまう。

 ……まぁ、俺はどっちにしろ前世からカナヅチなんだけどな。小学校の頃のカナヅチ矯正プログラム”夏休み二週間水泳教室”には四年間連続で強制参加させられたんだが、五年生の時には、『君はもう来なくてイイよ』と教師に匙を投げられたもんだ。

 泳げるヤツらは意味が分からん。物理的に人間が浮くって事は理解してるんだが、クロールで息継ぎしようとすると回転するんだよ。バタフライはモチロン、平泳ぎもムリだったが、背泳ぎなら出来た。

 もっとも、何処に進むのか特定出来ない俺の背泳ぎは、『カナヅチと一緒』との事だ……何か悲しくなってきた。中学の水泳の授業は一人だけ持久走にされたし、高校は家からだいぶ離れたプールが無い所を選んだくらいだ……何かさっきからどうでもイイ事ばかり考えてるな。


 そんな事を考えて俺が落ち込んでいると、さっきまで脅えていたガイモンが謝りつつ慰めてくれた。こんな姿(人獣形態から戻り忘れていた)の俺を怖がらないようにしてくれるなんて……ちょっぴり箱が震えているけど、やっぱガイモンはイイヤツだな。 

 俺は肉食系の凶暴性を抑えて人形態に戻る。この制御は実はかなり気を使うみたいだ。自在に操っていたルッチ、ジャブラやチャカ達は凄いな。俺も練習しないといけない。


 だが……前向きに考えれば、島の脱出はおそらく出来る。俺には航海術も無いがこの身体があればおそらく「六式」が壱つ「月歩」を極めて安全に脱出なんてことが出来そうだ。

 この世界では、”空気にプロテイン入ってんの?”ってくらい鍛えればみんな強くなるからな。コビーごときが短期間であそこまで成長出来たんだから、純粋に肉体が強化される動物系の悪魔の実を喰った俺は、そのくらいの事は出来るようになるハズだ。

 問題は海洋生物調査なんだが…………あれ? 簡単なことじゃないか!? 麦わらの一味に入ればいいんだ!!!

 ルフィはきっと、俺みたいなイレギュラーがいたって海賊王になる!! ゾロは海王類とか仕留められそうだし、ナミにはシキが眼をつけるほどの航海術がある。ウソップにはすごい釣竿とか作ってもらえそうだし、サンジの夢は「オールブルー」半分俺の夢とかぶってるようなもんだ。チョッパーにはランブルボールでの悪魔の実の可能性拡大を手伝って貰えるし、何よりチョッパーが珍獣。フランキーにはぜひとも「シャークサブマージ」を強化版として作っていただきたい。ブルックは…………海賊は歌うんだぜ!! ベースなら弾けるしセッションするのもイイかもしれないな。

 そしてなによりロビン!! ニコ・ロビン!!! 好みなんです! タイプなんです!! 好きなんです!!! 大事な事なので三回言いました。後悔も反省もしない。早く三次元のロビンに会いたい! たぶん凄いよ!! そりゃ凄いよ!!! 何処がとは言わない!!……暴走はこれくらいにしておこう。

 まぁ、ロビンと愉快な仲間たち(麦わらの一味)に入る事が出来れば俺の夢は安泰だろう。しかし、あの一味についていくには半端な覚悟ではダメだ!! よしっ! 幸い原作が開始してルフィがここにやってくるのは約十七年後、今から鍛えてあいつらを待とう。俺は下準備は入念にするタイプなんだ。「六式」会得を最低目標に、できれば「覇気」も身につけたい。


「よーしっ!! 待ってろ珍獣ども!!」


 そうと決まれば早速行動開始だ。見た目的にかなり鍛えられた体なんだし、コビーに出来たんだから「剃」くらいなら既に出来るかもしれない。


「「剃」!!! って……やっぱいきなりは無理か、地面を何度も蹴って急加速、ルフィが言ってた通りにやったつもりなのに、「剃」!!! ってぇ……」


 何かガイモンがこっちを見てる。あんまりかっこ悪いところを見られたくないし、もうチョイ練習して出来なかったら基礎体力からつけ直そう!!



〜Side ガイモン〜



 とんでもねェ事になっちまった。地面に埋まった箱に入ってたのに全く傷んでねェ果物なんて、いくらなんでも怪しすぎるだろ!!

 まさかアレが噂の悪魔の実だったとは……アレって、確か売ったら凄ェ金額になったんだよな……ってそういう問題じゃねェだろ!!

 おれは最低だ……こんなに落ち込んでるタクミに謝るか慰めてやるかしかできねェ。

 でも『やっぱりこの姿はちょっと恐ェな』と思っていたら、タクミはちょっとだけこっちを見てから、苦しそうな顔をして元の姿に戻った。どこまで優しいんだコイツは!!


 おれは傍にいてやることも出来なくなって少し離れたところでタクミの様子を見守っていたんだが、しばらくすると表情をいろいろ変えながらタクミはうろうろしだした。

 きっと悪魔の実の力を押さえつけるのに必死なんだ。おれの為に……タクミが何かを叫んだ声で、はっと我に返ると、タクミは足をもつれさせて何度も転んでいた。

 きっと身体をまともに動かすのも難しいんだろう。俺は誓った……タクミがこの島を出られるときが来るまで、おれは何があってもタクミの傍にいる!! おれはコイツの事も守るんだ!!
 
 
 

-4-
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