小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”VS Mr.3”



〜Side タクミ〜


 
 いやー大満足だ!! 剣闘竜が一種類もいなかったのは心残りだが、ヴェロキラプトルの群れには大興奮だった!!

 チーム内の役割分担がちゃんと出来ていて、一番の大型を仕留めようとした時に、後ろから奇襲をかけてきたのには、思わず賞賛を送ってしまった。

 まさか群れの長が、囮の役を引き受けているなんて思いもしなかったからな。人間なら見殺しにして自分がトップについたりするのだろうが、あの群れには絶対的な信頼関係があったに違いない。

 ラプトルに関しては、データを取った後、記念に爪を取っておく事にした。ウソップに頼んで首飾りにでもしてもらうつもりだ。

 俺とロビンは今、野営地で休憩を取っている。ロビンも流石に疲れたみたいだ。ちなみにプテラノドンはステルンベルギ種もロビンが捕獲に成功していた。

 サンジの恐竜料理が完成しそうだし、そろそろ皆を呼びに行くか。

 ……ん? 調査に夢中になって何かを忘れてないか? 重要な事だった気がするんだが…………

 考え事をしていると、島の中央の火山が、盛大に噴火を起こす。まさに創世記を思わせるような、壮大な自然現象を耳にして……悪寒が走った。


「ロ、ロビン……あの中央の大きな火山が爆発した回数は覚えてるか??」

「どうしたの? そんなに慌てて? 確か今ので二回目のハズよ」


 ……何やってんだ俺は!!!?


「やばい!! もう事は起きてやがる!!!」

「何の話だ? もう飯は出来たぞ??」


 俺がこれだけ取り乱しているのに、サンジはのん気に料理を並べている。


「サンジ!! それどころじゃない!! 俺たちが上陸してから、あの火山が二回目の爆発をする頃、この島の巨人と俺たちの一味に不吉が訪れるんだ!!!」

「例の占いかよ!! 解ってたんなら先に言え!!……おれ達に何も起きてないって事は」

「他の皆が危ないって事ね」


 二人共、理解が早くて助かる。ルフィとかじゃこうはいかないからな。


「すまない、上陸したその日のうちに、まさか二回も爆発するとは思わなかったんだ。タイミング的に、敵はおそらくバロックワークスの刺客!! 俺はすぐに皆の元に向かうから、サンジとロビンは二人で動いて、敵の拠点か船を破壊してくれないか?」

「わかったわ。アナタ達はMr.5のペアを圧倒しているから、おそらく送り込まれているのはMr.3のペア。狡猾な相手よ、気をつけなさい」

「ロビンちゃんの護衛はおれに任せとけ!!」


 こういう時のサンジは実に扱い易い、もとい頼りになる。ロビンを任せても問題ないだろう。


「頼んだぞ!!「剃刀」!!!」


 俺は人獣形態になり「爪 鉄塊」を発動させ、すぐさま皆を探しに行った。



〜Side ウソップ〜



「誰だァアア!!!! 出て来いォオオオ〜〜〜〜〜〜〜い!!!!」


 ジャングルに高々と吹き上がる血飛沫を見上げて、ルフィは力の限りの叫びをあげている。

 ルフィの叫びが、おれには良く解る。誰かが世界一誇り高い決闘を汚したんだ!!!


「よし、ルフィ……どこの誰だか知らねェが!!!! おれが行って仕留めてきてやる!!!!」

「わたしも行くわ!!」


 おれは内心ビビりまくってんだけど、本当にコイツは度胸があるな。


「よし!! 是非ついて来てくれ!! 心強い!!」


 しょうがねェよな、おれは現状では多分ナミより弱いからな……

 それでも、おれが勇敢なる海の戦士として、足の震えと格闘していたら、一味のヤツじゃねェ声がした。


「その必要はねェ!!」

「あ!? お前らかァ!!!!」


 ルフィの視線の先には、見慣れねェ二人組みと、ボロボロになったカルー!!


「こいつは返す!!必よがっはぁあ!!!……」
「キャハハハハハっはぁ!!!!!…………」

「うるせェんだよお前ら!!! ルフィ!! 無事か!!」

「「「タクミ(さん)!!!」」」

 突然崩れ落ちた敵の後ろにいたのは、戦闘モードのタクミだった。アイツ、相手が女でも、敵なら容赦ねェな。


「不吉な占いが出たから探してたんだ。詳しい状況が知りたい。他の皆はどうしたんだ?」


 タクミはカルーの怪我の具合を見ながらおれ達に聞いてきた。


「ナミさんが捕まったかもしれないわ!! コイツらがカルーだけを連れてココに来たって事は、もう一組エージェントが来ているかもしれない」
「巨人の飲んだうちの酒が爆発したんだ!! 犯人はわかるか!!?」
「タクミ!! おれをココから出せ!!! おれがぶっ飛ばしてやる!!!」


 全員が一斉に喋るもんだからタクミがフリーズしちまった。


「……一度に言うなよ。まずビビ、ロビンがおそらくMr.3のペアがこの島に来ていると言ってた。ナミを攫った犯人はそいつだろう。次にウソップ、その犯人はたぶんコイツだ。爆弾人間らしいからな。ただ計画したのは格上のMr.3の可能性が高い。そしてにルフィ、すぐに掘り出してやるが、こういう時こそ冷静になれ。最後に全員……一緒にMr.3を潰すぞ!!!」


「ええ!!」
「おう!!」
「当たり前だァ!!!」


 即答したおれ達を見てタクミは微笑んだ。カルーの手当てを軽く済ませたタクミは、ルフィを掘り出しながら煙草を銜えて会話を続ける。


「それで、ビビはMr.3のペアの能力を知っているのか? 慌てて出てきたせいでロビンに聞き忘れたんだ」

「Mr.3は”ドルドルの実”のキャンドル人間!! 蝋を操る能力者よ!! ペアのミス・ゴールデンウィークは、オフィサーエージェントでは珍しい非能力者なんだけど、『写実画家』で洗練された色彩イメージで相手に強力な暗示をかけるわ」


「暗示!!? 並みの能力者より厄介な力だな。速攻でけりをつける必要がある……よし、そいつは俺がやろう!! Mr.3の方はウソップが要だな、ルフィと組んで戦えば問題ないだろう」

「……へ!? おれがメインで戦うのかよ!!?」


「サポートで構わない。蝋を操る敵なんだからルフィ一人じゃ厳しいだろ?? さっきの威勢のいい返事はどうしたんだ??」


 タクミのヤツこんな時なのにニヤニヤしてやがる!!……まあ、コイツがニヤニヤしている間は大した危機でもねェって事だから安心出来るんだけどよ、作戦は自分で考えろってことだな。


「おれは勇敢なる海の戦士だ!! 怖気づいたりなんかしねェ!! Mr.3を倒す策は、既におれの頭の中にあるんだよ!!」

「頼もしいな!! 任せたぞウソップ!!」

「あの、わたしは?」


 作戦に名前のあがらなかったビビが、おずおずと手を挙げながら聞いている。


「ビビはナミの救出だ。別行動で敵の拠点を探してくれ。他に敵がいた時には、俺たちが行くまで待機。新手がいるかもしれないから慎重にな!!」

「わかったわ!!」


 ビビは自分にも役割がある事を喜んでいるみてェだが、これはアーロンの時のナミと同じポジションだ。コイツは極力女を危険にはさらさないように作戦を立てる。しかもその役割を重要な役割みてェに思わせるんだ。まあ、ナミには通用しなかったけどな。

 よく考えたらおれやサンジみたいな扱いにくいヤツもうまくノセてる気がするし、必ず船長のルフィをたてる。

 普段は酒飲んでるか煙草吸ってるかのふざけたヤツだけど、甲板やダイニングで見かけない時は、ゾロと鍛錬をしてるのも、おれは知ってる。

 ……意外と名副船長なのかもな。


「ウソップ?? どうした? 既に作戦があるとか嘘ついたから鼻が伸びてきたのか? やっぱピノ〇オなのか?」

「誰がピノ〇オじゃ!! そもそもお前との会話でちょくちょくでてくるピノキオってのは誰なんだ!!」


 おれは気になって聞いてみたんだが、タクミはえらく驚いた表情だ。ブツブツと独り言を呟いていて、”世界観”、”著作権”、”流石ネズミー”とか聞こえてくる。


「ピノ〇オは、俺の国の児童書の主人公でな、嘘を付くことによって鼻が伸びていく意思を持った人形だ。最後は念願かなって人間になった直後に、追い剥ぎにあって、殺されて吊るされるんだ」

「恐いわァ!!! 何だその児童書は!! お前の国には絶対にろくな子供が育たん!!!」


 そんなモノを読んでるから、タクミみたいな倫理観が狂ったヤツが育つんだ。

 ……言い過ぎたか? タクミは下を向いて、少し元気を無くしてるみてェに見える。


「……俺は自分の国を覚えてないけど、きっとウソップみたいな鼻のヤツはいないだろうな」

「この鼻は生まれつきだァ!!! 回りくどい嫌味を言うな!!!」


 コイツが自分の故郷すら覚えてねェって事を忘れて、酷い事を言っちまったと反省しかけたけど、続く嫌味に思わずツッこんじまった。


「ウソップ!!! うるせェぞ!!! お前ら、さっさと犯人を潰しにいくぞ!!!」

「ああ」
「行きましょう」
「……すまん」


 さっきまで挟まってたヤツにまとめられた。ていうか悪いのは本当におれか???

 おれの中でのタクミの評価があがったのは一瞬だった。



〜Side Mr.3〜



 …………おかしいガネ。Mr.5のペアがビビ王女を捕らえに行ってだいぶ経つハズだガネ。

 まさか小娘一人攫うことも出来ずぬ程の無能だったか?

 まあイイガネ。私の計画には、ミス・ゴールデンウィークがいれば十分だガネ!!


「ミス・ゴールデンウィーク、剣士と女をここへ!!」

「イヤよ、だってメンドクサイもの」


 ミス・ゴールデンウィークはピクニック気分でお茶と煎餅を楽しんでいるようだガネ。


「……君は本当に働くのが嫌いなようだガネ……」


 仕方が無い。自分で連れて来るしかないようだガネ。

 私がその場を離れようとした時、背後から何か物音が聞こえてきた。


「キャーーッ!!!」


 ミス・ゴールデンウィークの叫び声で振り返ると、彼女のパレットを真っ二つにしている男が目に入る。どうやら動物系の能力者のようだが、恐らくはヤツらの仲間だガネ!!


「貴様!! 何者だガネ!!」

「俺は麦わらの一味 副船長 ”ハンター”アイザワ・タクミだ!!」


 副船長……という事は、データにあったあの男カネ。


「貴様が”銀獅子”カネ? ウイスキーピークで我が社の平社員を100人も潰してくれたそうじゃないカネ!! お前は後回しの予定だったのだが、この場で潰してくれるガネ!!!」


 私は最高美術”キャンドルチャンピオン”を身に纏い、迎撃体勢を整えた。ミス・ゴールデンウィークの美術的塗装が無いのは心残りだが、こんなヤツは私の敵ではないガネ!!


「1900万ベリーの賞金首だろうと所詮は動物系!! この鎧を纏ったわたしに死角はないっ!!!」

「落ち着けよMr.3、俺はお前とウチの船長との戦いに横槍が入らないように、この娘を無力化しに来ただけだ。お前とタイマン張るつもりはない」


 はっ!! 自らの不利を悟って戦わないというのか。意外と賢い男だガネ、まあ”麦わら”はゴム人間だと聞いているし、結局は私の敵ではないガネ。目の前で頼みの船長がやられるところを見せ付けた後、船長共々わたしの美術作品にしてやろうじゃないカネ!!


「「……うおおおおおおおおおおお!!!」」


 数秒の後、森の中から共鳴する叫び声が聞こえてくる。船長のお出ましのようだガネ。



「来たな”麦わら”!! お望み通りこのMr.3が叩き潰してくれるガネ!!」

「お前!!! ブッ飛ばしてやるからな!!!」

「ブロギー師匠!! あんたのくやしさ、おれ達が受け継いだぜ!!」

「ウソップ!!」


 長鼻の男の言葉に、赤鬼が驚愕の表情を浮かべる。あの男の情報はないが、気にする必要はなさそうだガネ。全くもって強者のオーラを感じん。


「必殺……」


 ん? 長鼻が投げてきた物は何カネ?? 分銅がついたロープ?? 私の後ろの”銀獅子”が、飛んできた分銅を蹴ると、キャンドルチャンピオンのボディにロープが巻きついてきたガネ。


「プッ、アッハッハッハ!! 笑わせないで欲しいガネ!! こんなロープでわたしを拘束したつもりカネ!!?」


 長鼻の男はロープが巻きついたのを確認し、手元のロープの先端に……火!!?


「……火炎地獄!!!」


 はっ!!? ロープにつけた小さな火は一瞬でロープを伝って、キャンドルチャンピオンを炎で包み込んだガネ!!!!


「熱っ、熱っちゃーーーーーーーー!!!! おのれ長鼻!!!」


 私は、溶け落ちたキャンドルチャンピオンから、命からがら這い出て呼吸を整えた。


「銀獅子!!! 私と戦うのは麦わらじゃなかったのカネ!!!?」

「ん? ルフィが一人で戦うなんて俺が言ったか??」


 この男!! よくもまあ、いけしゃあしゃあと!!!


「決闘を汚すヤツは男じゃねェ!!! いくぞ、ゴムゴムの〜〜〜〜〜〜〜」


 ま、マズい!! 周りは火の海”キャンドル壁(ウォール)”が固まらないガネ!!!

 私がもたついてる間に、後方へと伸ばされていた麦わらの腕が、凄まじい速度で、コチラに迫ってくる!! 早く防御を!!!


「……バズーカ!!!!」

「ガハッ!!!!」


 流石は3000万ベリーの賞金首!! なんて威力だガネ!!! 柔らかな蝋でもいくらか緩衝材になってくれたようだが、意識が飛びそうだガネ!!

 だが、まだ打つ手はある。ミス・ゴールデンウィークが森の方に逃げていくのがさっき見えたガネ!! 予備の美術道具を取りに行ったに違いない!! 彼女と合流出来れば、いくらでも罠が張れるガネ!!!

 私は”麦わら”の隙をついて、全速力で森へと駆け出した。


「一時休戦だガネ!!」

「あっ!!! 逃がすかこんにゃろ!!!」


 簡単に捕まるものカネ!! わたしは緊急時の逃げ足ならバロックワークスNo.1を自負しているのだガネ!!!


「”六輪咲き(セイスフルール)”……」


 森に入った直後、囁くような声が私の耳に聞こえてきた……は?? この腕は何だガネ!!!?


「……”クラッチ”!!!」

「ごほッ!!!?」


 !!!? ミス・オールサンデー……何でこんな所に!!?


 浮かんだ疑問を解決することなく、私の意識はココで途切れたガネ……



〜Side サンジ〜



 タクミと分かれたおれとロビンちゃんは、まず敵の船を探し出し沈めた。ロビンちゃんの予想通り、Mr.3ってヤツの船だったらしい。

 船を見つけたロビンちゃんは、『ついでだから♪』って言って金品や貴重品を根こそぎ持ち出していた。そんなロビンちゃんも素敵だ!!!

 その後は敵の拠点を探して、ジャングルを彷徨っていたんだが、ジャングルに不釣合いな、白塗りの一軒家を見つけて、その中でナミさんとビビちゃん、ついでにマリモを見つけた。

 ナミさんと藻には固い蝋の手錠がされていて今は外せそうにない。

 今は、突然かかってきた電伝虫にロビンちゃんが出ている所だ。


「……コチラ、ミス・ゴールデンウィーク」


 何その声!!? かわいい〜な〜!! ミス・ゴールデンウィークって女のモノマネ??


『『Mr.3はどうした?』』

「今は出来上がった美術作品を運んでいるわ」


『『蝋人形で遊んでる暇があるなら報告を先にさせろ』』

「報告なら私がするわ。麦わらの一味と王女ビビは、Mr.3のお気に入りは美術作品に、残りは始末したわ」


『『要は全員始末したって事だな?』』

「ええ、その通りよ」


『『……ミス・オールサンデーが、麦わらの一味と行動を共にしてなかったか?』』


 僅かに間を空けて訊ねてくる冷静な声……コイツ勘がイイな。


「いえ? ミス・オールサンデーならキューカ島で見かけたわ」

『『……そうか、ごくろう……今アンラッキーズがそっちへ向かっている。任務完了の確認とアラバスタ王国への”永久指針(エターナルポース)”を持ってな』』


「アラバスタ王国?」

『『そうだこれからMr.3と共に、アラバスタ王国へ向かえ』』


 イイ流れだ!! これで追っ手も無くアラバスタに一直線に向かえる!! ロビンちゃんへの刺客が見当違いの場所を目指せば、敵の戦力も減らせそうだ!!

 ロビンちゃんの機転に心の中で拍手を送っていると、窓から突然ラッコとハゲタカが入ってきて、おれ達に襲いかかってきた!! おれは2匹を瞬殺したんだが、物音が入っちまったみてェだ。


『『……今の音は何だ』』

「Mr.3の美術品の一つにヒビが入ってたみたい。突然動き出したから始末したわ」


『『…………さっきお前は、全員を始末したって言わなかったか?』』

「ええ、まさか美術作品にされて5分以上経ってから動き出すなんて思わなかったものだから。Mr.3に怒られるかもしれないけれど、今度は確かにトドメを刺したわ」


『『……まぁイイ。とにかくお前らは、そこから”一直線”にアラバスタを目指せ。なお、電波を使った連絡はコレっきりだ。海軍に盗聴されたら厄介だからな。以後の伝達は、今まで通りの指令状で行う……以上だ、幸運を……ミス・ゴールデンウィーク』』


 電伝虫が切れると、ロビンちゃんは一つ溜息をついた。おれが物音たてちまったからだよな……ロビンちゃんに任せたほうが、音も無く始末出来たのかもしれねェ。


「せっかくアラバスタへの”永久指針(エターナルポース)”が手に入ったけど、これを使うのは危険かもしれないわ」

「どういうことだ!!?」


 ゾロのヤツ、手錠されてるくせにロビンちゃんに偉そうにすんじゃねェ!!


「クロコダイルは”一直線”を強調していたわ。早く来いという意味に聞こえるけど、恐らくは虚偽の報告をしたMr.3のペアに刺客を送って、アラバスタとココの直線航路で始末するつもりよ」


 クロコダイルの思考回路も、随分とぶっ飛んでやがるが、やっぱおれのせいじゃねェか!!

 ……軽く落ち込むおれに、ロビンちゃんは優しく声をかけてくれる。


「別にコックさんのせいじゃないわ。私たちを守ってくれたんでしょ?? 直線航路を使わない手立ては用意があるから大丈夫よ」

「本当に!? この島のログが溜まるのは1年もかかるのよ!!」


 驚いているナミさんに、ロビンちゃんは妖艶な微笑を向ける。余裕たっぷりのその態度に、ナミさんもたじろいだ。ちなみにおれは、ロビンちゃんの色気にやられている。


「さっきMr.3の船で、いろんな島の”永久指針(エターナルポース)”を見つけて持ってきたから、好きなように迂回出来るわ。ついでに溜め込んでたお金もね♪」

「いやん♪ 大好きよロビンお姉様っ!!!」


 そっちが本当の目的だったのかロビンちゃん流石だぜ!!


「私たちもMr.3の所へ向かいましょう!!」


 ロビンちゃんに擦り寄るナミさんを放置して、ビビちゃんの提案に従って、おれ達はMr.3との戦闘に合流することになった。

 よし、まだおれにも活躍の場が残ってる!! ゾロに手錠がついてる以上、戦うのはおれだ!!! ナミさん、ビビちゃん、ロビンちゃんにイイとこ見せてやるぜ!!!

 近くから煙があがっているのが見えたから、おれ達は取り合えずその場所に向かうことにした。

 しばらく進むと、髪形がはっきりと”3”と見てとれる男がおれ達の前を横切ろうと走っいる……何てわかりやすいエージェントなんだ。Mr.3丸出しだ……おれが呆れて動けない間に、ロビンちゃんが船で見せた構えを取る。


「”六輪咲き(セイスフルール)”……」


 Mr.3の身体と、地面から咲いた六本の腕が、両手、両足、首を拘束する。

 ……ちょっと待ってくれ!! おれの出番が!!


「……”クラッチ”!!!」


 おれが止める間も無く、男の身体は曲がってはいけない方向に折れ曲がり、おそらく背骨がやられていてもう意識はなかった。


「ロビン!! コイツはおれがブッ飛ばすハズだったんだぞ!!」


 Mr.3の後から走ってきたルフィが、ロビンちゃんに文句を言っている。お前はちょっとは戦えたんだからイイじゃねェか。おれなんかラッコとハゲタカだぞ?……しかも迷惑かけちまったし。


「あら、ゴメンなさい。頭の”3”を見たらイライラしちゃって♪」


 怒り心頭のルフィに、さっきのナミさんへの対応と同様の態度を取るロビンちゃん…………ロビンちゃん、それは本心ですか??


「そっか、それじゃあしょうがねェ!! へんな頭だからな!! ”3”だし!! 燃えてたし!! よし、許す!!!」

「フフ、ありがとう船長さん」


 なんとなく二人のやり取りを眺めていると、おれと同じように二人を見ているタクミが目に入った。二人を微笑みながら見ている。

 ……いや、アイツはロビンちゃんしか見ていない…………あの野郎!!! ナミさんだけじゃ飽き足らずロビンちゃんにまで!!!

 おれはいつの間にか、今回活躍していない事を悔やむより、タクミにガンを飛ばすのに夢中になっていた。

 よく考えりゃ、散歩してて捕まっただけのゾロよりはマシだしな!! おれはコックとして役にたってる!!!

 おれの視線を無視して、タクミは今度はナミさんの方に視線を向けて、怪訝な顔をした。


「あァ!!? ナミさんとロビンちゃんのどっちにしようかってか!!? ふざけんなよてめェ!!!!」


 おれなりの推理でついにタクミにケンカを売ったが、タクミは無言で表情も変えず、ナミさんに近づいて行く。


 この時のおれは、自分の事しか考えてなくて、ナミさんの様子がおかしいのなんて少しも気がつかなかった。
 
 
 

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