”十八年”
〜Side タクミ〜
麦わらの一味に加入すると勝手に決めてから”十八年”もの歳月が経った……おかしくないか? 俺はガイモンにしか関わってないはずなんだから原作が崩れる事は無いはず。
計算上は俺の漂着から十八年で、麦わらの一味はこの島を訪れるハズ。それが未だに訪れないということは、原作でのガイモンさんの二十年発言は約二十年という事だったらしい。俺はこの一年間無駄に心を躍らせ続けた。こんなことなら修行を全力で続ければよかったな。
修行の結果を発表するなら、俺の「六式」はほぼ完成したと言ってイイだろう。身体作りに十年かけたかいも有り「剃」「月歩」「嵐脚」「指銃」は問題無い。だが、「紙絵」「鉄塊」に関しては性能のテストに限界があった。
まず「紙絵」。これはこの島で俺を除いての最速はガイモンさんのピストル。コレが問題だった。この世界にはピストルよりも早い攻撃をする人間なんていくらでもいるし、ピストルの弾を避けられる人間もいくらでもいる。
正直メチャクチャな世界だと思うが、俺もこの世界で生きていく以上「紙絵」は覚えたい。俺は痛いのは嫌なんだ。
次に「鉄塊」。これも最初はガイモンさんのピストルで特訓しようとしたのだが、「紙絵」の後に特訓を開始したのがまずかった。
ビビリな俺は反射的に「紙絵」でかわした……なんかごめんなさい。でも理論はなんとなく解っていた。身体を鉄の高度に高める。
正直コレは筋肉どうこうもあるが「生命帰還」の技術が入っていると思った。だって斬撃で皮膚が切れないんだから、皮膚も操るってことだろ?
皮膚を操る感覚っていうか、操れてるのかよく解らないから、まずはCP9のクマドリみたいに、髪を操ってみた…………それだけで5年かかった。
「鉄塊」ってこんな複雑か? たぶん俺は修行法を間違えたんだろう。それかセンスの問題?
とにかく人獣形態の「鬣 鉄塊」でピストルを防げることを確認した後、身体の各部でピストルを受けきることにも成功した。
ちなみに全身に「鉄塊」かけて動くのは無理だった。ジャブラは本当に凄い!! まあ、コレにも想定外の威力は当然あるから、徐々に実験して検証していきたいと思う。
ほぼ完成とはいったが、「六式」の他四つは失敗してもこちらにたいした損害が出ないので完成としているだけで、まだまだ上を目指すつもりだ。ちなみに一番とくいなのは「嵐脚」!! 何れ一味に披露したい!!
……あぁ、「覇気」? 「覇気」は普通に無理。理論も何も覚えてなかったので、どんな修行をしていいかすら解らなかった。
「月歩」で海を渉ろうのコーナーは、実施すらされていない。俺の体はライオンの生態も反映されているらしく、持久力は皆無なようで、跳んでいられる時間は精々十分ほど。応用技の「剃刀」ともなると一分持たない。
人形態でもライオンの性質が若干反映されているみたいで、人獣形態より筋力が落ちる事もあり、結果に大差はなかった。そんなこんなで最近の俺は「生命帰還」と「剃刀」の修行に集中していた。
「紙絵武身」でスリムな人獣形態を維持しながら、「剃刀」で島の外周を高速パトロール。万が一、主人公一行が通り過ぎようとしたら、無理やりにでも船に乗り込むつもりだ。
十八年の時を経て、俺の見た目はすっかりダンテ!!……とは言い難く、なんかワンピース補正を受けている気がする。かなり鍛えたし結果が出ているのに、脚がスラッとしているとか意味不明だ。
原作でのサンジも脚は細かったし、この世界では別におかしな事ではないんだろうが、どこか納得がいかない。
髪は「生命帰還」関連の技に使いやすいように伸ばしているのだが、実際は伸縮自在なのでクマドリのアレは気分の問題なんだろう。髪の届く範囲内なら某ハンター漫画の「円」みたいなことだって出来る。近距離に死角は無い……ハズ。
そういえばガイモンは、ここ10年ほどは畑と田んぼを始めて隠居生活だ。森の番人に俺が加わるようになって、海賊も密猟者も激減したからなんだが、そのせいで銃の調達にちょっと苦労したりもした。
最近は料理も出来るようになって、晩飯はガイモンが担当。俺が十六ぐらいから、食後にガイモン特性の濁酒で晩酌をしたりもしている。
そんな今日この頃。
パトロール兼「剃刀」の修行を中断し、浜辺で「生命帰還」の修行をしていたら、
「なおったーーーーっ!!!」
沖合いから微かに声が聞こえた。
来た!! ナミに警戒されたら困るので、ナミが双眼鏡を持つ前に森の入り口付近に身を潜めて様子を伺う。
二隻の船は真っ直ぐにこちらに向かってくるようだ。
俺の胸は高鳴る!! ついに会えるんだ、俺の仲間!! 未来の海賊王に!!!
〜おまけ〜
「……タクミ」
「何だよガイモン」
「毎日毎日、森の中で瞑想して、そんなんで本当に強くなれるのか?」
「だから〜何度も説明しただろ? コレは「生命帰還」って技の特訓で、会得できたら髪が手足の様に使えるハズなんだよ」
「いくらお前でもそれは無理だろ。前やってた蹴りで海を斬ったり、岩を指で突くヤツの方が特訓っぽいぞ?」
「「生命帰還」を覚えれば、その特訓で得た体技もワンランクレベルUpするんだよ」
「はァ……まぁ、無駄な努力を頑張ってくれ」
「な・ん・だ・と〜〜〜〜!!!!」
「タクミ!!? 髪が!!? ギブ!!! ギブギブギブ!!!?…………」
「あっ、出来た」
〜Fin〜
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どうも。作者の羽毛蛇です。ココまでこんな拙作を読んで頂きありがとうございます。
各話終了後に不定期で掲載されるこの『おまけSS』は、視点を減らす為に削られたネタ、本編で一度ボツになったネタ、雰囲気を壊しそうなので自重したネタなどを載せていきます。
基本的におふざけ色が強く、『おまけSS』が本編で実際にあったエピソードなのか、それともただのネタなのかの判断は、読者様にお任せします。
読まなくても本編は問題なく読み進める事が出来るようなモノなので、適当に流して下さってOKです。
コレからも『百獣の王』を、宜しくお願いします。