”麦わらの一味〜ハンター〜アイザワ・タクミ”
〜Side ルフィ〜
「孤島に着いたぞ!!…………何もねェ島だなァ!! 森だけか?」
「だから言ったのに、無人島だって。仲間探すのにこんなとこ来てどうすんのよ」
島の感想を言ったらナミのヤツ軽く呆れてらァ。でもなんとなくいると思うんだけどなァ、新しい仲間!! それもとびっきり頼りになるヤツが!!!
おれは勘だけはイイからな。助けてくれる仲間がいねェと何もできねェけど、勘で仲間を探せばイイんだ。
ゾロはバギーと戦った時の怪我を回復する為に寝てるし、一人で仲間探しに行こうとしたんだけど、森の向こうから銀色の鬣をたなびかせて、でっけェライオンが歩いてきた!!
……勘……じゃねェな。本能で解る!! あいつはバギーんとこのライオンとは違ェ!!
〜Side タクミ〜
出来る限り威厳を見せながら、俺は獣形態でルフィたちの前に姿を現す。それと同時にルフィの鋭い視線がこちらへと向けられる……あれ?? ルフィなら面白がって『あのライオンを仲間にする!!』とか言うのかと思ったんだけど、なんか警戒されてる??
ルフィと違って目を輝かせて……いや、目をベリーにしているのはナミだ。二次元じゃないハズなのにどうしてそうなるんだ??
「ルフィ!! ライオンよ!! なんでこんな所に居るのかしら?? 森なら普通は虎よね? 珍しい色だし捕まえたら高く売れるんじゃない?」
ナミ、そりゃないだろ。ここまで金の亡者だったとは、イヤ、冗談だと信じたい。そんな事を考えているとルフィが静かに口を開いた。
「お前……強えェな。なんとなく解る。」
……??? なに?? このルフィのテンション? 予定と違うんだけど? このままじゃ仲間を守る為に決闘だとか言い出しかねないし、人形態に戻って話をしよう。
「君も強そうだな。この獅子の姿を前にして逃げるでもなく、構えるでもなく、ただ認めるヤツなんて初めてだ」
「っ!!?」
突然人の姿になった俺にナミは息を呑む。
「驚かせてしまってすまない。俺はアイザワ・タクミ、ネコネコの実を食べたライオン人間だ。今はこの森の番人をやらせてもらってる」
「ネコネコの実のライオン人間って、アンタも”悪魔の実”の能力者な訳!?」
ナミは悪魔の実の能力者が、こうも次々と自分の目の前に現れる事に驚いているんだろう。
偉大なる航路には大勢いる能力者も、東の海では伝説みたいな存在だからな。
「そうだな、動物系の”悪魔の実”を食べた人間は、その動物の力を取り込む事ができるんだ」
「あいかわらずメチャクチャだわ!! 悪魔の実って!!……まぁイイわ、所で森の番人って?」
ナミは俺の存在をそういうもんだと割り切ったようだ。適応能力高いな。
「あぁ、この森にはたくさんの珍獣が生息していてね、珍獣狙いの密猟者が後を絶たないんだ。だから俺があの姿で追い払ってるって訳だ」
最近は変な噂でも流れているのか、密猟者が訪れることは殆どないのだが、この森を守る番人っていうのを強調させる為に、あえてそう言った。
「なるほどね」
「……そいつらが逃げねェ時はどうすんだ?」
ナミの疑問が解消されると先ほどまで黙っていたルフィが聞いてきた。ココらへんの対応が分岐点になりそうだな。
「もちろん力尽くでお帰りいただいてるよ?」
「ははっ!! そっか、やっぱお前強ェんだな!!」
今度は間を置かずにルフィは答えた。食いついたかな? もう一息!!
「それなりに鍛えてはいるよ。俺には”夢”があるからな」
「夢?? どんな夢なんだ?」
ルフィは”夢”って単語に思いっきり食いついている。まぁ、体勢が若干前のめりになるほど食いつくとは思わなかったが、コレで計画通りに事は運びそうだな。
「あぁ、生まれる前から決まってた夢だ!! この世界には俺の知らない生き物が、この島の珍獣の何千倍っているんだ!! いつか信頼できる仲間と共に、俺は世界を巡って自分だけの生物図鑑を作る!! それが俺の夢なんだ!!」
「……お前の夢、俺の船で叶えねえか?」
ヤバイ、笑いを堪えるのが大変だ。最初はどうなる事かと思ったが、ルフィはやっぱり、夢を持ったヤツとか、何かを守る為の強さを持ったヤツの事を気に入るみたいだな。
だが普通はココで驚くのが当たり前の反応のハズだ。演技力には自信がある方だし、問題ないだろう。
「!?……お前の事を俺は何にも知らないぞ? そんなおま「俺はモンキー・D・ルフィ!! 海賊王になる男だ!!! いいから俺の仲間になれ!!!」っ!?」
まさか話を遮ってまで、勧誘してくるとは思わなかったから、演技じゃなくて本当に驚いた。
「そうかい……よろしく頼む、船長!!! ”ハンター”アイザワ・タクミ!! これより一味のご厄介になる」
予想以上に強引に勧誘してきたルフィに対して、俺は最大限の礼節を持って応えた。
我ながら腹黒いとは思うが、ルフィには気に入られておくべきだろう。
「呆れた。自分から進んで悪党になるだなんて」
「俺は海賊が悪かどうかなんてどうでもイイ。自分の夢への相棒として、ルフィを信じるに足ると判断しただけだ」
「小難しい事はイイよ。それよりお前の事を聞かせてくれ!!」
ルフィの眩しい笑顔をみると、自分が情けない気持ちになったが、俺はルフィを利用すると決めたんだ。夢の為に、確実にロビンに出会う会う為に。
人を利用するだけだった昔に比べれば、対価として戦闘面でも食料面でも貢献できる分マシだろう。
そんな言い訳を自分にしながら、俺は麦わらの一味の一員となった。