小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”火拳のエース”



〜Side ルフィ〜



 やべェ!! めし食ってたらケムリンに見つかった!! アイツ、ゴムゴムの技なんも効かねェんだよな……そうだ!!


「”ギア””2(セカンド)”!!! じゃあなケムリン!!! 「剃」!!!」

「なんだと!!? 「六式」か!?……銀獅子のヤツが伝授しやがったんだな!! 探せ!! まだ近くにいるはずだ!!!」


 うまくいった!! まだ慣れねェけど、消えたみてェに見えてるみたいだな!! 長時間使えねェのが問題だけど、何時かはタクミみてェに使いこなしてみせる。


「いました!! 屋根の上です!!」

「うおっ!? 見つかった!!!」


 こんなに海兵がいるんじゃ意味ねェか……お!?


「よう!! ゾロ!!!」

「バカ!! てめェ一人で撒いて来い!!」


「おっ!! みんないるなー!!」


 おれが皆のとこに行こうとしたらタクミが一歩前に出た。手には二丁拳銃を持ってる。


「早く来い!!……”炸裂弾(バーストブレット)”!!!!」


 タクミが乱射した弾丸は、おれの後ろに着弾して地面を爆破して土煙が上がる。海兵たちは怯んだみてェだけど、ケムリンは止まらねェ。


「逃がすかっ!! ”ホワイト・ブロー”!!!」

「”陽炎”!!!」


 煙がおれに届きそうな時、誰かが炎で煙を受け止めた……!!?


「エース!!?」

「変わらねェな、ルフィ……とにかくコレじゃ話もできねェ。後で追うから、お前ら逃げろ。コイツはおれが止めといてやる……行けっ!!!」


 皆が騒いでるけど、それを無視しておれは駆け出した。エースならケムリンなんかに負けやしねェ!! なんの根拠もねェけどそう思った。

 それにしても、こんなトコでエースに会うとは思わなかったな!! 悪魔の実を食ったみてェだし、また強くなってんだろうな。


「ルフィ!! さっさと乗れ!!」


 タクミに言われて船に乗ったけど、カルーはビビにお使いを頼まれてココで一旦別れるみてェだな。

 あいつが水飲んでるのを見たらおれも飲みたくなったから、がぶ飲みしてたらサンジに怒られちまった。


「それで? 白ひげ海賊団の隊長が、なんで俺たちを助けてくれたんだ?」

「”白ひげ”? エースはおれの兄ちゃんだぞ」


 皆がその名前を聞いて騒いでるけど、”白ひげ”って誰だ? おれの言いたいことが解ったのかロビンが説明してくれた。要は強ェ海賊って事だな!!


「ハハハ!! もうバレちまってたか。久しぶりだなルフィ!!」

「エ〜〜〜〜〜ス〜〜〜〜〜〜〜っ!!! 何でこの国にいるんだ!?」


 その後はエースと久しぶりに話をした。白ひげ海賊団に誘われたり(即、断った)、何か紙を貰ったり、タクミとエースが内緒話をしたり、エースの目的を聞いたりしたけど、エースの別れ際の一言がおれの心に響いた。


「次に会う時は、海賊の高みだ」

「またなーーーーーーーっ!!!」


 皆がなんか失礼な事を言ってたけど、おれは気にせずエースに叫んだ。



〜Side タクミ〜



「ルフィの兄貴にこんな事を言うのは嫌なんだが……アンタには死相が見える。俺の占いは良く当たるんだ……”黒ひげ”、ティーチにはくれぐれも気をつけてくれ。オヤジさんにも言われてるんだろ?」


 何やってんだ俺は……エースの死は、原作知識を武器にココまで来た俺にとっては必要なモノのハズなのに、気づけばエースに忠告なんかしてしまっていた。

 エースは笑い飛ばしていたし、こんな事で流れが変わるとは思えないが、ローグタウンでバギーを殺そうとしたりと、俺は何がしたいんだ。

 自ら犯した愚行に疑問を抱きながらエルマルまでの航海を皆と過ごしていたが、砂浜に降り立ちクンフージュゴンを探しているとロビンに声をかけられた。


「大丈夫? ”火拳”と話をしてから、アナタおかしいわよ?」


 普通に振舞っていたつもりなんだけど、ロビンにはバレてたか。二人になれるタイミングを見計らってたみたいだ……何か嬉しいな。


「ありがとうな、心配してくれて……ココでオモシロい生物に会えるって占いに出てたから、楽しみにしてただけだよ……見つけたぁーーーー!!! ウソップ!!! そこを退けーーー!!!」


 危ない!!! 感動のあまりロビンに本当の事を言いそうになった。慌てて話をそらして、ウソップが見つけたクンフージュゴンに大外狩りっていうかSTOを決めてみた。


「倒しちゃダメっ!!……はぁ、勝負に負けたら弟子入りするのがクンフージュゴンの掟なの。タクミさん、食べちゃだめよ?」

「何で疑問系なんだよ。弟子入りしてきたヤツを食料にするわけないだろ」

「クオッス!!」


 脳震盪から瞬時に復活して、そのまま弟子入りを志願してくるクンフージュゴン。なかなか可愛いヤツだ。


「よし、お前は俺の愛弟子だ!! 時間がないから柔道の基本だけ教えてやろう」

「そんな事してる場合じゃ「違う!! 構えはこうだ!!」ルフィさんはどんだけ弟子取ってるのよ!!!」


 しばらく指導をした後、ルフィの一番弟子と、俺の愛弟子で模擬戦を行い、ユバに向かった。

 ちなみに俺の弟子が勝利した。決まり手は”送り襟締め”……アイツら何で服着てるんだろう?

 ていうか、この服装はさすがに無理があったな……暑くて(もはや熱いというレベル)どうにかなりそうだ。



〜Side ロビン〜



 彼の様子がおかしい。誤魔化し方が不自然だったし、その後に出会った”ワルサギ”は、荷物を取り返して身体データを取っただけだったし、”サンドラオオトカゲ”を見てもいつものように興奮した様子も無く、船長さん達が仕留めるのを眺めているだけだったわ。

 いつもならしつこい位に私に構ってくるのに、暑さにヤラレた船医さんを抱えて最後尾を歩いて、ずっと考え込んでいる様子だった。

 ユバに到着してからは不自然なほど元気に振舞って、私が不審に思っていたら『今日は一緒に寝るか?』何てガラにも無い冗談を言ってくるしまつ。

 航海士さんが『宿ならたくさんあるって言ってたし、二人だけの部屋を取ってもらう?』とか聞いてきたから、話を聞くチャンスだと思って『ありがとう、お願いするわ』って答えたの。

 皆は何であんなに騒いでたのかしら? 騒いでる皆に聞こえないように『今日は寝かせないわ♪』っていつもみたいに笑顔で脅しをかけたのだけど、地獄耳のコックさんに聞こえていたみたいで。

『そんな事〜〜〜〜〜!!! おれは認め〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!』って彼を庇われてしまった。扉を死守するコックさんの目があまりに本気だったから、今夜問いただすのは諦めたんだけど、彼らはそんなに仲が良かったかしら?

 庇うってことは、コックさんも彼が何かを抱えていることに気づいてるって事よね? 最近は話をしてるとこすら見かけないのに、男って解らないわ。

 それから数時間の仮眠を取って、今は出発の朝。反乱軍リーダーの父親と別れて砂漠を歩き出した途端に、船長さんが座り込んでしまった。


「あ!!? 何やって……?」


 注意しようとする長鼻くんを制して、タクミが船長さんに声をかける。


「目的地変更か? 船長」


 何を言ってるの? 反乱軍を止めるためにカトレアに向かうんじゃなかったのかしら? 皆も意味が解らないみたいで、彼と船長さんに注目している。


「ああ……ビビ、おれはクロコダイルをぶっ飛ばしてェんだよ!!!」


 その後の船長さんの意見はもっともなモノだったわ。反乱軍を止めても、クロコダイルは止まらない。

 クロコダイルの目的がプルトンである以上、私を失ったクロコダイルは、どんな手を使ってでもこの国を手に入れるハズ。反乱を止めたところで、根本的な解決にはならないわよね。

 犠牲は必ず発生するという船長さんの主張に、王女は激昂して手をだしたけど、船長さんの反撃はタクミが止めに入った。


「おれ達の命くらい、一緒に賭けてみろ!!! 仲間だろうが!!!!」


 激しい口論の末、船長さんが放った言葉に王女は涙を流した。


「クロコダイルの居場所なら私が知ってるわ。ギャンブルの町”レインベース”、敵の本拠地に乗り込む事になるけれど、覚悟は決まってるかしら?」

「当たり前だァ!!!!」


 叫びを上げる船長さんを見ながら、彼はにこやかに微笑んでいた。彼が悩んでいたのはきっとこの事だったのね。

 船長さんの言葉を待つべきか、副船長である自分が発言をするべきか、どちらにせよ方角が変わらないからギリギリまで決断を迷っていた。

 王女の為にアラバスタの事を考えて、その上で船長さんをたてる事も考えていたタクミを、私は少し気に入った。

 まぁ、それと同じくらい、私にすら相談しなかった事に呆れたんだけど。
 
 
 

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