小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”ロビン嬢”



〜Side コブラ〜



 信じられん!! 彼は何者なんだ!? あのクロコダイルをいとも簡単に倒してしまうとは……彼の仲間はそれが当然だとでも言わんばかりで驚く素振も無い。


「ルフィ、お疲れさん!! 派手に吹き飛ばしたな。俺が回収してくるからちょっと待ってろ」


 タクミ君は獅子の様な姿に変わって、クロコダイルが吹き飛んでいった方に飛び出していった。チャカと同じ動物系の能力者のようだが……何故空を走っているんだ??

 獅子が空を駆けるなどと聞いた事も無いが……考えるだけ無駄だな。彼らの一味は規格外という事だろう。


「Mr.3、よくココまで辿り着けたわね。背骨をへし折ったつもりだったんだけど……アナタご存知?」


 ロビン嬢は、イガラムを人質に取っていた組織のエージェントに、尋問するつもりだったようだが、意識がなかった為イガラムに質問をしている。


「……ミス・オールサンデー……組織を裏切ったという話は本当だったのだな?」

「ロビン嬢!!? そなたは組織の一員だったのか!?」

「元一員よ。この計画に嫌気がさしてた時にタクミに誘われたから、クロコダイルとの契約は破棄して、この一味に加わったの……どうでもイイけれど”ロビン嬢”は止めてくれないかしら?」


 先ほどの謝罪はそういう意味だったのか…………可愛いから許そう!!! 可愛いは正義なのだ!!! しかし……


「むう……では何と呼べばいいのだ? タクミ君と結婚でも「してないわ」では、ロビン嬢で「……もう好きにすればイイわ」ではイガラムよ、ロビン嬢の質問に答えてやってくれ」

「……アンタ、”ロビン嬢”って呼びたいだけじゃないのか?……はぁ、わたしがウイスキーピークからアラバスタへと向かっている途中、手漕ぎの船で航海している無謀な男を拾ったのだが、それがMr.3だった。わたしは捕らえられ人質として連れてこられたんだが、その道中でミス・オールサンデー「ロビン嬢の事か?」……ロビン嬢が組織を裏切り、ルフィ君の仲間になっていたと聞いた。彼を倒したのも彼の船を沈めたのもロビン嬢だという話を何度も聞かされたのだ」

「そういう事だったのね……王女はアナタを心配していたわ。戻ってきたら元気な顔を見せてあげなくちゃね♪」


 ロビン嬢が場を離れると、見計らったかのようなタイミングでタクミ君が戻って来た。タクミ君に駆け寄るロビン嬢……別に羨ましいとか、そういう事は思ってない。


「早く海楼石の手錠をつけた方がイイ。海軍に引き渡す時の交渉に、ロビンも来て欲しいんだけど、ココを集合場所に指定してるから、ルフィは残っていてくれないか? 赤い煙が見えたら、アイツらからの救援要請だから、全速力で向かってくれ」

「それなら町の中心で待ってた方がイイんじゃねェのか?」

「ココからの方が、アルバーナ全体を見渡せるわ。それより、アナタの占いには広場への砲撃は出ていないの? 確かそんな計画があったと思うんだけど」


 広場への砲撃!!? 反乱が止まっても広場には大勢の我が軍の者たちがおるというのに!!! ロビン嬢に聞かれたタクミ君は少し考え込んでから、気まずそうに口を開いた。


「ははは……すっかり忘れてた「「忘れてたで済むかーーーー!!!!」」申し訳ない!!!」


 イガラムとチャカが二人でツッこんだ……見事なモノだ。タクミ君は笑っているロビン嬢の横で、必死に言い訳をしている。


「いやいや、砲撃場所はもちろんの事、時間も大体わかっていたので、少し警戒が薄くなっていたんですよ。クロコダイル討伐が最優先ですからね!!」

「間に合うのだろうな!? 場所はどこだ!!!」


 さっきまでタクミ君に敬意を払っていたチャカも、もうそんな余裕はないみたいだな。


「広場中央の時計搭の最上部に、時限式砲弾が用意されています。砲撃予定時間は今から約20分後って所ですね。エージェントが二人いるハズなので俺が行きましょうか?」

「イイよ、おれが行ってくるから、タクミはクロコダイルを引き渡しに行ってくれ。何か思ってたほど大したこと無いヤツだったから拍子抜けしてたんだ」


 クロコダイルが大したこと無かった!!? まぁ、あっさり倒していたからな……ビビは心強い仲間を持ったものだ。


「別にいいけど、Mr.7のペアって銃使いの雑魚だぞ? 多分ビビでも倒せるくらい「じゃあタクミの銃を貸してくれ!!! アレ一回使ってみた」ダメだ!! お前絶対に無駄撃ちするから「ケチ!!」イイから行くならさっさと行け!!! 爆弾は砂漠の真ん中にでもぶん投げとけばイイから」

「つまんねェな〜、おっさん!! 案内してくれ!! 爆弾なんか隣町までぶん投げてやる、あのカジノを木っ端微塵だ!!」

「ルフィ君、それはちょっと……」


 チャカが諌めようとしたが、その前にタクミ君が回転しながらルフィ君に近づいていった。


「砂漠に投げろって言ってんだろ!!!!」

「ぎゃあーーーーーー!!!」


 ……ルフィ君は、タクミ君に回転の勢いをプラスされた蹴りで飛ばされ、王宮の外まで飛んでいった。


「ほら!! チャカさんもボケッとしてないでルフィを追いかけてください。アイツは方向音痴だからどこに行くか解りませんよ」

「……それならば蹴らなければ良かったのでは?」


「…………早く追いかけて下さい」

「承知した」


 チャカは苦笑いしながら部隊を率いてルフィ君の後を追って行った。


「ロビン嬢、彼が本当の船長ではないのかね」

「あら、彼が言うには、船長さんは海賊王になる男らしいわよ? 海賊王の船には、名副船長がいるものでしょ?」


 海賊王!!? あのタクミ君がそこまで惚れ込む程の男か。そしてロビン嬢はタクミ君をあの”冥王”と同等に見ている。わたしでは敵わないか……!!? 何を考えているんだ!!? わたしは今でも亡き妻の事を愛して……愛して……

 そ、それよりも、早く他の船員にも会って見たいモノだな。きっと彼らに劣らぬ者たちなのだろう……ビビがこのままついて行くなどと言い出さないか心配になってきた。

 その時は、わたしもビビと共にロビン嬢のいる船に乗ろう!! 国は人なのだ!! 王が居らずとも国は残る!!!



〜Side タクミ〜



 クロコダイルとMr.3を担いでアルバーナを走り回ってたら、ゾロとナミが合流した。ナミは掠り傷しか負ってなかったがゾロは酷い有様だな。


「あら、剣士さんイメチェンかしら? 緑の腹巻の方が似合ってたわよ」

「うるせェ!!! これは敵の返り血だ!! 宣言通り鉄を切ってやったんだよ!!!」


 ロビンに反論しているが、腹から声を出しているのか傷口から血が溢れてきている。


「そ、敵はとっても強かったのね」

「ゾロ、それは無理があるぞ。コレでも使え」


 ロビンにからかわれて強がっているゾロに、俺はスキットルを渡してやった。


「おう、貰っとく……ごくっ、ぶほァ!!!」

「アホか!!! 使えって言ったんだから消毒用に決まってんだろ!! 飲むんじゃなくて傷口にぶっかけろ!!!」


 ゾロは未だに咽ている。コイツ本当に飲兵衛だな、スピリタスを一気飲みしようとするヤツなんて初めて見たわ!!! 下手したら死ぬぞ!!!


「ナミは大きな怪我も無くて良かったな!! トゲのポーラと戦ったんだろ? 元殺し屋を相手に凄いじゃないか!! 海軍にポーラを倒したのはナミだって伝えておいてやるよ。きっと懸賞金が「ヤメろっつうの!!!」……わかった」


 久々のナミ全力パンチは半端じゃない威力だった……天候棒(クリマ・タクト)が無くても戦えるんじゃないのか?


「それで? 他の皆は無事なの??」

「今のところ救援要請は出てないわ。反乱軍がまだアルバーナに到着しないって事は、王女の説得がうまくいった証拠だし、アナタ達は王宮に向かったら?」


 そういえば、反乱軍にバロックワークスが潜入してるのをビビに伝えてなかったけど大丈夫だったのか……まぁ、国王軍と衝突するよりは少ない被害で済んだだろう。


「そうするわ。王宮でお酒でも飲みながら待ってるわよ」

「おれはお前らと一緒に「これから”たしぎ”のところに行くんだが」やっぱナミの護衛が必要だよな」


 たしぎの名前を聞いて、ゾロは意見を180度変えてナミと王宮へ向かった。

 たしぎとの交渉は面白い具合にうまくいったな。アイツには話が通じないと思ってロビンを連れて行ったんだけど、小隊丸ごとMr.3にキャンドルロックされてるなんてマヌケ過ぎる。

『それを外してやる。代わりに能力者を捕縛する為の海楼石の手錠を渡せ』って言ったら驚いた顔をしていたが、手錠を付けたクロコダイル達を引き渡して、俺たちがその場を去ろうとしても、たしぎ小隊が追いかけてくる事はなかった。


「残りのエージェントはそんなに多くなかったハズだけど?」


 たしぎ達から十分に離れると、袋に入れた大量の海楼石の手錠を指しながらロビンが訊ねてきた。


「使い道があるだろ?……イロイロと」

「フフ、悪そうな笑顔ね♪」


 アラバスタでの俺の最大の目的って言えばコレだったからな。自然と黒い笑みになってしまう。

 コレは一般市場には出回ってないモノだからな、誰が気絶してるエージェントなんかに使って無駄使いするものか!!


「さあ、俺たちも王宮に戻ろうか。葬祭殿にある”歴史の本文(ポーネグリフ)”への隠し通路をコブラに聞かなくちゃいけないからな」

「!!?……なるほどね。そんな場所にあったんじゃ、独自に調査しても見つからないハズだわ」


「コブラはプルトンの在り処が記されているのを知ってるからなぁ、教えてくれなかったら葬祭殿の床や地面を全部ひっくり返すか!!」

「それじゃあ、やる事はクロコダイルと似たようなモノじゃない♪」


 笑っているロビンと一緒に俺は王宮に向かって歩き出した……不安だから時計搭も見てから帰ることにしよう。
 
 
 


〜おまけ〜



「ふんっ!!!……コイツらも大した事ねェな。お、アレが砲弾か!!!」

「ルフィ君、分かってるとは思うが、どんなに全力で投げようともレインディナーズまで投げるなんて不可能だからな」


「大人しく砂漠に捨てるつもりだったけど……そう言われると挑戦したくなるな」

「な!!? ツメゲリ部隊!!! ルフィ君を取り押さえろ!!!」


「お!? ほっ、よっと、コイツらよりお前らの方がよっぽど強ェな。おもしれェ!!! 捕まえてみぼっ!!!?……」

「やっぱりこんなオチかよ!!!」

「船長さんは戦闘狂の気があるわね」

「助かりました。我々では手に負えず「うらァ!!!!」……何やっとんじゃーーーー!!!!」


 怒りのあまり、壁を無視して砂漠の方向に砲弾を投げ捨てたタクミは、チャカに酷く怒られたとか。



〜Fin〜
 
 
 

-69-
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