小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”責任”



〜Side チョッパー〜



クリケットってヤツの情報を聞きにいったルフィ達は、ナミ以外ボロボロになって帰ってきた。

治療をしながら聞いてみると、海賊と戦ってきたみてェだ。でも、何でルフィとゾロは本人の血の匂いしかしねェんだ?

サンジは靴から少しだけ知らねェヤツの血の匂いがするから、反撃したんだろうけど、ルフィとゾロが一度も相手に攻撃出来ないなんて事があるのかな?

多分二人は、一度も相手に手を出してないんだと思う。理由はわかんねェし、ルフィは『もうイイんだ』って言ってたけど、きっと何かあったんだろうな。

まっ、タクミが何も言わねェって事は問題無いってことだ!! それよりもおれが気になってるのは……


「チョッパー? なんでそんなに震えてんのよ?」

「震えてなんかねェよ!! 誰がビビにビビってるなんて言ったんだよ!!」


「『ビビにビビってる』ってあんまり面白くないわよ?……はは〜ん、さては町の中心部まで水が流れた形跡があったのは、ビビの暴走能力のせいで、アンタはそれに巻き込まれたってとこでしょ?」

「何でわかるんだ!!? ナミも占いが出来るのか!!?」


「冗談じゃなくて本気で怯えてる事くらい見ればわかるわよ。船に残ってたメンバーでアンタが怖がりそうなモノは、ビビの暴走能力くらいじゃない」


そうだ、おれはビビが怖ェんだ。ちょっとからかっただけなのに、あそこまでするなんてナミより怖ェ……これから一緒に修行出来るのかな?

今は「生命帰還」の修行中で大人しいけど、もうあの技の的にされるのは嫌だ!!


「暴走じゃねェんだ!! ビビはおれを近寄らせておいて、激流で狙い撃ちしたんだぞ!!」

「さっきまであんな状態だったのに、もう制御が出来るようになったの!? ビビって結構凄いのね」

「まぁ、微妙な感じだけどな。水を止められるようになったのは確かだけど、大技を使うには今のところ精神的な負荷が必要みたいだ」


カードを並べてブツブツ言ってたタクミが会話に入ってきた。さっきタクミに相談しようと思ったら、おれの声が聞こえてなかったみたいで、全然話を聞いてくれなかったのに……


「精神的な負荷って、たとえばどんな?」

「そうだな……解り易いのは”怒り”だな。チョッパーに放った技は凄かったぞ!! 怒りに満ちた攻撃だったからな」


「じゃあチョッパーが悪いんじゃない。ビビを怒らせたんでしょ?」


おれは遊んでただけのつもりだったのに……


「気にすんなチョッパー。ビビはもう怒ってないんだから。それよりお前は修行しなくてイイのか? もたもたしてたらビビに追い抜かれるぞ?」

「!!!? 急いで”脚力強化(ウォークポイント)”を鍛えなきゃ!!」


「ビビもだけどさ…………何でそこから??」


おれはタクミの言葉を無視して修行を開始した。早くあの技を避けられるようにならねェと!!


「……俺の指導はどこで間違ったんだろう?」



〜Side ロビン〜



情報収集から戻ると、タクミが酷く落ち込んだようすでタロットカードを並べていたわ。何かあったのかしら?


「おかえり!! ロビンの方はクリケットの情報を手に入れられた? わたし達は騒ぎが起きたせいで全然ダメだったわ」


落胆している航海士さんの後ろの三人には、治療のあとがあるけど、騒ぎって喧嘩でもしたのかしら?


「ええ、コレを見てもらえるかしら?」


私はカルガモさんから降りて、町で入手してきた地図を渡した。


「コレは、この島の地図よね。モックタウンの対岸にある×印がクリケットの居場所?」

「フルネームはモンブラン・クリケットっていうらしいわ」


夢を語って、町を追われた男。何だか私に重なるモノを感じるわね。


「流石ロビンね!! 帰ってきたばかりで悪いんだけど、タクミを何とかしてくれる? カードを並べて混ぜての繰り返しで気味が悪いのよ。 何でか知らないけどあの状態は多分いじけてんのよね。カルーでも抱かせとけば落ち着いたんだろうけど、ロビンが乗って行っちゃったから対処の方法が無かったの」

「わかったわ」


何だか微妙に私のせいみたいな言い方が気にはなったけど、取りあえず彼に話を聞いてみましょう。


「おぉ、カル〜、帰ってきたのか。ロビンとの散歩は楽しかったか? そうか、そうか……あ、おかえりロビン」


……かなり壊れ気味ね。


「タロットカードなんか並べてどうかしたの?」

「それが、チョッパーとビビの修行が何かおかしなことになってきてな。俺のせいかな〜とか思ったりして占ったんだけど、複雑に要因が絡んでるみたいでさ、今後の成長の予測がイマイチ正確に占えないんだよ」


「大変みたいね。でも、そんな悩みなら私が協力できることはなさそうね」

「いや、そうでもなくてな、何度占ってみてもビビの修行の方向性がおかしくなった原因に、ロビンが大きく関わってるみたいなんだよ。何でそんな修行をしてるのか、後でそれとなく聞いてみてくれないか? まぁ、アイツらが俺の言う事をちゃんと聞かないのが、最大の原因なんだろうけど」


私が原因? どういう事かしら? それにしても……


「大分まいってるみたいね。いいわよ、後で聞いてみるわ。でも、アレって「生命帰還」の修行でしょ? 何か問題でもあるの?」

「「生命帰還」を極めるまで、他の修行を放置するような勢いなのが問題なんだ。ビビは基本的な戦闘力が足りてないからさ、俺としては能力制御と筋トレから始めて欲しいんだよ。「生命帰還」の修行は、それに疲れたときにでもやればイイ」


「副船長が考えなきゃいけないレベルを超えてるわよ。自然系なんだから危険は少ないんだし、好きにさせてあげたら?」

「ロビンは聞いた事ないか? 新世界では覇気って技が一般的でな、能力者が相手だろうが、問答無用で攻撃するようなヤツがウジャウジャいるんだよ。それに、一度修行をつけると言った以上は責任があるからな」


”覇気”……噂では聞いていたけど、実在する技術だったのね。でも、自分の言う事を聞かない相手の事にまで、責任なんか感じなくてイイと思うんだけど。


「そういえば、私の未来を明るいモノにするって言った責任は取ってくれるのかしら?」


私がちょっとイジワルな感じで聞いてみたら、彼は情けない顔を止めた。


「その言葉は絶対に守ってみせる。たとえ世界を敵にまわしてもな」


……バカね。そんな事したら本当に世界を相手に戦う事に…………!!!?

彼はこの先そうなる事をわかってるの!!? 間違いないわ!! 彼ほどの占い師がその未来が見えないハズがないもの!!

世界政府の手が伸びれば、私はこの一味を囮にして自分だけ逃げ出すつもりなのに、きっとソレもわかってるわよね。

それなのに、私の為に世界と戦うって言うの?? だから仲間を鍛える事をこんなに重要視しているの??


「……ダメよ!!! そんなの許さないわ!!!」


私は思わず自分の口から出た言葉が信じられなかった。何を考えてるの?……タクミの事も、自分のことも……わからないわ。
 
 
 

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