小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”歪み”



〜Side ナミ〜



”突き上げる海流(ノックアップストリーム)”のポイントまで行くのに”サウスバード”って鳥が必要だってことで、南の森まで捕まえに来たんだけど、何か宴会の時からタクミとロビンの様子がおかしいのよね。

ロビンはいつもみたいにタクミの隣に座らないし、クリケットさんがロビンを誘ってもタクミは上の空。

”サウスバード”を捕まえに行くのも、最初はタクミが一人で行くって言うのをロビンは止めなかったし、何かあったのかしら?

効率よく捕獲する為に、3チームに分かれることになったんだけど、


「私は剣士さんと一緒に行くわ」


えっ!!? タクミと一緒じゃなくて!? わたし以外の皆も驚いてるみたいね。


「えーと、わたしもゾロと一緒がイイな」


モジモジしながら便乗してるけど、まぁ、ビビはそうなるわよね。

ロビンの発言にタクミは動揺を隠せないみたいだけど、何とか平静を装って皆に提案をしてきた。


「女性メンバーはそれぞれ分かれた方がイイんじゃないか?」


ビビは絶対にゾロから離れないだろうからこその作戦。何があったのか知らないけれどタクミも必死ね。


「じゃあコックさんと一緒に行くわね」

「ロ、ロビンちゃん!!?」


ロビンはチョッパーを抱えて、サンジ君の手を掴んでから、さっさと森に入って行ってしまった。

ロビンの突然の行動にわたし達が呆然としていると……


「おい、さっさと行くぞ」

「え!? あ、はい」

「おれも行くぞ!!」


ゾロが呆れたようにビビを連れて森に入って行き、ルフィもそれについて行った。


「タクミ?……大丈夫か?」


心配したウソップが話しかけてるけど、タクミ、固まってるわね。

まぁ、あそこまで露骨に避けられたらショックでしょうね。


「残ったのはわたし達だけだし、そろそろ行きましょうか」

「…………俺一人でイイ、お前らはちょっと待っててくれ」


タクミは珍しく完全なライオンの姿になって、わたしとウソップを置いて、網も持たずに森の中へ消えていった。

わたしとウソップだけで森を歩き回るなんて、無理無茶無謀よね。大人しく待ってる事にしましょうか。


「タクミのヤツ、ロビンと何かあったのか?」

「わたしも気にはなってるんだけどね、ちょっとわからな「ジョ〜!!! ジョ〜〜!!!」タクミ!!? もう捕まえてきたの!?」


タクミは一分もしないで”サウスバード”を口に銜えて戻って来た。


「一羽捕まえれば十分だろ……俺はこの森の生物の調査に行ってくるから」


タクミは人の姿に戻って”サウスバード”をロープで縛り上げると、森の中に戻って行った。きっとロビンの様子を見に行ったのね。

お兄ちゃんが何をしたのか知らないけど、ここまで心配させるだなんて……ロビンに一言くらい言ってやろうかしら。



〜Side ロビン〜



「ロビンちゃん……タクミと何かあったのかい?」


船医さんを胸に抱えて森を歩いていたら、コックさんが言いにくそうに訊ねてきたけど……


「何もないわよ? どうしてそんな事を聴くのかしら?」

「いや、ちょっと二人の様子が気になってね……その、付き合いだしてから二人が別行動する事なんて滅多になかったからさ」


言えないわよね。彼は100%善意で……いえ、好意で言ってくれてるんですもの。彼の好意を受けるのが怖いだなんて。

……彼の好意は、一味全体を巻き込んでまで、私の為に世界を敵に回そうとしてるなんて。

私は自分の夢の為に彼を利用していただけなのに…………自分から距離を置こうとしてる癖に、彼と少し離れただけで不安になるだなんて。

この不安が今まで感じた事の無いモノだなんて……?……これくらいなら聴いてみてもイイかしら?


「聴いてみたい事があるんだけど、彼と離れてると、今まで感じたことの無い様な不安を感じるの。この感情がなんなのかコックさんは解るかしら?」


コックさんは険しい顔をしているけど、やっぱり難しい質問だったかしら?


「そもそも、どうして二人は距離を取ってるんだ? 喧嘩でもしてタクミが謝ってこないとか「彼は何も悪くないわ!!! 悪いのは……ぜんぶ私なの」……そうか」


コックさんの言葉に思わず反論してしまったけど、結局、質問の答えはコックさんにも解らないのかしら?


「サンジ? 顔が怖ェぞ!? ロビンに怒ってるのか? ロビンとタクミは仲良しだから大丈夫だぞ?」


船医さんにまで心配をかけてしまったみたいね。


「そうね。仲良くしなくちゃね」

「ロビンちゃん……その気持ちが解らないんなら……ロビンちゃんが無理することなんか無いよ」


!!? コックさんは私の不安の正体が解ったの!?


「どういう意味? 私は別に無理してなんか「おれがアイツを見極める!! ロビンちゃんはロビンちゃんのしたいようにすればイイ」……何の話?」


コックさんは何かを決意した様子で先に進んで行ったけど……何か勘違いしてないかしら??



〜Side ルフィ〜



「ルフィさんは、ロビンさんがタクミさんを避けてる理由を知ってる?」


森の中を歩いていたら、おれをそっちのけにして二人で喋ってたビビに突然話しかけられたけど……


「ロビンがタクミを避けてる? 何いってんだ?」


おれには全く心当たりが無かった。タクミは何時だってロビンを大事にしてるじゃねェか。


「まぁ、ルフィさんはそうよね。聴いたわたしがバカだったわ」


……心外だ。今のは明らかにバカにされたぞ!! おれだって真剣に考えればそれぐらい……そうか!!


「ビビがゾロに話しかけ過ぎてウザがられてるみてェに、タクミもロビンに構いすぎたんじゃねェのか?」

「ウ、ウザがられてる!!? わたしが!? ゾロに!!?」


ビビは森に入ってからずっとゾロに話しかけてたけど、ゾロは適当に返事してるみてェだったからな。

ゾロはタクミ達と酒飲んでる時の方が楽しそうだ。


「あぁ、そんな感じだったな」


ビビは一人で先に歩いていくゾロを見て、溜息をついてからその背中を追いかけて行った。

タクミとロビンの事は別に心配いらねェな。さて、おれはヘラクレスでも探すか!! さっきはアトラスを見つけたからな!! きっとココらへんにいるハズなんだ!!!

そうだ!!! 捕まえたらタクミに見せてやろう!! ロビンに避けられてんなら落ち込んでるだろうし、ヘラクレスを見せれば元気になるかもしれねェ!!!
 
 
 

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