小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”心網”



〜Side ナミ〜



「たっだいま〜!! 空島サイコーよ♪ ホント来てよかったわ!!」


パガヤさんに貸してもらった”ウェイバー”で空の海を満喫したわたしは、空島料理を作って待ってる皆のところに帰ってきた。

皆はもう食事を始めていて、わたしを待っててくれてたのはサンジ君だけみたいね。


「随分とごきげんだな、ナミ……(そんなにオモシロいのか、アレ?)」


タクミは”誰か”を気にしながら、後半は小声になって聞いてきた。まぁ、誰に聞かれたくないのかは分かってるけどね。

わたしは”誰か”に聞こえるように、ワザと大きな声でタクミに答える。


「もうサイッコーにおもしろいわ!! あのオンボロもちゃんと使えるようになるのよね??」

「あぁ、動力以外は殆ど作り直しになるらしいけど、パガヤさんが何とかしてくれるってさ……俺も乗ってみたいんだけど「ダメって言ってるでしょ」……わかったよ」


能力者も大変ね。わたしを差し置いて一番乗りしたルフィが沈むのを見て、ロビンはタクミに”ウェイバー禁止令”を出した。

その時のタクミの顔は完全に、おもちゃを取り上げられた子供の顔になっていて、ロビンを必死になって説得しようとしてたけど、結局ロビンがその首を縦に振る事は無かったわ。


「こうなったら”貝(ダイアル)”を大量に買い込んで、そう簡単には転覆しないような中型船を作ろう!! なあ、ウソップ!!」

「イイんじゃねェか? 便利そうだもんな……イロイロと」


眼を輝かせていかにも喜びそうな話題をふるタクミに対して、ウソップはコチラを見もしないで適当に返事をした。


「どうしたのよ? ノリ悪いわね……何かあったの?」

「別に何でもねェよ。ロビン、飯食い終わったんなら隣の部屋に来てくんねェか? デザインも出来てるし道具も揃えたからよ」


そう言ってウソップは一足先に隣の部屋に入っていった。

何か怪しいわね……ロビンと二人で何の用事かしら?


「ちょっと行ってくるわね♪」

「ああ、ゆっくりでイイよ」


楽しそうにウソップのところに行こうとするロビンに、タクミは随分とあっさりした返事をしたけど、何か意外ね。

普段のタクミならロビンを問い詰めそうだけど、ウソップを信頼してるって事かしら?


「……私が居ない間に”ウェイバー”に乗らないように、盗聴用の耳でも咲かせておいた方がイイかしら?」


……そういう事か……流石ロビンね。タクミの事はお見通しだわ。


「乗らないって。ちょっとは信用してくれよ」

「航海士さん、よろしくね」

「わかったわ。任せといて!!」


タクミの言う事に取り合わず、ひらひらと手を振ってウソップのいる部屋に消えていくロビンを、タクミは苦笑いしながら見ていた。


「……で? そんなに乗りたいなら二人乗りでも試してみる?」

「どんだけ信用ないんだよ!? 俺は二人が部屋で何をするのか知ってるから、快く送り出しただけだ」


「な〜んだ。ロビンに手玉に取られてるお兄ちゃんっていうのもオモシロかったのに。占いで束縛してるなんてちょっとヘンタイっぽいわよ? それで? 二人は何してんの?」

「ロビン用の新兵器開発だろ? デザインだとか、材料だとかの言葉から判断すれば占う必要もないって」


「なるほど。そうやって聞くとあんまり面白くないモノね。占いとか以前にお兄ちゃんは変に鋭いって事を忘れてたわ」

「褒めてるのか? ソレ? まぁイイけど。それよりな、そんな鋭いお兄ちゃんが気づいてしまった事があるんだが……聞きたいか?」


タクミはニヤニヤしながらわたしに聞いてくる……わたしの胸が最近大きくなったとか?


「聞いてもイイけど、話によってはぶん殴るわよ?」

「は? 何で殴られなきゃいけないんだよ?……怖いからその顔はヤメロ。取りあえずこの二枚の地図を見てくれ…………何か見えてこないか?」


そう言ってタクミは”ジャヤ”と”スカイピア”の地図を並べて見せた。

さっきのはセクハラ発言では無かったみたいだけど……


「コレがどうかしたの?」


タクミが何を言いたいのか見当もつかなかったわたしはそう聞き返すしかなかった。


「ガン・フォールさんや俺が絶対に近づくなって言ったけど……どうせ見に行ったんだろ? ”アッパーヤード”」


何でバレてるの!!? 今の口ぶりからして占ったんじゃなくて、わたしの性格から行動を読んだって感じよね。

ニヤニヤ笑いがムカつく!!! こんなお兄ちゃんいらないかも!!!


「ええ!! 行ったわよ!! ソレが何!? 遠目からちょっと見てきただけだし、見た目はただの島だったわよ!!」

「俺も双眼鏡で見たけどさ……何で”ただの島”がこの”空の海”にあるんだろうな?」


……!!!? 確かに島雲じゃない大地があるなんて、よく考えたら不自然だわ!!? それに気づいてこの地図を見たタクミが思った事って……


「つまり……」


タクミはわたしの回答を待たずに”ジャヤ”の地図の右を1/4程折って、ソレを”スカイピア”の地図に左から併せる。


「……こういう事だろうな」


二つの島を繋ぎ合わせて出来たその形は……


「髑髏……髑髏の右目に黄金を見た」


まだ完全に信じられずに呟いたわたしに、タクミはニヤニヤが止まらないといった表情のまま、わたしの理性にトドメを刺す言葉を紡いだ。


「怪しすぎるだろ、この建物……どうするナミ? 入国料の90万ベリーなんかゴミに見えるような、莫大な黄金が俺たちを呼んでいる!!! 神ごときに臆して、このまま観光して帰るのか?」


何でこんな時だけ、ルフィじゃなくて、わたしに決断を迫るのよ!!!


「…………行くわ…………行ってやろうじゃないの!!! 神の住む島”アッパーヤード”!!! モンブラン・ノーランドの汚名を雪ぐのよ!!!」

「……眼がベリーなんだが、それでこそナミだ!! 準備が整い次第、神に奇襲をかけてやろうじゃないか!!! ヤハハハハハ!!!」


タクミは妙な高笑いをしながらゾロのもとに向かって行って……


「ナミが神から財宝を奪うらしいぞ!!」

「そりゃすげェな。神ってヤツは斬ってもイイのか?」


「俺は知らないな。ナミに聞けよ」


……なんてアホなやり取りをしている。

さっきは『神(エネル)は雷の能力者だから絶対に”一人では”アッパーヤードに”入るな”よ』って言ってたクセに…………!!?

……完璧に悪魔に踊らされた……でも、もう後には引けない。黄ご……クリケットさんの為に!!!



〜Side エネル〜



「ほう、私から黄金を奪うと言うのか……ヤハハハハ!!! 面白い!!! 実に面白いぞ!!!」

「??……”神(ゴッド)”、いかがなされました?」


青海人たちの無謀な企てを「心網(マントラ)」で聞き、”マクシム”完成を前にして久しぶりにオモシロい事が起きそうだと思っていると、社仕えの文官の一人が不審なモノをみるような眼で私を見て聞いてきた。


「お前なんぞに話してもつまらん。神官を集めろ。現在行っている”試練”は中止だ……私が裁きを下す」


この島で行っているつまらないゲームを、私は自らの力で終結させる。

距離など問題としない必殺の一撃……”雷”の力。神である私に相応しい力だ。


「さあ!! いつ仕掛けてくるつもりだ、青海の盗賊ども!! 準備に戸惑っているのなら、私が迎えを出してやろうじゃないか!! ヤハッ!! ヤハハハハハハハハ!!!」


そうだ!! いっその事シャンドラの連中も招待してやればイイ。これがラストゲームとなるのだ!! 我は神なり!!! どのような者が歯向かってこようが、恐るるに足りん!! 存分に足掻いてみよ、人間ども!!!



〜Side タクミ〜
 
 
 
「タクミ!!! ナミとサンジとビビ、ついでにチョッパーとカルーが攫われた!!! すぐに追いかけるぞ!!!」

「……は?」


ロビンとウソップがなかなか部屋から出てこないもんだから暇になって、一足先に一人で”貝(ダイアル)”を買い漁りに行ってたんだが……どういう事だ???


「占いには出てなかったのかよ!!?」


そんなこと言われてもな……何でだ? 入国料はちゃんと払ったんだから”試練”は回避できたハズなんだが……


「すまない船長。”予知夢”はこれから起こること全てを見通せるわけじゃないんだ。何があったのか説明してくれないか?」

「ナミとビビが、またビーチで遊ぶから船に着替えに戻るって言い出してな、他のヤツもついて行ったんだよ。そしたら船から叫び声が聞こえて、俺たちを運んだ時よりさらにバカデカいエビが、船ごとアイツらを連れてっちまった……理解出来たか?」


興奮気味のルフィに代わってゾロが説明してくれたんだが、何なんだ?? どう足掻いても原作の流れからは逃げられないのか??


「マズい状況だな。取りあえず、すぐにアイツらの救出に向かうとして……ロビンとネガッ鼻はどうした? まだ部屋に閉じこもってんのか?」

「声はかけたんだけどな、鍵が閉まってて”すぐに出る”って返事が返ってきて……五分くらい経ったな」


そんなにしてまで見られたくないモノなのか? 何か心配になってきたな……でもウソップだぞ? いや、何か最近のウソップは優秀だしな……

俺がドアノブを捻じ切ってでも部屋に踏み込もうかと思い始めていると、扉が開いて二人が出てきた。


「お待たせ。それじゃあ航海士さん達を助けに行きましょうか」

「神はおれが必ず倒す!!……手出しすんなよ」


ウソップはハッキリと俺を見据えて宣言してるけど、遅れて出てきておいて何を偉そうにしてんだ?

既に冷や汗かいてんじゃねぇか……え!? ロビンも?? ソレは冷や汗だよな!?


「ロビン?? 何でそんなに歩きにくそうにしてるんだ??」

「ちょっと、せ……何でもないわ。さあ、早く行きましょう」


ロビンを先頭にして俺たちはパガヤの家を出たんだけど……ロビン、明らかにムリしてるだろ。

何か無理やり背筋を伸ばして歩いてるし、”せ”って何!!?

気になった俺はウソップに近づいて思い切って聞いてみた。


「ウソップ?? 部屋で何してたんだ?」

「……悪いな。お前には言うなってロビンに言われてんだよ。そんなに気になんなら、得意の”占い”で覗き見でもすればイイじゃねェか」


素っ気無く答えて俺から離れていくウソップ。

ウソップ冷たくない?? やましい事でもあるのか!!?……ダメだ……今コレ以上考えると殺人衝動が起きてしまいそうだ。

……確かめてから……ちゃんと確かめてからじゃないとな……!!?

今ロビンが愛しそうな眼で俺(断じてウソップではない)を見た!!? なるほど!! コレがビビが言ってた”押してだめなら引いてみろ作戦”の続編って事か!!?

ウソップまでグルになってこんな事するなんて……待たせすぎたな。アイザワ・タクミ、今こそ男を見せる時!!

この空島にいる間にロビンの気持ちに応えて見せる!!!
 
 
 

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