小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”それぞれの苦悩”



〜Side ルフィ〜



「ゴムゴムの〜」

「”美々突撃(フラッシュフラッド)”!!!」


「……ゴムゴムの〜」

「”美々突撃(フラッシュフラッド)”!!!!」


「…………」

「”美々突撃(フラッシュフラッド)”!!!!!」


南へ真っ直ぐ歩いてたら途中でビビと合流したんだけどよ……おれいらなくねェか?

二人で歩き出してからかれこれ10回以上襲われてんのに、おれが倒す前に全部ビビが新技(ただの体当たり)で倒しちまうんだよな。

今なんか3人同時に襲ってきたってェのに瞬殺だ。


「なんか戦い方がメチャクチャだけどよ、ビビは強くなったなァ!!」

「そ? カッコつけてるけどただの体当たりよ?」


ビビは何てことねェって感じだけど、そのただの体当たりがおれの”バズーカ”並の威力ってのは……ガキの頃から海賊になる為に体を鍛えてきたおれとしては、イマイチ納得いかねェんだよな。


「そんなヒョロイ体でそんだけの威力がだせるんなら、鍛えりゃすげェことになりそうだな!!」


だから、タクミが言うみてェに”皮肉”ってヤツを言ってみた。


「ムキムキになるのがイヤだからやらないけど、わたしの場合、タクミさんが言うには、肉弾戦や筋トレに限界が無いらしいわ。どこまでも強くなれるみたいね」


何ィ!!? ビビはどこまでも強くなれる!!? すっげェ羨ましい……なのにムキムキがイヤだから鍛えないだと……


「お前はさ……”躁舵手”に決まりな!!」

「”躁舵手”!!? わたし女なんだけど!!? なんで船で一番の力仕事の担当に「決まりな!!!!」……何でよ?」


おれは今後一切ビビを甘やかさない事に決めた……ビビなんかムキムキになってしまえばイイんだ!!!


「……はぁ、ルフィさんは言い出したら聞かないものね。わかったわ。わたしは”麦わらの一味”の”躁舵手”ね。舵が重たい時は、舵を無視して船に水流をぶつけて方向を変えればイイだけだし、何とかなるでしょ」

「…………それはなんか違うんじゃ「船の方向が変わればイイのよ」……そっか」


おれは、口では一味の誰にも敵わねェかもしれねェな。船長として大丈夫なのか?

ゾロの方が信頼されてるみてェだし、まだタクミに勝てる気がしねェし、ビビには何やっても意味なさそうだし、なんかタクミの方が船長っぽいし…………でも!! おれの目標はシャンクスなんだ!! タクミはシャンクスっつうよりはベックマンっぽいよな!! 髪とか長ェし!!

それに、さっきビビは”麦わらの一味”って言ってくれたじゃねェか!!

船長はおれだ!! 何が何でもタクミより強くなってやる!! ビビやケムリンみてェなヤツにでも攻撃出来るようになってみせる!!!

決意を新たにしたおれがビビに目を向けると……


「いったいこの山羊モドキさん達は何人いるのよ!!! キリが無いわ!!!」


さらに二人の敵を倒していた……頑張れ……おれ。



〜Side チョッパー〜



「助かったぜ。お前がいなけりゃどこまで連れてかれてた事か」


合流地点に着いたのに、いつまで経っても誰もこねェから、おれとカルーは皆の様子を見に来てたんだ……ナミに言われて仕方なく、しかもホイッスルを盗られて。海に出て解ったことの一つ、ロビン以外の女は皆怖ェ!!!

ってそんな事じゃなくて、暫く森の中を歩いていたら、でっけェサウスバードにゾロが連れ去られてたんだよ!!!

今は何とかサウスバードを説得して、ゾロを返してもらったとこなんだ。


「気にすんなよ!! ところで皆は一緒じゃなかったのか? タクミならサウスバードの説得くらい出来たんじゃ」

「あぁ、アイツらは迷子だ。全く困った連中だよな」


おれの質問を途中で遮ってまで発せられたゾロの言葉に、おれは絶句した……事態は思ってた以上に深刻みてェだ。


「……そうか、船に戻ったら頭の検査してみねェとな」

「どういう意味だァ!!!」


……そのまんまの意味だ。ゾロの迷子病は、自覚症状が無いみてェだけど、タクミの言う通りかなりヤバイみたいだ。

こんな症状聞いたことねェ!! 三半規管に異常があるとかそういう事じゃねェとは思うけど、人生の迷子になる前におれが何とかしてやらなくちゃ!! おれは”万能薬”になるんだから!!!


「治療、一緒に頑張ろうな!!!」

「ほっとけ!!! おれは何処も悪くねェよ!!! さっさと遺跡に行くぞ!!!」


憤慨した様子で北に向かおうとするゾロを……


「ゾロ、そっちじゃねェ。皆はあっちにいるからな。大丈夫だ。おれがついてるぞ」


出来るだけ優しく引き止めて、おれ達は遺跡がある南西の方角へと歩き出した。



〜Side タクミ〜



「ご苦労様♪」


……ロビンはメチャクチャだ。


ウソップもなかなか戻ってこないし、ルフィ達が到着する気配もなかったから、俺はロビンを抱えて巨大豆蔓(ジャイアントジャック)を駆け上がり、”大鐘楼”を確認してきたんだけど……


『ポセイドンは魚人島にあるみたいね。よかったわねアナタの求める情報はちゃんと記載されてたじゃない…………コレ、下まで運んでくれるかしら?『コ、コレを!!? 蹴り落としちゃ』ダ・メ・よ♪』


というやり取りがあり、ロープで吊った”大鐘楼”を「月歩」で下まで運ぶというあり得ない苦行を強いられたんだ。

しかも、俺が手を(この場合は脚か?)抜かないようにと、ロビンが”大鐘楼”に乗った状態で運ばされた。

脚力強化をフルに使用して何とか耐え切ったけど、暫くは筋肉痛でまともに歩けないだろうな……古代兵器の情報しか無かった事への腹いせだったんじゃなかろうか?


「なぁ、そこにもなんか書いてるみたいだぞ」


”大鐘楼”を運んだ疲れでぶっ倒れた俺は、台座の下の方に刻まれた文字を発見してロビンに教えてあげたんだが……


「どれかしら?……『我ここに至りこの文を最果てへと導く……海賊、ゴール・D・ロジャー』……海賊王!!!? 何で!!?……まさか……”真の歴史の本文(リオ・ポーネグリフ)”って!!!」


なんか知らんが重大な発見だったみたいだな。


「何か解ったのか? もしかして俺、お手柄だったり「大手柄よ!!! コレで私の目指す事がハッキリしたわ!!! 本当にありがとう!!!」ちょっ!! ロビン!!? 重たくはないんだけど、その体勢はマズいって!!!」


見たこと無い様なハシャギっぷりのロビンは、倒れたままの俺に飛び乗って、胸の辺りをバシバシ叩いている。

重たくはないし叩かれても痛くはないんだが、ソコに乗っちゃダメでしょ!!?


「次の”歴史の本文(ポーネグリフ)”は!!? 何処にあるの!!?」


ロビンは聞いちゃいないようだ。重度の歴女ってヤツか?


「偶然だけど魚人島だ。記録(ログ)を辿れば三つ先の島だったハズだけど……」

「魚人島ね♪……(それくらいなら一緒に航海してもイイかしら? でも、もう決めた事だし)……」


ん? 後半ブツブツ言ってるのが聞き取れなかったぞ?


「ロビン? どうかしたのか?」


独り言っぽかったけど、取りあえず聞きなおしてみる事にしたんだが……


「何でもないわ!!「『何でもないわ』じゃな〜〜〜〜い!!!」!!? 雨女さん? 船長さんも? どうしてココに?」

「そんな事はどうだってイイのよ!! 今!! 今が攻め時でしょ!!? どうしてソコで恥ずかしがっちゃうのよ!!! ソコまでいったら後は勢いだけじゃない!!!」


突如乱入してきたビビのせいでどうでもよくなってしまった。


「……相変わらず……意味が解らないわ」

「解らなくてイイよ。あのコちょっとおかしいんだ」


何処で何を間違って、ビビはああなってしまったんだろう? あまりにエキセントリック過ぎる。

どうせ誰も答えてくれないだろうから、口にはしなかった。
 
 
 


〜おまけ〜



「ゾロ、今度からは出歩く時には、ウソップについてきて貰うんだぞ?……ゾロ、最近ナミに叩かれすぎてないか?……ゾロ、脳トレってヤツを試してみようか?……ゾロ、タクミなら御祓いとかも」

「お前ェはおれをバカにしてんのかァ!!? デフォ!! 外傷性!! 脳の問題!! 呪い!! あらゆる可能性を検証してんじゃねェ!!!」


「……ゾロ……頑張ろうな」

「…………」


……大丈夫だよ、ぞろ。作者はそんなぞろを応援してる。



〜Fin〜
 
 
 

-91-
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