小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”多難”



〜Side ???〜



…………ココは……何処だ?


俺は…………誰だ?


!!!?……そうだったな……俺は−−−……じゃあ、お前は……誰だ?


…………ハハッ!!……そういう事だったのか。


自分で望んだ事だってか?……そういや言ったけど……お前、融通効かないな。


…………もう終わりなんだろ?


次はあるのか?…………わかってる。


虫のイイ話かもしれないけど……もう一度……頼む。


俺は……まだ何も成してないんだ。


……お前だって暇だろ?……俺ならまだまだオモシロいモノ見せてやれる。


!!!? 俺を底辺のヤツなんかと一緒にするな!!!


……解ればイイんだ。


……いや、それはヤメテくれ……コレは……俺が背負うべきモノだから。


ソレよりこのメチャクチャになった−−を何とかしてくれ……本当に融通効かないんだな。


まぁイイよ……取り合えず感謝はしてる。早く俺を元に戻せ……今度こそ……世界をひっくり返してやる!!


……放っとけ!!!……俺には俺のペースがあるんだ。


……ああ、またな。



〜Side タクミ〜



「……ん……生きて……る?」


ロビンは、寝てるのか……頭が痛い……コレ割れるんじゃないか?

青キジと戦って……確か左手が吹っ飛んで……でも、青キジを殺したんだ。

そういえば何で俺は剣術が使えたんだ? 体が勝手に動いたって感じだったけど……!!!?


「チョッパー!!!! みんな無事か!!!? ゾロ!!! ナミ!!! ルフィ!!! ウソッ「タクミ!!?……良かった……もう目を覚まさないかと思ったわ」……おはようロビン。ゴメンな、心配かけて」

「アナタ三日も眠ってたのよ……それに……」


黙ってしまったロビンの視線の先は、手首から先がない俺の左手だった。


「あー、やっぱ気になるよな。俺はデートの時には女の子に左側を歩いて欲しいんだけど、コレじゃ手も繋げないよな」


和ませようと思ったんだが、何かロビンがプルプルしてる。

何コレ可愛い!!!……じゃなくて、怒ってるのか?


「そんな問題じゃないわよ!!! どうしてアナタは「タクミーー!!! 起きたのか!!?」……」


エライ剣幕で怒り出していたロビンは、部屋に入って来たルフィ達を見て一旦言葉を止めた。

どいつもコイツも騒がしいが、まずはルフィに声を掛けるべきだろうな。


「悪い、心配かけたな」

「あんまりムチャするなよ? タクミは海賊王の右腕なんだからな!!」


ルフィはムリに明るく振舞おうとしてる?……らしくないな。


「右手だけになったし丁度イイだろ? それよりウソップ、お前手とか作れるか?」

「……手はさすがにムリだ……義手なら、何とかする……」


ウソップ暗っ!!! 暴発した事に責任感じてるのか?……って何でまだ”死相”が見えてんだよ!!!?

…………コイツには任せない方がイイな。


「冗談だよ。義手なら専門家が次の島にいるからソイツに頼むよ」

「おれに出来る事はなんもねェんだな……ゴメン」


ウソップは肩を落として部屋を出て行った……ダメだアイツ。

ネガッ鼻モードになってて使い物にならん。

本当はバラバラになったアイボリーだけでも作り直してもらいたかったけど、しばらく様子見だな。


「こんな時にも”予知夢”を見たわけ? 転んでもタダじゃ起きないわね」

「ナミさん、そんな言い方はちょっと」


ナミとビビは平常運転だな。

ナミが素直じゃないのはいつもの事だし。


「ナミの言う通り”予知夢”で見たんだが、サイボーグの船大工がいるらしくてな」

「うっひょ〜〜〜!!! タクミはサイボーグになんのか!!?」

「ついでにソイツを仲間にしよう!!!」

「サイボーグって……お前はいったい何になりたいんだ」


チョッパーの目が光ってる……リアルに見ると気持ち悪いな。

ルフィとゾロの反応はいつも通りなんだが、サンジはどうしたんだ?


「どうしたサンジ? 俺が一部サイボーグ化して強くなるのが羨ましいのか?」

「……んなわけねェだろ」


「そうだよなぁ、別に俺は左手がなくてもお前より強いし、今さらだよな」

「…………ちょっとは怪我人らしくしてろよ」


……え? 何あのサンジ?

何時もみたいにもっと突っかかってこいよ。

……ミスったか?


「タ、タクミはまだ絶対安静なんだ!! 診察するからロビン以外は一旦出て行ってくれ!!」


チョッパーの言葉を聞いて、サンジ達は部屋を出て行った。ナイスフォローだ!!


「ありがとうなチョッパー。凍った時は死ぬかと思ったよ」

「ルフィもロビンもゾロも凍ってたんだぞ……みんな助かってよかった」


ん? 今おかしな単語が聞こえなかったか??……


「…………はぁ!!!? 青キジは死んだだろ!!!? 何でロビンが凍ったんだよ!!!? 大丈夫なのか!!? 寒気がしたりしないか!!?」

「アナタ以外は半日で目を覚ましたわよ。人の心配ばかりしてないで自分の体調を考えなさい」


「いやいや、俺の事はどうでもイイんだけど、何で青キジが生きてるんだよ!!? 確実に心臓を貫いたハズだぞ!!?」

「…………「生命帰還」で心臓の位置を変えてたらしいわよ。アナタに教えておくようにって伝言を預かったわ」


なるほど……その発想はなかったな。

確かに漫画ではそんな肉体改造をする武術もあったハズなのに、盲点だった。


「俺も試してみるか……とにかくロビンはもう平気なんだな?」

「……アナタ人の話を聞く気がないでしょ?……もうイイわ」


「ロビン!!……そんなに怒らなくても……」


まだ話したい事がイロイロあったんだが、ロビンは部屋を出て行ってしまった。


「ロビンは心配してたんだぞ? 自分だってあんな体調なのに、この三日間ほとんど寝ずにタクミの傍についてたんだ。ちゃんと寝るように言っておくんだぞ」


チョッパーは呆れているような、諭すような口調で話しかけてくる。


「そうか……ムリさせたんだな」

「自信家のサンジも今回はかなり堪えてるから、あんまりからかわない事……よし!! バイタルは問題ないぞ!! でも、原因不明で昏睡状態だったんだから、しばらくは大人しくしておくように!!」


『ビシッ!!!』っと効果音がつきそうな勢いで蹄を俺に向けたチョッパーは、そのまま部屋を出て行った。


一人になった部屋で、俺は今後の事を考える。


青キジの実力は想定を遥かに超えていた。

今までの流れから、”俺が原作で特に好きだったキャラが強化されている”と想定していたんだが、よく解らなくなってきたな。

どうでもイイ事だと思っていたが、フォクシー海賊団が明らかに強化されていたという事実が、今頃になって気がかりになってきた。

……俺はフォクシーがかなり嫌いだったハズなんだ。

それなら”特に嫌いだったキャラも強化されている”って考え方もできるんだが、それだとアーロンがあんな雑魚だった説明が出来なくなる。

元から法則性なんか無いのか?……そんなわけないよな。

……原作知識が曖昧になってる影響?

覚えてはいないが、アーロンの非道に正当性を持たせる様なエピソードがあって、俺のアーロンへの嫌悪感が薄らいでいた……原作でジンベエあたりが語ったとすれば説明がつくな。

それで特に好きでも嫌いでもないキャラになっていたから原作通りの強さだったって事だ。

……じゃあ青キジは?

アイツは特に好きでも嫌いでもなかったハズなんだ……

コッチに転生してロビンとリアルに付き合えるようになってからは、ハッキリと倒す意志があったのは確かだが、恐らくソレは関係ない。

新世界以降の青キジの行動で転生前の俺の好き嫌いが、どちらかに大きく傾いたって事か?

マズイな……青キジは敵対するのか? それとも海軍を辞めてコチラに協力的になるのか?

いや、そもそも青キジが強化されたせいで赤イヌが負けるってパターンも考えられる……ダメだ、ショートしそうになってきた。


”特に嫌いだったキャラと、特に好きだったキャラが強化されている”この考え方は間違ってないハズ。

何があっても俺がフォクシーを好きになる可能性がないからな。

アイツは生理的に受け付けない……!!!?

嫌いなキャラって!!!? スパンダムが頭脳チートとかになってたらどうすんだよ!!!?

アイツもアイツもアイツも嫌いだし…………鬱になりそうだ。


……ん? という事は!!?


……あー、大好きな”白ひげ”やマルコも強化されてー、そういやリトルオーズJr.も好きだった気がするしー、そのせいで頂上戦争がひっくり返ってー、歴史がどんどん変わってー……あばばばばばばばばばばばば……



〜Side ウソップ〜



ロビンは女部屋で寝てるみてェだし、今は部屋にはタクミ一人のハズ。

許して貰えるなんて思っちゃいねェけど、話すしかねェよな。

俺は深呼吸をすると、覚悟を決めて扉を開けた。


「タクミ、大事な話が……ってどうしたんだよ!!!?」


タクミはさっきと同じ上半身を起こした状態だったんだが、壁にもたれて白目を剥いて泡を吹いていた。


「タクミ!!! 確りしろ!!!」

「…………はっ!!!?」


肩を掴んで強めに揺さぶると、タクミは我に返ったみてェだ。


「大丈夫かよ!!? チョッパーを呼んできた方がイイか!?」


あんな状態のタクミを見たことがなかったおれは、心配になって言ったんだが、口元を拭ったタクミはもう平気そうだった。


「大丈夫だ、問題ない。訪れる可能性のある未来に、ちょっと脳がパンクしそうになっただけだからな」


コイツがあそこまで動揺する未来って……やっぱガープだよな。

大将への昇格を蹴り続けてたって話だし、ひょっとして青キジより……無いとは言い切れねェか。

空島で話してた自然系は青キジの事だろうし、その青キジを試し撃ち扱いだからな。

能殺弾(スキルブレッド)は一発は完成品だったってのに、聞いた話じゃ青キジは自分で摘出したみてェだ。マジでバケモノとしか思えねェ。

アレより強いなんて考えただけで……タクミがああなったのも納得だな。


「誰が相手か知らねェけどよ、逃げるって選択は出来ねェのか?」

「逃げるって言ってもなぁ……(”時代のうねり”は俺にもどうにも出来ないからな)」


タクミはブツブツ言って、何かを考え込むみてェに黙り込んじまった。

こんな話をしに来たんじゃねェよな。

言わなきゃなんねェ事があるんだ。


「タクミ」

「ん? 何だよ?」


「……大事な話があるんだ……聞いてくれ」

「!!!? お前の言いたい事は解ってる。でもな……ソレは口にするな……言葉にするっていうなら、俺はお前を許さない」


!!!? 解ってるってなんだよ!!!?

暴発の仕方が不自然で気づいたって事か!!!?


「何でだよ!!? どう償ってイイのか解んねェけど、責任を取らせてくれ!!!」

「責任?」


タクミはおれが言った責任って言葉に怪訝な顔を隠さねェ。

確かにどうやったって責任なんか取れねェよな。


「お前がおれの謝罪すら聞きたくねェってのは解った。でも……本当にゴメン!!!! お前を疑うなんてバカな事をしたって思ってるんだ!!!」

「!!? (バカ!!! よせよ!!! ゾロあたりに聞かれたらお前の立場が悪くなるだろうが!!!)」


土下座するおれに、タクミは小声で注意をしてきた。

おれの為? 言葉にするのを『許さない』って言ったのはおれの為だったってのかよ!!?

顔を上げると、タクミは苦笑を浮かべていた。


「いつまでも過ぎた事を気にするな。もう忘れろよ。ドラムでも言っただろ? 俺は謝罪なんか聞きたくないんだ。俺も忘れる。今はそうだな……俺の復活記念って事で、宴でも開いてくれよ」


敵わねェ……コイツには一生敵わないって今ハッキリと解った。

なんてデケェ男なんだ!!!!

おれは涙が止まらなかった。


「泣くなよ、めんどくさいから!!! どこまでネガッ鼻なんだお前は!!!」


普段通りに接してくれるタクミに、コレ以上謝罪をしたってしょうがねェ。

タクミの言う通りに忘れる事なんか出来ねェけど、これからは、せめて全力でタクミの要望に応えよう。


「”ネガッ鼻”ってなんじゃァァアア!!! ”ピノ〇オ”かどっちかに統一しろォ!!!」

「じゃあ”ピノ〇オ”で」


「即答かィィイイ!!!」

「ハハッ!!! やっぱウソップはそうじゃないとな!! 手配書は”ツッこみのウソップ”になるように俺が海軍にかけあってやるよ。”鼻ップ”とかでもイイぞ?」


「オヤジが見たらひっくり返るわァ!!!」

「イヤ、お前の親父ならきっと−−−−」



その後も、おれの気を紛らわす為なのかひたすらボケ倒してくるタクミに、おれはただ全力でツッこみ続けた。

途中でチョッパーがやってきて『絶対安静って言っただろ!!!』って怒られたけど、おれとタクミの関係はこうあるべきなんだ。


…………ありがとう、タクミ。



 
 
〜おまけ〜



……大事な話?……!!?

まさか青キジが強すぎたせいでウソップの心が早くも折れたのか!!?

一味を抜けるだなんて言わせるかよ!!!

……責任? 何か勘違いしてる?

!!? 『疑った』って空島での事だろ? 何時までそんな事を気にしてるんだよ。

大事な話って言うから、報告か相談だと思ってたのに……でも、ゾロみたいな堅物に聞かれたら、それこそ責任がどうこう言い出すぞ。

はぁ、それより俺は酒が呑みたいんだよ。

適当に流して宴会でも開かせて……って泣いたぁぁああ!!!?

うわっ!!! なんてめんどくさいヤツなんだ!!?

この調子じゃ”ツッこみ”も……って出来るんかい!!

久々にキレがあるからちょっと遊ぶか♪



……ウソップ決意の謝罪……温度差は、酷い。



〜Fin〜
 
 
 

-99-
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