「えっと、今日は両親帰ってこないので一人で帰ります」
「大丈夫なの?」
「はい」
「それなら仕方ないな、ほら」
先生が、僕の鞄を渡した。
「早く帰りなさい、日が暮れたら危ないからね」
はい、絶対そんなこと思ってない〜。
だって、僕八時まで居残りさせられたことあるもんね!
宮部先生と、イチャイチャしたいだけなくせに〜。
まぁ、お邪魔虫は退散するとしよう。
「じゃあ、さよならっす」
お幸せに〜♪
「あぁ」
「バイバイ〜♪」
宮部先生の手とともに、頭の上の輪っかが揺れた。
昇降口で靴を履いた。
空は、もう日が沈みかけていた。
校門へ向かう。
校門を通った時、
「カ・・・・・ズ」
と、鬱々とした声が聞こえた。
全身の毛が逆立ってしまうような。
辺りを見回す。
なんと校門の陰に彼女が隠れていた。(かろうじて彼女と分かった)
いや・・・彼女って言ってもいいのか・・・?
貞子の様に、黒くて長い髪を前に垂らして。
あ・・・もしかして。
「お前、僕を驚かそうとしてんだろ?そうはいくか!!」
そういって僕は、彼女にパンチする真似をしてみる。
あぁ、重症だ。こりゃ。
いつも通りのあいつが僕に「お前」っていわれて黙っているわけがない。
「お〜い、いきてるか〜?」
僕は、顔の前に(髪の毛で隠れているが)ひらひらと手を振ってみせた。
「あんたこそ・・・・・」
弱々しい声が返ってくる。
「僕はこの通りぴんぴんだぞ?」
「びっくりしたじゃ・・・んか・・・」
彼女が、僕の腹にパンチした。(いつもより弱々しいが)
それより・・・
「もしかして・・・心配してくれてたの・・・?」
それはありえねぇよなぁ。
僕が彼女の顔を覗き込む。
「違うもん!自意識過剰過ぎ!」
ハイ、スミマセン。
「・・・でも死んじゃうかと思った・・・気絶するから・・・」
そりゃあ、普通の人は、あれだけされたら気絶せざるを得ないと思いますけど?
「まぁな、僕も思ったよ、っていうか治療費ちょうだい」
冗談半分で言ってみる。
「バーーカ」
バカってなんだよ?!
「まじいてぇんだぞ?、この首の傷」
「じゃあ・・・」
彼女が、僕の制服の袖を引っ張る。
―――?!!
バランスが崩れて,よろめく僕。
そこに、彼女の唇が頬にあたった。(あたったよりかすったの方が正しいかな)
「なにすんだ・・・?!!」
「治療費!!」
はぁ?!!
っていうか僕のファーストキスがぁああぁああああ(泣)
彼女は、少し顔を赤くして,走って家へ帰ってしまった。
僕は、赤くなるどころか青くなっていた。
ぼ、僕のファーストキス・・・もっとロマンティックなのを想像してた・・・のに。
イシャリョウヲヨコセ・・・。