教室に入ると、「おはよ〜!」と、とびきり甘い山ノ内さんの声が聞こえてくる。
それはいつもと変わらない。
でも・・・
「軽山田は?」
「あいつぅ〜?知らない。登校拒否なんじゃなぁい??」
「登校拒否?なんで?」
「ほら〜ダーリンが首締められたんじゃん??そのあと、皆にひかれて先生にも怒られて、教室でてっちゃったよ〜」
そうか・・・そうだったな・・・。
皆にばれたのか・・・。
前までは、早くばれろって思ってたのに・・・。
「って、なにげにダーリンってよぶなぁああああああ」
「だって、ダーリンでしょ?」
「いつ、お前の彼氏になった!!!?」
「なってないけどぉ、ダーリン私の事好きでしょ??私の事もハニーて呼んでいいよぉ」
絶対呼ぶもんか!!
山ノ内は、髪の毛をいじりながら言う。
その発言に周りは、どよめいた。
「お前!翔子様の事を好きなのか?!」
僕の元へすがりついて来たのは、山ノ内のファンクラブの部員である。
「やめぇええい」
教室中に響き渡る声を放ったのは、山ノ内のファンクラブ部長・南藤好男(みなどうよしお)である。
彼は、ナルシストな事で有名だ。
「でも!本当の事を確かめ・・・いてっ!」
南藤はハリセンで部員達を叩いた。
「翔子様がたとえ彼氏ができたとしても!!愛すと誓ったのを忘れたのかぁあああ!!」
「忘れてません!」
「よし!それでこそ僕たんの部下だ!!」
一人称僕たんって・・・。
っていうか熱ぃーな。
面倒くさそうだから、なるべく関わらない様にしておこう・・・。
僕はそっと離れようと後ろを向いた。
「西山和也!!!この僕たんが何度アピールしても振り向かなかった翔子様が振り向いた
っていうことはお前に何かあるってことだ!!翔子様を大事にしたまえよぉぉぉおぉぉぉっぉぉおおお」
声が震えている。
最終的には、号泣しやがった。
部員達もそれにつられて泣き出す。
あぁ、なんでこんなのが同じクラスなんだ。