今、僕は彼女と山の中を散策をしている。
薄桃色だっただろう桜の木は、すっかり変わって、あちらこちらに緑色の葉が顔を出していた。
「あんたさ・・・」
彼女が口を開く。
「んー・・・?」
「翔子の事好き?」
「翔子?嫌いじゃねぇけど?おもしれぇし」
「そっか・・・」
彼女が目を伏せる。
「・・・じゃあ、わた・・・・」
「美夏ちゃぁあん!!」
遠くから聞こえるおばさんの声が、彼女の声を遮った。
「晩ご飯手伝ってくれなぁい?」
「はぁい!!」
彼女は、応えると僕に「ごめん」といって走って行ってしまった。
あいつはいったいなにを言おうとしてたんだろ・・・?
っていうか何で翔子?
僕はぽつんと立っていた。
結局、僕は何もできずに帰ることになった。
無念・・・。
どうやったら学校に来てくれるのだろう?
どうやったら・・・。
どうしたらいいんだ?僕は。
何もできない・・・。
自分の無力さを知った夜だった。
「どうしたらいいと思う?」
僕一人では、到底思いつかなかったので翔子に問いかけてみた。
「さぁ?」
「さぁって・・・」
「ほっといたらいいんじゃない?」
「ほっとけねーよ、受験もあるのに」
「そんなにあいつが好きなワケ?」
「す、好き?!!」
思いがけない翔子の言葉に戸惑う僕。
「いや、そんなに感情じゃなくって・・・っ!!」
「そんな感情でしょ?明らかに」
「ど、どこが?!」
「ダーリン、あいつのことばっか心配してるんだもん」
翔子が、ぷくぅっと頬を膨らませる。
「そんなことっ」
・・・ないよ。
「じゃあさ、証明してよ」
「証明?」
翔子がにまぁっと笑う。
うっ!
嫌な予感・・・。
「私と付き合って?」
「あ、ありえねぇっつーの!!」
「じゃあ、ダーリンがアイツを好きな事、皆にバラしちゃお! お〜い、みなど・・・」
「あわわわ!ちょっ」
思わず翔子の口を塞ぐ。
ってか、これじゃ僕がアイツのこと好きみたいじゃん。
「じゃ、いい?」
「わかったよ!!」
やや、自暴自棄になりながら承諾した僕だった