あの日から、僕に不幸が次々と襲いかかった。
例えば、翔子が抱きついて来て失神しかけるし、皆には僕が彼女の事を好きだと誤解するし・・・。
やっぱ、つきあうとか軽々しく言うんじゃなかったな。
「ダーリンッ!」
来た・・・。
「やっぱ、わかれようよ・・・」
「やーだ!私の初めての彼氏なんだからこんなに早く別れるなんて、ずぇえったいやだ!!!」
どうにかしてくれ・・・。
このわがまま姫を。
「ダーリンは私の事好き?嫌い?」
「嫌いじゃないけどさ・・・」
「じゃあ、いいよねっ」
翔子がにこっと笑う。
しまった・・・。
丸め込まれてしまった・・・。
「ほら。次、移動教室でしょ、早く行こ!」
放課後、日が西に傾きかけた頃。
僕は、国語の文法ワークを教室に忘れたのでとりにきていた。
遠くから、吹奏楽部の練習と野球部の掛け声が聞こえる。
僕は何気なく教室の扉を開ける。
――ガララ
よかった。
開いてたみたい。
日直、鍵を閉め忘れたのかな?
ま、いいや。
そんなこと。
僕が顔を上げる。
その向こうには、茜色に染まった机といすに座っている
彼女がいた。
こんな所にいるはずが・・・。
僕はごしごしと目をこすった。
「美夏・・・?」
呟くような声音だった。
そのせいか、彼女は気づいていない。
ただ、虚空を見つめていた。