小説『最強彼女』
作者:櫻井音羽(音羽.Com)

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―キーンコーンカーンコーン

予鈴がなった。

「あ、もうすぐ昼休み終わりだ」

「え。まじでか」

昼飯食ってねぇよ!

ちなみに、この中学の昼飯は給食ではなく各自が持ってくる弁当だ。

僕んちはお母さんもお父さんも料理が作れないため、

いつも、自分が登校途中にコンビニに寄ってパンを買う。

最初は面倒くさかったが、この頃は日課のようになっている。

僕は、いそいで教室までいって、バッグを探った。

だが、みつからない。

「あれ、なんでだ・・・?」

僕は苛立ちながらバッグを探る。

「ない!」

「ダーリン、どしたの?」

「パンがねぇ!」

―キーンコーンカーンコーン

「・・・」

おなかすいた・・・。

日が傾きかけた頃、僕は家路についていた。

さっきから、ひっきりなしにおなかが鳴る。

ん?

さっきむこうに彼女が見えたような・・・。

まさかな・・・。

おなかが減りすぎて幻覚みたのだろう。

やっぱ昼飯無しはきついな。

僕は自分の頬を二、三回たたいてまた家路を急いだ。

・・・どこからか彼女の笑い声が聞こえる。

僕は、辺りを見回した。

あ、あれか?!

彼女らしき髪の長い女の子を見つけた。

後ろを向いていて顔は分かんないけど。

「美夏っ!」

彼女らしき女の子の肩に手を置く。

振り返ると・・・


彼女じゃなかった。


「なに?」

「いや、人ちがいです。すみません・・・」

「もうっ!」

そういうと、彼女じゃない女の子はワンピースの裾をひるがえして歩き始めた。

「すみません・・・」

僕はもう一度女の子の背中に謝って

肩を落として家に帰った。

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