小説『最強彼女』
作者:櫻井音羽(音羽.Com)

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「西山君・・・ってさ」

彼女が、口を開いた。

僕らは今、帰り道の途中だ。

しらなかったのだが、帰り道が同じらしい。

「?」

「一人で居るの・・・好きなの?」

「え?う、ううん!別に好きなわけじゃない・・・ですよ?」

好きなわけない。

休み時間が一番つらい。

ひとりぼっちで、友だちという友だちも居なくって・・・。

ほしいっていっても、もうグループは完全に出来ちゃって、入るに入れないし。

大体、僕は自分から人に話しかけるタイプじゃないし・・・。

だから、あきらめてるけど、心の奥深くのどこかで『誰かが話しに来てくれはず』って思ってるんだ。

だから、机に伏せて待ってるんだ。

「あははっ、何で敬語?!」

彼女がかわいらしく笑う。

「いや・・・まぁ・・・」

特に理由はなかったのだが・・・。

「ねぇ、彼女ぉ」

どこからか甘ったるいにおいとともに男の声が聞こえた。

声がした方向を見る。

そこには、金色に染めたきらびやか(?)な髪、鼻ピアス、剃ってなくなっている眉毛、

まぁ・・・チャラ男って言ったら

分かってもらえるだろう。

チャラ男がはなしかけてきた。

うざったいほどの甘ったるい声で。

ナンパか?

まぁ、彼女程きれいだったらされるわな。

「なんですか」

さ、さすが、ナンパされなれてる?!

「そんな冴えない男と歩いてねぇで、俺と歩かねぇ?いろんなとこ、つれってあげるからよぉ」

冴えない男で、悪かったな(怒)

「結構です」

れ、冷静だな。

戸惑いもせず、彼女は凛と立ち、冷静で、僕は彼女を美しいと思った。

いや、顔も美しいんだけどさ、なんていうんだろ・・・まぁ、直感かな(笑)。

「そーいわずにさぁ」

チャラ男が、しつこく誘う。

「行こう、カズ」

え?カズ?!

そう思うのもつかの間、僕は彼女に腕を引っぱられた。

ずんずんと大股で進んでく彼女。

「ちょ、まてよぉ。人の話聞こーよ」

人の話聞ーてねぇのはてめぇだよ、チャラ男。

チャラ男が、ポンと彼女の肩をつかんだ。

「・・・めろ」

どこからか、低い声がした。

まるで、地獄から這い上がって来たような・・・ぞくっとする声だ。

「へ?」

「やめろっつってるやろっ!!!」

彼女は、チャラ男の腹を蹴った。

ナイス!彼女。 

・・・じゃなくて。

えぇ???!!!

あの軽山田さんが!?

ってか、関西弁!?

チャラ男も、うずくまり腹を抱え、あり得ないという風に、立っている彼女を見上げた。

「うっといんじゃ、ウチをナンパしようなんて、百年はやいわ!!」

彼女が、うずくまってるチャラ男の背中を勢いよく踏んづけた。

うめくチャラ男。

最終的には、「すみません!すみません!もうしませんから・・・!!!!」

と土下座して謝る始末。

・・・なんか、チャラ男がかわいそうになって来たよ・・・。

「ホンマやな?」

「はいぃい」

彼女が、やっと蹴るのをやめた。

チャラ男が、すたこらさっさと逃げて行く。

あばよ・・・チャラ男・・・。

「ばーか」

彼女が僕の方を向く。

そして、目を剥いた。

顔色がどんどん青くなっていく。

気づいてなかったんだ・・・僕の事。

「あはは・・・」

笑うしかなかった。

「このことは、ぜえったい・・・内緒やで」

うなずく僕。


「ばらしたらどうなるかわかってるやろなぁ?」

僕は何も言わず、何回もうなずくしかなかった。

だってうなずかなかったら殺されそうだよ・・・。

ここに僕の立場になってたって見たら分かると思う。

いきた心地しないよ?

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