「最近、お前美夏ちゃんと仲良くね?」
小学生の頃、友だちだった(しかも高校に入るまでずっと一緒のクラスだった)甕山慶太郎(みかやまけいたろう)が 数年ぶりに話しかけてきた。
慶太郎は、一言でいえば人懐っこくて可愛い。
例えると、そう・・・まるで、犬みたいだ。
誰にでも、愛想を振りまく。
だが、高校に入るとクラスが違ったせいか、友達が多くなったせいか、、
もっとほかの理由があったせいか、
分からないけど、一言も言葉を交わしていない。
あ、でも一回あった。
中一の時の給食時間。
「コロッケ、俺にくれ」
「い、いいよ、あげる・・・」
本当は食べたかったのに、あげたことを、そのあとすごい後悔した。
ついでに、言っとくが、慶太郎は『彼女』のファンクラブの部長である。
彼女の素顔が、ああだと知ったら失神するくらい驚くのだろうか?
僕は、少し思った。
「い、いやそんなことないよ」
「そんなこと、あるだろ。俺、知ってんだからな。昼休み、美夏ちゃんと話してること」
「いや、話してたっていうか・・・脅され・・・」
そう、毎日毎日『あのこと』を言ってないか確かめられるのだ(拷問に近いやり方で)。
「?」
僕は、あわてて手で口をふさいだ。
彼女が、こっちを睨んでいるのが、わかったからだ(地獄耳か?)。
「どーした」
慶太郎が、訝(いぶか)しげに僕を見る。
「ううん、なんでも」
「とにかく!!」
慶太郎が、僕の机をバンッと叩いた。
その音で、周りの視線が集まる。
「今後もそういう、行動がみられるなら学年中でお前をハブることだって、俺には簡単にできるんだからな!」
僕は、いつもと違う慶太郎にビクつきながらうなずく。
「よしっ」
慶太郎は満足したらしく、いつもの笑みで自分の組へ帰って行った。
っていうか、今日の件について昼休みに、こってりと彼女にしぼられることだろう。
それは、みんなにハブられるより、僕にとっては怖いことだった(いつも、ひとりぼっちだし)。