小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第10話 リニスとフェイト





 ――タマモの尾の数が増えた。
 その出来事は八代一家(俺、タマモ、リニス)を騒がせた。これぞ古代の遺産と太古の英霊のコラボレーション。
 タマモの推論はこうだ。
 玉藻の前はそもそも神霊を英霊にまで格を落としたから英霊召喚が可能になるわけで、その代わりに一気に弱体化する。ゲーム本編でも正規の英霊としてではなく神霊や悪霊としてなら基本どんな相手でも無双できると豪語していた。
 今回ジュエルシードの魔力を吸収したことで霊格が変化しつつあるのかもしれないとのこと。

 試しに地下に封印してある分も吸収して貰った。

 




 

四尾になりました。

 これってステータスはどうなってるんだろう?
 マスターとしての透視能力で見てみることにした。

【クラス】キャスター
【マスター】八代彼方
【真名】玉藻の前
【性別】女性

【ステータス】
 筋力 C→B+  魔力 A++→EX
 耐久 C→B+  幸運 B→A+
 敏捷 D→B   宝具 EX

【クラス別スキル】
 陣地作成:C
 
【固有スキル】
 呪術:EX
 変化:A

 なにこれこわい。
 
 めちゃくちゃ強くなってる。霊格が神霊に近くなっているからだろう。
 下手すれば三騎士クラスと殴り合えるレベルにまで強くなっているし、魔力なんてカンストしてるし。
 これ九尾になったらどうなっちゃうんだろう。
 
 空っぽになったジュエルシードは念のため再度封印を施してまた地下に仕舞った。





「えーっと流体操作は……」

「良スレ発見。支援……っと」

 俺は魔術の勉強。リニスはネットサーフィン。タマモは寝転がって漫画を読んでいる。
 あれからジュエルシードは一向に見つからない。発動すれば分かるんだろうが、できれば発動前に見つけておきたいよな。

 今出来ることは知識と実力をつけること。せっかくある程度の魔術知識(型月作品本編のもの)があるのだからそれを利用しない手は無い。

「ご主人様ー、これの10巻で何処でしたっけ?」

「その辺に無いー?」

 タマモは怠けているように見えるが実はそうではない。以前の樹の事件があってからは自分の使い魔(式神?)を数体町に放っている。これのお陰で何かあればすぐに分かる。

 流体操作で|月霊髄液(ヴォールメン・ハイドグラム)を思い出すが、これを水で代用したら結構強くないかな?
 氷雪系最強(笑)のひばんたにみたいに空気中の水分をかき集めて作れば持ち歩く必要とか無いし。炎は言わずもがな、雷も純水にすれば通さないし。ウォーターカッターなんてものがあるくらいだから破壊力は申し分無さそうだし。応用は幾らでも利きそうだ。

 思いついたことをメモろうとしたら急に心がざわついた。もしかしたらジュエルシードかもしれない。他二人を見ていると二人とも液晶画面や漫画から目を離している。

「……もしかして発動した?」

「はい、反応があるところに使い魔を向かわせてます。………………あぁ、もう対処してる子がいますね。大丈夫そうです」

「やっぱりなのは?」

「それともう一人です。金髪でイタイ服を着てる子がいますね。もっと何かなかったんでしょうかね。あ、映像を送りますね」

 俺の頭の中にタマモの使い魔が見ている映像が流れ込む。
 なのはともう一人の魔法少女が戦っている。もう一人の方はスクール水着にマントを羽織ったようなぺドフィリア歓喜の格好。

 ……うん、無いわこれ。
 スクール水着が嫌いというわけではないけれど、これは無い。

 俺やなのはとそう年も変わらないだろうに。この子の母親は一体どんな教育をしてるんだか。
 あれか? パンツじゃないから恥ずかしくないのか?

 なのはとの実力差は歴然のようでなのはは成す術なく倒されてしまった。
 クールに去ってるんだけど、どうもあのスク水マントではしまらないな。

「……フェイトッ?」

 リニスは驚愕の色を顔に浮かべている。まるで信じられないものを見ているかのようだ。
 
 彼女にも俺を通じて同じ映像が流れたのだろうが、反応がおかしい。何よりさっき呟いた言葉。これは彼女を指しているのか?

「リニス? もしかしてこの子の子と知ってるの?」

「知ってるも何も私にとっても娘のような存在です! 何故フェイトが地球に? プレシアはこのことを知ってるんですか……」
 
 リニスの言葉の後半はブツブツ呟いていただけなのでよく聞き取ることが出来なかった。
 ジュエルシードを回収するところを見る限り、十中八九目的はジュエルシードだろう。なのはについてもそうだが、あんな危険物を何故欲しがるのか。

「ちょっとフェイトに会ってきます」

 そう言うや否やリニスは家を飛び出していった。今から急げばまだ遠くへは行けないだろう。
 俺とタマモも気になってついて行くことにした。

 人目がある所で飛ぶわけにもいかず、感知できる魔力を辿りながら、リニスは走っている。その後に俺とタマモが引き離されないようについて行く。俺は魔術で強化しないとついて行けなかった。

 方向は以前探索した際に立ち寄った月村家の方角。そういえばなのは、アリサ、すずかは週末に三人で女子会を開くって言ったことを思い出す。俺も男三人で遊ぼうかと思ったが、あいつらの家も連絡先も知らないのを思い出して断念。今度聞いとこう。
 
 いたッ!!
 流石に街中では着替えるか。黒いワンピースというそれ程珍しくない服装で歩いている。

「――フェイトッ!」

 リニスが彼女の名前を呼びかける。
 彼女は驚いてこちらを振り向いて、さらに驚いた。

「えっ、嘘……リニス?」

 彼女は突然の出来事に固まっている。
 固まっている少女をリニスは優しく抱擁した。

「良かった元気そうで。フェイト……大きくなりましたね」
 
 彼女は混乱して上手く言葉を話せないようだ。
 リニスはリニスで我が子との再会を喜ぶかの如く抱擁を続けている。

「にゅふふ〜、ご主人様あったかーい」

 タマモもそれに触発されたのか、俺を後ろから抱きしめている。
 所謂あすなろ抱き。
 忘れないで欲しい。人の目があることを。

 話が進まないので、タマモには悪いが抱擁を振り払い、助け舟を出すことにした。

「ゴホンッ! えーっと積もる話もあるだろうけど、とりあえずリニスはこの子に聞きたいことがあったんじゃないの?」

 俺の呼びかけにリニスははっと我に返った。

「そ、そうでした! フェイト、何故貴女がここへ? プレシアはこのことを知っているのですか?」

「え? えっと……話してもいいのかな「話なさい!」は、はいっ、母さんに集めてきて欲しいっていわれましたっ!」

「プレシアが? 何に使うかは?」

 フェイトさんはその質問に横に首を振った。
 
 えーっと、フェイトって娘の言葉とリニスの言葉を照らし合わせると、プレシアって人はフェイトの母親でリニスの知り合い? なのかな。そしてジュエルシードを集めるのも母親のためと。

「リニス、後ろにいる男の子と女の人は?」

 今更ながらフェイトさんはリニスの後ろにいる俺に気が付いた。タマモは耳と尻尾を隠しているから人間だと思ってるんだろう。

「ああそうですね。紹介してませんでした」

 そのブラウンの瞳はリニス越しに真っ直に俺を見つめる。
 俺は気を引き締めて彼女の前に立った。

「俺は八代彼方。歳は9歳で、いろいろあって今のリニスのマスターやってます」

「私は、ここではキャスターと名乗っておきましょうか」

「この二人が瀕死の私を救ってくれたんです」

 リニスの言葉にフェイトさんは目を開いて驚く。

(フェイトは私の維持にかなりの魔力を消費することを知っているから、それについて驚いてるんじゃないでしょうか)

 リニスは俺の疑問を察してくれたのか、念話で先に教えてくれた。
 
「あの……リニスを助けてくれてありがとうございます」

「こっちが勝手にやったことだし気にしなくていいよ。それとそんなに歳も変わらないだろうし敬語は使わなくていいから。えーっと……フェイトさん?」

「え、えと、君も敬語は使わなくていいで……いいよ。そ、そういえば自己紹介がまだだったよね。フェイト・テスタロッサです」

 フェイトさんはおどおどしながらも真っ直ぐに自己紹介をしてくれた。
 使い魔を通して見たクールな印象は何処へやら、引っ込み思案の世間知らずなお嬢様といった風に見受けられる。

「そうだ、アルフにも会ってあげて。きっと喜ぶよ」

「アルフも来てるんですか。それは楽しみですね……」

 



「ここがフェイトとアルフが住んでいるマンションですか」

 一行はフェイトの案内で彼女が住処にしていると思われる郊外のマンションに到着する。マンションの階段を上り、目的の部屋に辿り着くと、フェイトがポケットからキーを取り出してドアを開ける。

「あ、フェイトお帰りー。ジュエルシー……リニス!?」

「アルフ、近所迷惑ですよ。そんな風に育てた覚えはありませんよ?」

「わ、悪かったよ……」

 出迎えたのは少々というかかなり過激な格好のお姉さん。そして耳がついている。

「犬耳?」

「あたしは狼だ! つーかアンタ誰だい?」

 でも狼ってイヌ科の生き物じゃなかったっけ?

 見ず知らずの俺とタマモに対して警戒を強めたアルフさん。

 これはよろしくないとリニスがさっきフェイトに話したことと同じことを簡潔にアルフさんに伝えると警戒を弱めてくれた。それでも完全に信用しているわけでは無いようで警戒は止めていない。確かに恩人だからといって突然現われた目的不明の謎の人物を信用しろというのは無理がある。

「あたしからも礼を言っとくよ。リニスを助けてくれてありがとう。あたしにとっても母親みたいな人だったからまた会えて嬉しいよ」

「久しぶりですし記念に夕食でも作りましょうか」

 自己紹介も程々にお邪魔させて貰う。

「これは……」

 リニスは冷蔵庫の中を見て硬直する。気になって覗いてみると中に食材が何も入ってないのだ。入っているのはミネラルウォーター。
 式のアパートかっ! ……前にもあった気がする。

 ゴミ袋にはカップ麺の容器、コンビニ弁当の空箱、ペディ○リーチャムと表記されている空缶にロイヤル○ナンと表記されている空き袋。
 
 後半ドッグフードじゃねーか。

「えと……もしかして怒ってる?」

「別に怒ってないですよ? 私を怒らせたら大したもんですよ」

 何処の小力いいい!!!???

 顔はニコニコしているが、後ろには般若の|幽波紋(スタンド)が見えるような気がする。

「何なんですかこのインスタントとコンビニ弁当ばかりの食事は!?」

「し、仕方ないだろ、フェイトもあたしもジュエルシード探しで忙しk「言い訳無用!!」ひっ!」

 アルフさんは反論を試みるもあっけなく封殺される。フェイトは怯えて反論する気にもならないようだ。笑顔のままだというのに逆に恐い。

「フェイトはまだ成長期だというのにあんな食生活では身体を壊してしまいます。貴女達にとってジュエルシードがどれ程のものかは知りませんが、自分ほど大事なものは無いでしょう? アルフもアルフです。本来主人のサポートをしなければならない使い魔が主人の現状を放って何をしてるんですか?」

「「ごめんなさい」」

 しゅんとするフェイトとアルフ。そしてこのお説教は二人を正座させたままで一時間ほど続くのであった。


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コメント

フェイトに接触。
別にフラグは立ってない。

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