小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第13話 彼方「勝ったッ! ジュエルシード篇完!」 なのは「へーえ、それで次回から誰がこの高町なのはの代わりをつとめるの?」






「リニス、私の耳がおかしくなってのかしら? 今、アリシアを蘇らせるって聞こえたのだけど」

「……私も聞こえましたから多分正常じゃないかと」

 俺の爆弾発言によりテスタロッサ一家、特にプレシアさんとリニスは困惑している。

「あなたはアルハザードに行く方法を知っているの?」

「そんな所に行く方法なんて知りませんし、そもそもアルハザードを知りません。ゾンビとか化け物を撃ち殺すゲームか何かですか?」

「全然違うわ……」

 だって適当に言っただけだからね。

「ご主人様、時間が勿体無いのでさっさと済ませましょう」

「うん。それとプレシアさん。この契約書にサインしてもらえませんか? できれば他三人にも。……それと出来れば血判で」

「…………いいわ」

 プレシアさんは契約書におかしな点が無いかどうか隅々までチェックして契約書に筆を滑らせて、先程吐いた血で印を押す。
 他の3人にも同じようにサインを貰った。

 俺はタマモの邪魔にならないように後ろに退がる。
 すれ違いざまに軽く言葉を交わす。誰にも聞こえないように気をつけてだ。

「令呪のバックアップはいる?」

「冥界から魂を呼び寄せるだけなので今回は必要ありません。今後のためにとっておいてください」

 タマモは玉藻鎮石を取り出して、数回の深呼吸で心を落ち着けていた。

「スーッ、ハーッ……よしっ……っとその前にプレシアさん」

「な、何かしら?」

「最終確認です。フェイトちゃんはプレシアさんにとって何ですか?」

 タマモはプレシアさんの目を真っ直ぐに珍しく真剣表情で見つめている。
 それに対してプレシアさんも真剣な表情で見つめ返して応える。

「私の娘よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 それを聞くことが出来たタマモは再度構えに入る。
 流石に今のプレシアさんはアリシアが生き返ったらフェイトは用済みと態度を変えるなんてことは無い……と思いたい。

「出雲に神在り。審美確かに、魂に息吹きを。山河水天に天照す。是、自在にして禊の証。名を玉藻鎮石。神宝宇迦之鏡也! なんちゃって」

 タマモの宝具がその真の力を解放する。
 空間が闇に覆われ、無数の鳥居と護符がみんなの周りを囲んでいる。
 まるで大きな神社にでもいるかのようだ。

 タマモの宝具『|水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)』。これはのちに、|八尺瓊勾玉(やさがにのまがたま)、|天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と並ぶ三種の神器ともいわれている|八咫鏡(やたのかがみ)の原型。
 この力を解放することでタマモは制限無しの魔術行使をすることができるが、これの本来の能力は魂と生命力を活性化、死者でさえも蘇らせることが可能だ。
 英霊としての玉藻の前ではその力は使えないが、ジュエルシードによって神霊に近づいた今のタマモであれば本来の力を使うことが出来る。

「……んっ……ううん……」

 アリシアが……今まで深い眠りにでもついていたかのように薄っすらと目を開ける。どうやら成功したようだ。流石に完全な無からの蘇生は色々不安が残るからな。

「ああ……アリ……シア……?」

 プレシアさんは手を振るわせながらアリシアの頬を撫でる。

「母さま?」

「アリシアァァァァァァァ!!!」

 長い間望んでいたアリシアの蘇生が今叶えられ、プレシアさんはまた大粒の涙を滝のように流す。一方のアリシアは何が何だか分からず困惑している様子だ。

「母さま、痛いよ……」

「ご、ごめんなさい、つい嬉しくて」

「あっ、リニスもいる。それと……私?」

 アリシアはフェイトと会う。本来なら出会うはずの無い二人が出会った。

「アリシア、この娘はフェイト。あなたの妹よ」

「えっ!? 母さま、私との約束覚えてくれてたんだ!」

「や、約束? 何だったかしら……?」

 アリシアが歓喜している理由が分からないプレシアさん。
 そういえばプレシアさん、自分の病気が治ってることに気がついてないのかな。

「ほら、ずっと前に妹が欲しいって言ってたでしょ」

「……あ」

 プレシアさんに心当たりがあったのか、近くにいたフェイトと一緒にアリシアを再度抱きしめた。もう二度と離さないように、もう二度と失わないように。

「……あれ、母さま老けた?」

「グバハッ!」

「プレシアーーー!!!?」
「母さーーーーん!!?」
「もう何が何だかあたしにはさっぱりだよもう……」

 アリシアの爆弾発言によりプレシアさんは撃沈。病気は治ったはずなのに何故か吐血して気を失った。それをリニスが介抱して、フェイトがパニックに陥って、さっきから蚊帳の外のアルフがいじけて阿鼻叫喚の事態が起こった。

「ご主人様、これどうします?」

「……一家水入らずの空間を邪魔しちゃいけねーよな。八代彼方はクールに去るぜ」

「面倒になっただけですよね?」

 阿鼻叫喚の空間から誰にも悟られないように俺とタマモはそっと出た。
 家族で思う存分語り合ってくれよ(笑)。





「えー、見苦しい所を見せたわね」

 一時間ほど時の庭園をぶらぶらして戻ってきたらあの阿鼻叫喚の空間は収まっていた。プレシアさんも落ち着いてるし問題ないだろう。
 あと気になったのが、プレシアさんがちょっと若返っている。魔導師の魔法には若返りかそれとも、変身魔法でもあるのかな。

「私の病気まで治してもらって、あなた達にはホントに何とお礼を言ったらいいか……本当にありがとう。私達家族はあなた達に救われたわ」

「私からもお礼を言わせてください。プレシアを、フェイトを、アリシアを、そして私を救ってくださって本当にありがとう」

 大人二人から深く頭を下げられた。
 ちょっと困った。

「別にいいですよ。みんなハッピーならそれでいいじゃないですか。……あっ、このことについては他言無用にして貰えませんか?」

「ええ、もちろんよ。死人の蘇生なんてばれたらえらい事になるわよね。フェイト、アリシア、アルフもいいわね」

「うん」
「はーい」
「わかったよ」

 テスタロッサ一家を信用していないわけではないけれど、先程の契約書、もとい|自己強制証文(セルフギアス・スクロール)を書いてもらったからまず他言はしないはず。あとでアリシアにも書いてもらおう。

「あ、それとジュエルシード集めるのを手伝ってもらえませんか? あんなのがあったら地球が危ないので」

「それは構わないわ。フェイト、これから彼を手伝ってあげなさい。リニスとアルフはフェイトのサポートをお願い。私も体力が戻り次第参加するわ」

「「「はい!」」」

「母さま、私は?」

「アリシアは魔法が使えないでしょう?」

「ぶー」

 アリシアはぶー垂れているが仕方ないことだろう。

 残りのジュエルシードは17個。そこからなのはが持っている個数を引いた個数が残りか。
 できることなら移動手段が欲しい。なのはやフェイトみたく空を飛べたらいいんだけど、神代の魔術師でもない限り無理。

 仕方ねぇ、新しいサーヴァントを召喚するしかなさそうだ。
 移動手段を持ってるとしたらライダーか。セイバーも騎乗スキルを持ってるから案外いけるかもしれんけど。





「帰ってきたー!」

 数時間いただけなのに、もう何日も帰ってないような気分だ。
 リニスはしばらく時の庭園に残ってプレシアの看護をすることになった。フェイトやアリシアもしばらくは一家団欒を堪能したいだろうし。

「さて」

 俺は書斎へ行き、英霊召喚というか降霊術に関する書物を集め始める。
 大体集め終えたら今度はそれらの本を読み耽る。

 ただ召喚するよりもそこにアレンジを加えることでより強力にすることが出来るかもしれない。実際に第三次聖杯戦争でエーデルフェルトの姉妹が光と闇、両面を受け持つというその特性から『善悪両方の側面から同一クラスでサーヴァントを二体召喚』というトンでも行為によってセイバーを二体召喚したし、アインツベルンも悪神であるアンリマユ(ただし人霊)を召喚した例もあるし、第四次聖杯戦争ではケイネスが魔力供給をソラウに肩代わりして貰って自分は充分な魔術の行使を可能とした例もある。
 第五次でもメディアが山門でアサ次郎を召喚したり、臓硯がアサ次郎を触媒にして真アサシンを召喚したってのもあったな。

 ……聖杯戦争でズルしてる奴って結構いるんだな。
 
「英霊2体の同時召喚なんて流石に出来んよなー」

 世の中そんなに甘くないだろう。俺にエーデルフェルトの特質なんて無いだろうし、仮に出来たとしても反英霊もついてくるのは気が進まない。

 そんな中、ジュエルシードを触媒にして英霊召喚とかしてみたら面白そうとかちょびっとだけ思ってしまった。
 勿論何が起こるか分からないからそんな真似できないしするつもりもない。

「なら召喚する英霊をできるだけ強化する方向でいくか」

 手っ取り早いのは知名度補正か。それが有る無いでステータスや宝具に大きな影響が出る。
 クー・フーリンも日本での知名度が低いせいで宝具は槍しかないし、それに加えてマスターが言峰だっていうのにあれだけの活躍をしたのは流石としか言いようがないな。城と戦車の宝具を携えた兄貴も見てみたいけど。

 そういえば知名度補正って仮にその英霊が有名な地、例えばアーサー王ならイギリスで召喚した場合、日本に行ったらその補正は消えるのか、それとも固定されてそのままなのか。前者なら固定する術を考えないといけないな。

「それなら私とご主人様のダブルマスター方式で召喚するっていうのはどうでしょう?」

 タマモのアドバイスに俺は頭を回転させる。
 確かに今のタマモなら俺の魔力供給もほとんどいらない、半受肉状態と言っても過言では無いかもしれない。それにサーヴァントの魔力供給が増えるのならステータスアップにも繋がるだろう。

 地下の訓練場も何かに使えないかな。好きな環境に設定できるみたいだから英霊が知名度補正を受けられる環境をつくりだせれば。

「……ちょっと疲れた」

 近いうちにアトラス院の分割思考とかもマスターしないとなぁ。分割思考ってゲームやりながらテレビ視てるような感覚じゃだめかな。

 最近ちょっとタマモに頼りすぎか?
 俺って一人じゃなーんにも出来ないな……。

 地道に魔術回路を鍛えてはいるけれどすぐにその成果が現われるわけじゃないからな。|十二の試練(ゴッド・ハンド)のお陰で魔術回路を作動している間の痛みは無い。魔術回路を開いたときに一回死んだことは利点にもなったか。

 魔力って生命力を変化したものだから簡単に増えるわけが無いんだよな。生命力を増やす方法なんてそうそう……いや待てよ、生命力に関与する技術ってあるよな。

 ――波紋。

 ジョジョの奇妙な冒険の一部、二部での敵に対する主な敵への対抗手段。|幽波紋(スタンド)が出てきて以降はめっきり出番が減ってしまったが、上手く応用すれば魔術回路の出力アップを見込めるかもしれない。魔術との併用で思わぬ効力を発揮する可能性もある。あれは魔術と違って素質の違いはあれど訓練さえすれば極めることは可能だし。

「ごー主人様っ」

 俺がグデッとしながらなお思考を働かせているところにタマモが背後にまわって抱きついてくる。所謂あすなろ抱きというやつだ。
 これ、男と女の立場逆じゃね?

「どうしたのさ急に」

「二人っきりになる機会って最近無いなーと思いましてですね。今のうちにご主人様分を補給させてもらってるんです」

 にゅふふふと笑いを押し殺したような奇妙な声を上げながら頬ずりをしてきたり、背中に胸が密着して柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。

「あの……当たってるんですけど」

「ご主人様ちゅっちゅペロペロ」

 聞いちゃいねーし。

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作者コメ
最近カンピオーネというアニメを見ました。
いきなり主人公が無限の剣製みたいなことやってよく分からなかった。
ちょこっと調べたら神様が関係してるから彼方君がヘラクレスを殺して――みたいな無理ゲー臭いこと考えてました。

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