小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第14話 ようこそ、海鳴温泉へ 





アリシア復活から数日後、その間に新たにジュエルシードを二つほどゲット。
 エンペラークロウみたいなデカイ鳥を百頭で撃ち落したり(殺してない)じんめんじゅみたいな木の化け物と戦ったり(タマモが凍らせて終了)とジュエルシード集めは順調だ。
 新たな英霊召喚はちょっと諦めた。そもそも魔術始めて一ヶ月にもならないような奴が召喚に細工をするのには無理があった。どう頑張っても確実に2年以上はかかりそう。それならタマモを強化していった方が早いし、女性の英霊召喚して喧嘩になっても困る。
 英霊の喧嘩なんて止められないしね。

世間ではGW。
 言い換えれば黄金週間。
 連休の間に家族連れで海や山に遊園地、中には海外へ旅行なんて贅沢なのもあるかもしれない。俺達もその例には漏れず、バスに揺られてぶらり途中下車の旅。
 俺達一行(俺、タマモ、フェイト、アルフ)はジュエルシードの反応があった温泉宿へと向かっている。

「ご主人様! 温泉ですよ温泉!」

「ああ、うん分かったから。周りの人に迷惑だからじっとしててくれ」

「ブー、ご主人様のいけずー」

「ア、アルフ、建物が見えてきたよ!」

「う……硫黄臭いよ……」

 タマモとフェイトの浮かれようと言ったら半端ではない。特にフェイトは旅行経験が無いから尚更。アルフは嗅覚が優れているのが災いし、鼻を抑えていた。
 みんな、本分はあくまでジュエルシードだからね。
 だがせっかく温泉まで来て日帰りは少し味気ないので一泊して帰る予定だ。
 アリシアも行きたいとごねたがこれは遊びではないので流石に却下。

 海鳴温泉宿の近くのバス停に到着し4人はバスから降りた。時刻表を見るとバスが一時間に2つか3つしか来ないのが分かった。注意せねば。
 
 旅館へは徒歩5分程度の近場ですぐに到着。
 穴場であることもあってかこの時期でも観光客でごった返す事は無い。公には出来ないようなことをしているこちらからすれば非常に好都合なことであるし、何よりこのもの静かな空気が風流さを醸し出している。

「う〜〜〜んっ、空気がおいしい」

「空気っておいしいの?」

 俺の何気ない一言に疑問を投げかけるフェイト。
 彼女も俺と同じように深呼吸するが「味がしない」と呟いた。

「いや、気分の問題だから」

 フェイトって実は天然なのか?
 最初のちょっとミステリアスな雰囲気が軽く台無しだった。

 早速温泉に行こうとチェックインを済ませる。
 
「ご主人様、一緒に入りましょう」

 男湯と女湯に分かれる脱衣所で早速タマモに捕まった。勘弁してくれ。

「ヤだよ!」

「ほら、男でも11歳までなら女湯に入れるって書いてありますし」

「ヤなものはヤだ!」

 俺の身体は9歳でも精神はもう20歳なんだ。それに女湯に堂々と入る度胸なんて無いんだ。男として憧れのシチュではあるけれど倫理的に考えて色々危ないんだ。

「彼方も一緒に入ろうよ」

「何言っちゃってるのフェイトさん!? あれか? お前ら俺を犯罪者にでもしたいのか?」

 ガキだけならいい。ロリコンじゃないから別にガキの裸を見たってどうにもならない。だがさっき女子大生っぽい人が入って行ったのを見た。
 これはアカン。

「|固有時制御(Time alter)|・()|二重(double)|加速(accel)!」

「ああん」

 一瞬の隙を視てタマモの手を振り払い、固有時制御という名のハッタリ&全力逃走をする。
 脱衣所に入ってしまえばもう追って来れまい。
 俺はゆっくりと温泉を堪能したいんだ。
 鼻歌交じりに着ていた服を脱衣所の竹籠に放り込む。

 全裸になった俺はタオルを手に持って風呂場へ移動。かけ湯をして早速入る。
 タオルを湯に浸けるのはマナー違反なので頭の上に乗せた。

「ふぅ……いい湯だ……」

 向こうの方には露天風呂があるな、後で入ってこよう。手前には打たせ湯もある、修行が出来るな。あっちはサウナか……。サウナは別にいいか。

「クゥォォオオオ…………コォォォォォ」

 風呂に入っている間は暇だし呼吸法の練習でもしておきますか。
 『吸う』、『吐く』のラップタイムはどちらも10秒強くらいで10分には程遠い。強化魔術で肺などの呼吸器官を強化して不足分を補うって方法もあるが、そういうのは最低限のことが出来てからだな。

 朝風呂にしては遅い時間帯だというのもあってか俺以外誰もいない。
 へっへー、泳いでもだーれも文句言わないぜー。

「ん? 先客がいるのか……」

 ガタイのいい高校生くらいの兄ちゃんが入ってきたので急遽水泳をストップした。
 
 ……あれー? なのはの父ちゃんに何か似てね?

「何か用かな……?」

「あー、つかぬ事お伺いしますが、なのはという名前に心辺りはありませんか?」

「君はなのはの知り合いなのか?」

「あー、はい。同じクラスの八代といいます。なのはさんのお父さんにどことなく似ておりましたので声をかけてみた所存でございます」
 
「いや、そんなにヘりくだらなくても。……そうか、君がなのはの言ってた八代君か」

 なのはのお兄さんは俺を品定めするようにジッと見てくる。本質を見透かしてくるようで何かいい気がしない。
 あいつはこの人に俺のことを何と言ってたのだろう。気になります。

「今日はなのはさんのお兄さん「恭也だ」……恭也さんだけでここに?」

「なのはとその友達も一緒に来てるよ」

 点蔵がいないということは誘われなかったか、それとも女湯でも覗きにいったのか。
 後者でないことを祈ろう。

「あれ? なのはって今女湯に入っていたりします?」

「そうだが? ……まさか覗きに「行きませんから!!」」

 失敬な、そんな度胸があったら堂々と女湯に入りますよ。というか普通に犯罪だし。
 俺が懸念しているのはそんなことでは断じてない。

 

 一方その頃。

「へ?」

「あっ」

「なのはちゃん?」

((何でここにいるの!?))

 高町なのはとフェイト・テスタロッサは風呂場で再会を果たしていた。
 そしてユーノはラッキースケベを現在進行形で体験していた。

 



「あー、いい湯だった」

 恭也より一足早く温泉を出てキンキンに冷えたフルーツ牛乳をちびちび煽る。
 何でこういうところで飲む牛乳ってやたらと美味いんだろう。ビンだからか?

「あっ、やっぱり!」

 女湯ののれんからなのは、アリサ、すずか、そしてフェイトが出てきた。やっぱり鉢合わせたか。
 フェイトは出てきた途端に慌てて俺の後ろに隠れる。
 なのははジト目でその光景を見ていた。

「アリサちゃん、すずかちゃん。わたし、彼方君とちょっとお話があるから先に行っててくれないかな?」

 なのはから小学三年生とは思えない威圧感が出ている。それに当てられたのかアリサとすずかは「頑張って……」と言い残してお土産屋がある方に早足で行ってしまった。肩に乗っているフェレットが心なしかブルっているように見える。

 しかし、俺は怯まない。
 悪魔のクォーターバックも『ビビッたら負けだ』と言ってたじゃないか。

「彼方君、お話聞かせてくれるかな?」

「……いいだろう。俺もはっきりさせたいと思ってたところだ」

 〜互いにいろいろ説明中〜

「するってーとジュエルシードが落ちてきたのはフェレット……いや、ユーノが搬送中に事故にあったからなのか」

「ごめんなさい……。僕のせいで」

 ユーノは申し訳無さそうに頭を下げている。
 喋るフェレットに謝罪されるなんておそらくこれから体験することはないだろう。

「別に故意にばら撒いた訳じゃないんだろ? 仕方ないことじゃないか。こうやって集めてるんだし」

「それで彼方君はフェイトちゃんに協力して貰ってジュエルシードを集めてるってことなの?」

 なのはにはフェイトがプレシアさんの病を治すためにジュエルシードを集めていた。その最中に同じく危険物であるジュエルシードを集めていた俺と会って一緒に集めている、と説明した。

「彼方とキャスターさんのお陰で母さんの病気はもう治ったから。そのお礼にジュエルシード集めを手伝ってるんだ」

 最初は人見知りしてなかなか喋らなかったフェイトも、慣れてきたのかおどおどしながらも少しずつ喋りだす。
 なのはとユーノは最初の印象とまるで違うフェイトの性格に面食らいながらも俺とフェイトの話をしっかりと聞いていた。

「それにしても地球には魔法文化がないって聞いてたけど……」

「フェイトの話を聞いた限りじゃ俺とお前らとは色々違うみたいだけどな」

 ユーノとなのはには俺が地球の魔導師みたいなものだと言って誤魔化した。
 それにしてもユーノのさっきの言葉ににそれはおかしいとツッコミたかった。
 久遠とかいるし。

「君みたいな人は他に……?」

「さあ? 俺以外は師匠くらいしか知らないし」

「師匠って?」

 おおう、深く追求してくるな。師匠はタマモのことだけど、これを話すと英霊やら魔術やら詳しく話す必要があるし。さっき魔導師みたいなものと誤魔化した意味が無くなる。

「……俺を拾ってしばらく面倒をみてくれたらどっかに行っちゃった。連絡もつかないしどこにいるかはわからないな」

 とりあえず架空の師匠をでっち上げよう。

「へ、拾ってくれたってどういうこと? 彼方君のお父さんとお母さんは?」

 なのはは首を傾げていた。

「あー、うん、いない」

 なのはとフェイトははっと息をのむ。ユーノの目を伏せた。

「ごめん」

「別にいいよ。だいぶ昔の話しだし」

 確かに両親はいない。でも家族はいるし友達だって出来た。寂しくはない。

「はいはい! この話はこれでおしまい。……それでなのははいくつ集めたんだ?」

「何を?」

「ジュエルシードだよ」

 それ以外に何があるというんですかなのはさん。
 ユーノも呆れている。

「まだ5個」

「俺はフェイトが見つけたのと合わせて6個。……まだ10個もあるのかよ」

 まったく、億劫なことこの上ない。ドラゴンボールだって7個だぜ。

「もしかして、君達がここに来たってことは……!」

「察しがいいなユーノ、ここにジュエルシードの反応があるそうだぞ」

 二人の驚き様を見るからに、そのことについては知らずに純粋に観光目的でここに来たようだ。知ってたら危険な事態になることを想定して、家族や友達を連れてくるなんて暴挙はしなかっただろう。

「ど、何処! 何処にあるの!? 早く探さないと」

「なのは、少し落ち着いて!」

 なのはが今更慌てふためく。ユーノが落ち着くように言うが聞きやしない。

「それをこれから探すんだよ」

「わ、私も手伝う!」

 なのはを味方に出来るのであれば最初から協力して貰おうとは思っていたが、向こうから志願してきた。
 真っ直ぐなのはいいが、ちょっと純粋過ぎしやせんか。

「日のある内は止めておこう。人目につく」

 本腰を入れたジュエルシードの捜索は日没までお預けになる。
 なのははアリサとすずかの後を追ってお土産屋まで行くことにするらしい。

「そうだ。フェイトちゃんも一緒に行こうよ」

「えっ、でも私はあなたの友達と面識ないし……」

「だから二人に紹介するの。それと」

 なのはは言葉を切ってフェイトにニッコリと笑いかける。

「名前で呼んで。もう私達友達でしょ? あなたとか君とかじゃなくて名前で呼んで欲しいな」

 フェイトは戸惑って俺の方を……何故俺を見る?

「ど、どうしよう。友達なんて出来たことないし」

「ほう、俺は友達じゃないと。本人の目の前でよくそんなことが言えるな」

 軽く傷つくぜ畜生。

「そ、そうじゃなくて「お前はどうしたい?」――え?」

「お前はどうしたいんだ? 友達になりたいのか、なりたくないのか」

 俺の言葉にフェイトは黙り込む。
 こればっかりはこれ以上の助言は出来ない。

「……なりたい。彼方とも、なのはとも。それになのはの友達とも」

「ならそれでいいじゃないかよ」

「うん」

 この日、フェイトは新しい一歩を踏み出した。

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