小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第3話 突撃! 人外魔境"UMINARI"(予定地)





朝の特訓終わり〜、つってもキャスターに基本的なことを教わって斧剣振ってただけだけどね。キャスターに|十二の試練(ゴッド・ハンド)のことを教えたらそれを参考にして練習メニューを組んでくれた。本当にできた英霊だよ。魔術をある程度使えるようになったら今度は|射殺す百頭(ナインライブス)も使いこなせるようにならないとな。

特訓が終わって少し休んだあとは町の散策を行うことにした。俺はまだここが何処なのかすら分かっていないんだよね。
 
「何処から行きます?」

「とりあえず色々見て周ろうか。地理も覚えなくちゃだし」
 
キャスターは実体化してついてきている。勿論耳と尻尾は隠してだ。

猫が一匹横切ったのを見て、そういえばあの猫にまだ名前をつけてなかったことを思い出す。猫だし世界一長生きしている猫にあやかってタマとかどうだろう? それともミケ……あ、あいつ三毛猫じゃねえや。そういえば三毛猫の雄って実は生殖能力を持ってないんだぜ。

誰に言ってるんだ俺?

 初めにやってきたのは海鳴デパート。スーパーも海鳴って付いてた気がするからここの地名は多分”海鳴”なのかな。
 デパートに真っ先に行ったのには理由がある。クローゼットはあるけど服は学校の制服と今着てる分しか無いんだよ。キャスターの分も言わずもがな、あの露出度の高い青い着物で出歩かせるわけにもいかないし、これから生活していく上で必要になるだろうから服を買いに行くことにした。幸い財布の中に10万円程入っているので資金面の心配もない。

 ここで問題が発生した。俺はファッションとかおしゃれとかに非常に疎い。
 前世でも安くてサイズが合ってて柄が変でなければなんでもいいように考えてたから見繕ってあげるのは不可能。下着なんてもっての外だ。

 色んな人から奇異の視線を向けられながらも(向けられてたのはキャスター)婦人服売り場に到着。

「すいませーん店員さん!」

「はい、どうしたの坊や?」

 坊やと呼ばれてちょっとムッとしたが、今のこの姿では仕方ない。

「お姉ちゃんに似合う服を何着か見繕って貰えないでしょうか? できれば下着も」

 キャスターのことはしばらく姉とか親戚とかで通していこうと思う。

「お姉ちゃん……私がご主人様のお姉ちゃん。……キタコレ!」

 何か喜んでるようだし大丈夫かな?

 キャスターは店員さんに連れられて服を見に行った。
 そして俺は暇になった。

 ……俺も子供服見に行こう。





 俺の服選びは30分程度で終わり、会計も済ませた。安売りしていたお陰で上下5セットで5,000円もしなかったしついでに運動靴も二足買っても1万円しなかった。コスパ高いや。
 レジの人に「一人でお会計できて偉いね」とか言われた。精神が大人なだけにしばらくこんなのが続くのだと思うと気が滅入る。キャスターはどうなったろうか? 女の買い物は時間がかかるというし。
 俺は婦人服のフロアに戻り、椅子に腰掛ける。

〜一時間後〜

 俺は猫の名前を考えながら一時間ほど待っているとさっきの店員さんが俺を呼びに来た。
 猫の性別を調べるのを忘れたから雄の場合と雌の場合の二つに分けてある。雄の場合は直感でエスノト、雌の場合はシエルとシオンで迷ったけどシエルに決めた。

「どうかしら? 私なりにコーディネートしてみたんだけれど」

「ん〜、洋服ってあんまり着ないから違和感がありますね……」

 モジモジしているキャスターが着ているのは青いカットソー(意味は知らない)ワンピースに黒いニーソックスを組み合わせたカジュアルな服装だ。ぶっちゃけすっごく可愛いしすっごく可愛い。大事なことなので二回言いました。

「あの……g弟君、どうですか?」

「うん……良いんじゃないかな」

 キャスターはコレの他にあと2着ご購入。それと靴も見繕ってもらい、しめて57,340円也。
 キャスターの笑顔、プライスレス。

 荷物を持ったまま出歩くのは辛いので、一旦帰えることになった。

「あの、こんなに買って貰って良かったんですか?」

「別にいいよ。通帳にもかなりの額が振り込まれてあったし、授業料は別に払って貰えるらしいから。それに特に使い道もないし」

 強いてあるとすれば食事を豪華にするくらいか?
 実際に大金を手にしてしまうと人間はパッと使ってしまおうという両さんみたいなタイプと俺みたく何に使って良いか分からないタイプに分類されるだろう。
 ある程度貯まったら定額貯金でもしてみるか。そうだ、金があるのなら宝石魔術のために宝石を買い集めるのも面白いかもしれない。宝石魔術に限らず魔術は金がかかりそうだし。だったら定額貯金よりデイトレードの勉強でもするべきか?

「あの、ご主人様。お家に着きましたよ?」

 キャスターの声で俺は我に返る。少し考えすぎだったか。
 買った服と靴を置いて、また出かけた。
 二度手間と思う人もいるかもしれないが、帰りがけに買ってたらキャスターをあの格好でウロウロさせる羽目になってたし。

 公園の辺りまで着た頃に、昼が近くなってだんだん腹が減ってきた。さっき家に帰った時におにぎりでも作ってくるべきだったな、失敗した。
 コンビニは……この辺には無さそうだな。

「あっ、あんなところにおしゃれなお店が!」

 キャスターの指さす方向には&amp;quot;翠屋&amp;quot;と書かれた看板のお店が。

「いらっしゃいませ〜。ただいま大変混み合ってますので、あちらの席でお待ちください」 
 
 しかし店内に入ってみるとお昼時なので混雑している。少し疲れて休みたかったから他へ行く気にもなれないので、俺とキャスターは笑顔で迎えてくれたお姉さんの指示通りに待っていることにした。
 客の回転が思ったよりも早かったので、待ち時間は20分くらいで済んだ。

「ご注文をどうぞ」

 メニューも決まり、着たのは眼鏡をかけているウエイトレスさん。

「カルボナーラで。キャ……えっと……お姉ちゃんは……?」

 危ない。一瞬キャスターって言いそうになった。 

「ケーキセット、ケーキはチーズケーキをお願いします」

「お飲み物は?」

「紅茶を砂糖無しで」

「緑茶で」

 チーズケーキに緑茶って合うのか?

「ご注文は以上でよろしいでしょうか? ……では少々お待ちください」

 眼鏡のお姉さんはそう言ってキッチンに向かった。
 この店はそれ程大きくはないけれどすごい人気だな。

 ケーキは作り置きできるし、来るのは早かった。反対にカルボナーラは茹でるところから始めるから少し時間がかかってから着た。それでも待ち時間はかなり少ない。

「それではごゆっくりどうぞ」

 あ〜やっぱりカルボナーラは美味いわ。牛乳じゃなくてクリームを使っているところや温泉卵っぽいのが上に乗っかっているのもポイントが高い。スパゲッティはカルボナーラこそ至高。

「そういえばそれだけで足りるの?」

 チーズケーキを美味しそうにちまちま食べるキャスターに聞いてみた。

(ご主人様、そもそもサーヴァントは魔力供給が足りていれば食事も睡眠も必要ないですよ。というか魔術関係の話でしたら念話を使ったほうがいいのでは?)

 キャスターが念話で返事をした。
 そうだった。だからアルトリアは暴食王とか言われているんだった。彼女の場合祖国の食事が不味かったという反動もあったのかもしれないが。

「ふ〜ご馳走様」

 やはり子どもの胃袋。全部食べきることはできなかったので残してしまうのはもったいないが。と思ったらキャスターがくれと言ってきたのであげた。

「はむ……蕎麦やうどんとはまた違った味わいですね」

 キャスターが食べ終わる頃に俺はカップの中の紅茶を飲み干した。散策は全然進んでないし、そろそろ行くとしよう。

「お会計お願いします」

 この店はまた来よう。そう思いながらお金をキャスターに支払って貰い、店を出た。





 あれから、一ヵ月後に通うことになるであろう学校、図書館、バス停や駅、その他諸々の公共機関を見て周り、気がつけば空の色は茜色に染まっていた。ついでにキャットフードもペットショップで店員さんのオススメを買い、猫へのお土産も充分だ。

「何なのでしょうねこの町。所々に妖怪の気配やら怪しい気配やらがちらほらと」

「何それ恐い」

「といってもごく一部っぽいですけど。たとえばあの神社とか」

 高い石段の上には歴史のありそうな鳥居が見える。とりあえずちょっとだけ見て、何かあったら逃げよう、そう決めて俺は石段を登った。
 どんな化け物が出てくるかと構えていたが、いたのは境内を掃除している巫女さんと足元にいる子狐が一匹。はっきり言って拍子抜けした。

「あら、こんな時間に……ッ!?」

 巫女さんと子狐はキャスターを見た途端に警戒態勢に入っているように見えるんだけど。

「君! それから離れなさい!」

「は?」

 巫女さんは短刀を構えて俺に離れるように言ってくるが、あの巫女さんもしかしてぬら孫の陰陽師みたいに霊的能力とか持ってたりするのか? だとしたら英霊を悪霊か何かと勘違いしてるのかもしれない。誤解を解かなければ。

「へ〜、三下風情が一丁前に私に楯突こうと? 上等じゃないですか。さぁ、どんな死に様をお望みですか? 焼死、凍死、斬死、お好きなのをお選びくださいまし」

 キャスターはキャスターで何故か噛ませっぽい台詞を吐きながらいつもの着物に着替え、手には両手合わせて6枚のお札を持っている。

「私と久遠が時間を稼ぐから早く逃げて!」

「くー!」

 お姉さん、「ここは俺に任せて先に行けー!」みたいな台詞は死亡フラグですよ。
 この一触即発な空気は非常にヤバイ。キャスターが本気で暴れたら確実に死人が出る。あのお姉さんも少しブルってるし。

「ちょっとちょっと! 誤解ですって!」

〜巫女さん説得中〜

「……彼方君、とっても大変だったのね」

 ごめんなさい大嘘なんです。この世界に元々俺の両親なんていないんです。本当にすみません。

「……つまりその人? は悪霊とか怨霊とかじゃない……の?」

「悪霊? 怨霊? 次そんなふざけたこと言ったら張っ倒しますよ?」

「ひっ!」

 巫女さんこと神咲那美とキャスターを必死の思いで説得し、神咲さんにはキャスターが変なことをしなければ無害な存在であることを説明し、キャスターも一応思い留まってくれた。キャスターのことを話す上で魔術のことも話さなければならなかったのは少し痛かったが。

 身の上についても色々誤魔化しながら喋った。
 俺は一年前くらいに交通事故で両親を亡くして、自分も死にかけてたところをとある人物に救われた。
救った人物っていうのが実は魔法使いで、俺はその人に憧れた。当時一人ぼっちだった俺はその魔法使いに「家族が欲しい」と願ったら、俺に魔術の手ほどきとサーヴァント召喚能力を教えてくれた。という魔術について説明せざるを得ない状況になった場合の身の上を適当にでっち上げた話を昨日考えた分と、朝にキャスターと一緒に考えた分を合わせて作った。

「それで……キャスターさんって何者なの? 明らかに只者じゃなさそうなんだけど」

「くぉん」

「あの〜、今から言うことは他言無用にできますか?」

「もしかして知られるとまずいこと?」

 俺は首を縦に振った。

「キャスターなんですけど。実は…玉藻の前なんです」

「タマモノマエ?………白面金毛九尾玉藻の前!!?」

 神咲さんはまさかのビッグネームに驚愕を隠せないでいる。世界三大妖怪の内の一体だし、日本人なら知ってる人は多いだろうし当然の反応とも言える。

「正確にはちょ〜っと人間に興味を持った天照が自身の一部を人間に転生させて記憶を消した存在なんです。一般的には九尾の狐が人間に化けた姿って言われてますけど」

キャスターは補足を加える。

「そ、それじゃあ神様!?」

「霊格は落ちていますけど大体そうですね」

 神咲さんは感嘆している。

「……もし何かあったら遠慮なく頼ってね。私の方がお姉さんだし、出来るだけ力になるから。ねっ、久遠?」

「くぉん!」

 俺は心の中で神咲さんと久遠に土下座して謝っている。どんどん引き返せない所まで来てしまった。これ以上魔術のことがばれないように気をつけなければ。

「そういえば、神咲さん「那美でいいわよ」那美さんみたいな……何ていうんだろう、霊能力者ってけっこういるんですか?」

「元々私の家がそういう一族なの。だからそんなにちらほら霊能力者がいるってわけでもないかな」

 那美さんに魔術について話しても、初めて聞いたような口ぶりだったし、魔術はあったとしてもマイナーだろうな。

 こうして魔術のことがばれるという失態を仕出かして、俺の転生二日目は幕を閉じた。
 とりあえずあの翠屋のカルボナーラはまた食べに行きたい。

-4-
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