小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第4話 猫耳少女には萌えるけど猫娘には萌えない 




 あれから3日程経過した。キャスターによる魔術講習は着実に進み、解析や強化もある程度は出来るようになった。……あくまでもある程度だが。訓練室でもエネミーを最弱設定にして戦ってみることもたまにある。あれ位なら正直斧剣を振り回してるだけでも倒せる。何かと戦うという臨場感に慣れておくのも大事だと思う。

 シエル(あの猫は調べたら雌だったのでシエルと名づけた)も俺達の介護のお陰でバイタルが安定して きたようで、近いうちに目を覚ますだろう。もしかしたらもう目覚めてるかもしれない。

「キャスター、今日は何やる?」

「解析と強化のおさらいですかね。それとそろそろエネミーの強さを一ランク上げてみましょうか」

 そう言いながらキャスターは扉を開けた。

「……」

 キャスターは一瞬固まり、静かに扉を閉める。
 目をゴシゴシ擦った後にまた扉を開けて……また扉を閉めた。

「何やってんの?」

「ご主人様、この家って私達以外の人間が出入りしたとかは……」

「無いよ。それにキャスターが結界を張ってるんだし誰かが侵入したら気が付くでしょ?」

 もしかして誰かいるのだろうか? その中にいるのはシエルだけの筈。

「何? 誰かいるの?」

 俺はキャスターを押しのけて訓練場への扉に手を掛けて開いた。
 そこにいたのは、裸の

「そぉい!」

「あべしっ!?」

 俺の意識が何者かによって刈り取られる。
 あれ、|十二の試練(ゴッド・ハンド)は?





 俺が目を覚ました時にいたのは、キャスターと……見ず知らずの茶髪の女性で、何故かキャスターの服着てる。そして頭にはネコミミが付いていた。

「あの、ここは一体何処なんでしょうか?」

 女性が俺に問いかけてくる。

「ここは家の地下にある訓練場です。こっちも聞きたいことがあるんですけど、貴女は誰ですか? 何故ここにいるんですか? それとここに猫がいた筈なんですけど、知りません?」

「私はリニスです。ここには気が付いたらいました。そしてその猫は多分私です」

 女性、リニスさんは俺が矢次に質問しても慌てずに順番に答えていった。何というか落ち着いた印象があるというか気品があるというか。

「えっと……シエ、猫がリニスさんというのはどういうことなんですか?」

 とりあえず俺が名前を考えた時間は全て無駄になってしまった。

「は? あの君は魔法使いですよね?」

「違います」

 いやいやいや、宝石翁やらミス・ブルーのようなぶっとんだ人達と俺が同格なわけ無いじゃないですかー。才能はあるけど俺の腕で魔法に到達するかどうかなんて分からないし、別段興味も無いし。

「……リンカーコアの魔力はお世辞にも大きいとは言えないのに私を維持できる魔力があるなんて。もしかしてデバイスですか?」

「アグモン進化ーッ! ってやるやつ?」

「ご主人様、それはデジヴァイスです。で、デバイスって何ですか?」

 キャスターは俺のボケに律儀にツッコむと、リニスさんに質問を返す。
 そしてリニスさんとキャスターの質問と応答のやり取りはしばらく続いた。

 なんとなく分かったのは

・リニスさんの言う魔法使い(魔導師ともいう)と型月世界の魔法使いは別物。魔法についてもそう。

・リニスさんの言う魔法使いにはリンカーコアという魔力源があるらしい。突然変異で現われたり、代々受け継がれたりすることもあるらしいが、魔術回路のようにシビアではない。リニスさん曰く、俺にもリンカーコアはあるようだが、大した事ないそうだ。

・使い魔は死に掛け、もしくは死んだ動物を使うらしい。中にはリニスさんのように人の姿になるのもいるとか。

・デバイスっていうのは、要は魔術師でいう魔術礼装みたいなもの。ただしとても機械的。

・別の世界には魔法が一般化している世界もあって、そういった世界を管理する『時空管理局』という組織があるらしい。理由は分からないが、リニスさんはあまり好ましく思ってないようだ。

 キャスターは魔法使い……紛らわしいからもう魔導師でいいな。魔導師についてリニスさんが知っていることを大体喋らせた。しかしリニスさんについては本人が話題を逸らしてしまってそれ程多くのことは分からなかった。
 魔術についてはあまり詳しいことは話さず、地球の魔法使いみたいなものみたいに差し障りのない風にキャスターが話した。勿論口外しないように暗示をかけて。この暗示は実は那美さんにもかけてある。しかし久遠には利かなかったらしい。

 この地球には魔法のような不思議な力がない管理外世界らしいので、リニスさんは驚いている。こちらも別世界があることに驚いているが。

「それで、これからどうするんです? 行く宛てとかあります」

「……ありません」

 我ながら分かりきったことを聞いたものだ。最初の状態を思い出せば彼女にそんなものあるわけが無いのは明白。

「あの、もし良かったら家に住みます? 部屋は余ってるし。あ、勿論家事手伝いとかもやってもらいますけど」

「本当ですか!? 私、家事は得意なんです!」

 リニスさんが俺に詰め寄る。俺はたじろぎ、目線を逸らした。前世で女性との交流が少なかっただけに女性、特に美女に対して免疫がほとんどない。それはキャスターについても同じことが言える。

「ご主人様から離れてくださいまし、猫女!」

「ひゃあ!?」

 リニスさんを力づくで俺から引っぺがすキャスター。その顔はあからさまに不機嫌そうだ。とはいえ助かった。美女に至近距離で見つめられるのは心臓に悪い。

「まあ、私も行く宛ての無い者を見捨てるほど鬼ではありませんから、大変不本意ですが貴女がこの家に住むのは許しましょう。ただし! ご主人様は勿論のこと、私の命令には基本絶対服従を誓ってもらいます」

「は、はい先輩!」

 リニスさん、先輩て。しかしキャスターも満更でも無さそうな顔をしている。さっきまでの不機嫌そうな表情が嘘みたいだ。やっぱり自分より下の立場の存在が出来るというのは嬉しいのか。別に扱き使ってるつもりは無いのだけれど。

「基本的にご主人様の体調管理は私がやりますので、貴女は主に掃除全般をやるように」

「はい先輩!」

 こうして家に新しい家族が増えた。名前はリニス。仕事は主に家の雑務全般。





「そうだ、リニスさん「リニスでいいですよ」リニスってさ(ご主人様、この際私も真名で呼んでくださいませんか?)

 ああ、話が出来ない。

「リニスってさ、何が出来るの? 戦闘力的な意味で」

「まあ……色々ですね。ショートレンジの戦闘もロングレンジの戦闘もある程度こなせますし」

「オールラウンダーってこと?」

「そんな大層なものでもありませんけどね」

「ご主人様、私も接近戦できますよ」

 キャスターは割り込んでアピールしてきた。今はリニスと話しているからちょっと自重して欲しい。

「そうだ、丁度ここは訓練場だし試しにやってみて」

 俺はモニターを操作。エネミーをランクDに設定して10体ほど出してみる。

「では……行きます!」

 リニスは杖を出して構える。まずは蜂の姿をしたエネミーが襲い掛かってきた。

「はあっ!」

 リニスは杖を蜂の姿をしたエネミーに叩きつけて一撃で葬り去る。それを開始の合図に他のエネミーも動き出した。しかしその攻撃はリニスの素早い動きによって回避される。

「むう、私ほどではありませんが、なかなかやりますね」

 タマモの場合なら近づく前に持ち前の火力で直ぐに潰されるだろう。

「喰らいなさい。セイバースラッシュ!」

 考えているうちにリニスさんは杖から誘導型の魔力刃を放ってエネミーを撃破する。すでにエネミーの数は半分をきっていた。それに対してリニスさんは息を切らしていないし、傷も負っていない。というか知らないうちにリニスさんが空中に浮いている。

「あれ、もしかして簡単過ぎた?」

 リニスが最後の敵を射撃で倒し、エネミーは全滅した。

「ふう、魔法を使うのは久しぶりなのでやっぱり腕が鈍ってましたか。早くカンを取り戻さないと」

「お疲れリニス。すごいね、10体倒すのに5分くらいしかかからなかったんじゃない?」

「そんなことはありませんよ」

 見ていた限り、実力については申し分ない。流石に英霊クラスの力は持ってないだろうけど、それでも俺よりは明らかに格上だと思う。それに魔力の消費量から分かったことだが、俺を気遣っていたのか少し力をセーブしていたようにも感じられた。

「そういえばリニス飛んでたよね」

「え? まあ大した事ではありませんけど、魔導師として飛行魔法は初歩なので」

 空を飛べる魔術師なんてそんなにいないんだけど。魔導師ってすげーなー。

「タマモって飛べるの?」

 俺は気になってタマモに聞いてみた。

「その気になれば飛べますね。燃費が良くないので滅多にやりませんけど」

「地球の魔導師って色々違うんですね」

 その後は俺の訓練が始まった。リニスさんの飛行魔法は羨ましかったが、魔術で空を飛ぶのは今の俺ではほぼ不可能。大人しく基礎の反復と素振りをする。その後は弱いエネミーを出しての戦闘というのが流れだ。

「それにしても」

「ふっ!……ん?」

 リニスの呟きに俺は斧剣を振るった後に反応する。
 俺の中にヘラクレスの経験でも詰め込まれているのだろうか? なんとなくだがどうやって剣を振るえば良いのかが少しずつだが分かってきた。ヘラクレスの剣技といえばHFルートで士郎がやった|是、射殺す百頭(ナインライブスブレイド ワークス)が有名だけど、あの九頭龍閃みたいなのってどうやってやればいいんだ?

「その剣、変わってますよね」

「……確かに、こんな形状の剣はそうそう無いだろうしね」

 ヘラクレスは生前マルミアドワーズという銘剣を所持していたといわれている。格はエクスカリバーよりも高く、それを手にしたアーサー王は一度かの聖剣を手放すほどのものだったとか。セイバーェ……。

「ご主人様ー! レモンの蜂蜜漬け持って来ましたー!」

 そろそろ休憩にしてタマモの差し入れを頂きましょう。

-5-
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魔法少女リリカルなのはtype (タイプ) 2012 AUTUMN 2012年 10月号 [雑誌]
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