小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第5話 転校生は大体1週間くらいでクラスにとけ込めるかどうかが決まると思う





とうとうこの日が来てしまった。今日は私立聖祥大附属小学校に転校する日だ。入学式にあわせてるから丁度良いね。
 正直言って面倒くさいし、小学生をもう一回やり直すというのは精神年齢がもうすぐ成人の俺にとっては複雑なのである。
 それに制服が何か女の子の服みたいで恥ずかしいったらない。

 タマモは現在霊体化してついてきている。リニスは霊体化なんて出来ないし、同伴するわけにもいかないから家で留守番してもらって、何かあったら連絡する取り決まりになっている。
 彼女は彼女でネットサーフィンに嵌って、時間潰しには事欠かない。

「どうもはじめまして、都内の学校から転校してきた八代彼方と言います。趣味は運動と読書です。海鳴市には引っ越してきたばかりでいろいろ不安なこともありますけどこれからみんなと仲良くしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします」
 転校の経験なんてなかったからとりあえず無難に自己紹介しました。
 ちょっと年不相応な感じがしたかもしれないけどいいか。

 俺は都内の学校から転校って設定らしい。まあ生前行ってた大学は都内にあったし、あながち嘘でもないかな。年齢が10歳ほどずれているけどね。
 ちなみに現在3年生。何故3年生なのか? 
 何か理由でもあるのだろうか?

 友達はたくさんじゃなくてもいいけど信頼できる人と仲良くなりたいね。

「それじゃあ八代君の席は……バニングスさんの隣が空いてるわね。バニングスさんの隣に座ってもらえるかしら?」

 罵認具巣? 変わった苗字だね。留学生かな?
 
 金髪の女の子が手を振っているから席はあそこだろう。そう思って俺はそこまで歩いた。周りからジロジロ見られてちょっとやり辛い。

「アリサ・バニングスよ。よろしく」

 ヒアリングはあんまり自信の無かった俺には彼女が日本語を喋れたことは幸いだった。
 英語で突然自己紹介された日にはテンパる自信がある。

「さっきも言ったけど八代彼方。これからよろしく」

 俺は罵人具巣さんに軽く挨拶をして席に着いた。
 何か違う。椅子の作りが木じゃないし、俺が通ってた小学校よりも全体的に清潔な感じがする。
 ここってもしかして結構な名門校じゃないだろうか?

「それじゃあ残りの時間は転校生の質問タイムにしちゃいましょう!」

 先生のこのお言葉で俺の質問タイムは始まった。
 ギャルゲーとかでもホームルームとか一時限目を潰して質問タイムにするイベントがあるけど、実際やったら授業とか遅れてやっかいなことになりそうだよな。

「前の学校ってどんな所だった?」
「何か特技とかある?」
「結構カッコいいね。彼女とかいる?」
(私です)
「ゲームやる?」
「どんな本が好き?」
「ギロチンのまさゆきについて一言」
「おい、デュエルしろよ」

 四方八方から質問の嵐が俺を襲う。何が何だか分からない。
 タマモが何か喋ってた様な気がしたが、他の声に紛れて聞こえなかった。
 俺は聖徳太子じゃないんだ。いっぺんに聞かれても分からないんだ。

 隣をチラッと見ると、バニングスさんはこっちを見てちょっとイライラしてる。

「ハイハーイ 転校初日の子をそんなにみんなでワヤクチャにしないの!」

 彼女の言葉は、あっという間に場を制圧してしまった。
 この子はクラス委員か何かなのかな?それにしてもすごいカリスマ性だ。
 将来大企業の社長とかになるかもしんないね。

「それに質問は順番にね!」

「あ、ありがとう。助かったよ」

「別にいいわよ。ホラ、ちゃんと質問に答えなさい」

「ああ。うん」

 初対面の子にここまでしてくれるとか。この子いい子だな。
 お兄さん嬉しいよ(同い年です)。

 さ〜て、最初の質問は?

「おい、デュエルしろよ」

 お前からかよ。





 本日の授業がキンクリして終了。
 ホームルームが終わった後の休み時間や昼休みでも質問は殺到して少し疲れた俺は机に突っ伏す。こんなに人と話すのって前世も含めて生まれて初めてかもしれない。
 授業については問題ない。小学生の授業で大学生だった俺にあったら逆にヤバイし。
 しかし小学生にしては難しめの問題が多かった。小3なんて掛け算九九とかそういうのしかやった記憶が無いのに二桁の掛け算とかやってるし。後英語の授業もあるし。

「どう、馴染めそう?」

 隣のバニングスがだれている俺に話しかけてきたので顔を上げる。さっき知ったことだが、この子の家は大企業を経営している。つまりは結構なお嬢様だというから驚きだ。
 
「ん〜、分からん。まだ初日だし」

「「アリサちゃ〜ん、一緒に帰ろう!」」

 栗色の髪をツインテールにしている少女と紫色の髪の少女がバニングスを呼ぶ。
 というか黒髪率低くねえかこのクラス? 
 ここ日本だよね? アメリカとかイギリスとかじゃないよね?
 よく考えたらタマモも日本の英霊なのに髪の毛ピンク色だったな。

「そうだ。八代君も一緒に帰ろうよ」

 栗色の髪の少女が俺を誘ってくるけど、どうすっかなー。

「それじゃあ「残念でござるが、八代殿は既に自分と約束しているので残念で御座るが諦めてくだされ」!?」

 俺の応答を遮って突然現われた謎の少年。顔は帽子とスカーフで隠れていてよく見えない。そもそもコイツと約束なんてした覚えは無し、というかこんなに目立つ格好をしているのに俺自身がさっきまで気が付かなかったのに驚きだ。

「そうなんだ……それじゃあまた明日ね」

「「バイバイ」」

 三人とも謎の人物の大嘘を信じて先に帰ってしまった。
 残ったのは見ず知らずの似非忍者と俺。

「……で? お前は誰?」

「自己紹介が遅れてすまないで御座る。自分は十文字 点蔵で御座る」

「どうも、それで? 俺に用があるんじゃないの?」

 そうでなければ大嘘ついて三人を追い返したりしないだろう。転入初日の俺に何か恨みがあるとは思えないがどうだろう。

「別に無いで御座るな。……強いて理由を挙げるとするなら転入早々小学校の三大美少女の隣になったり、話しかけられたのが嫉ましくて妨害した位で御座るか」

 ……しょうも無い。何かコイツキャラはものすごく濃いわりに器がものすごく小さそうだ。
 あと悪びれも無く妨害とか言ってのける辺り、度胸はありそうだ。
 
「話したけりゃ話せば良いだろうに。それとも惚れてる女がいて上手く話せないとかか?」

 別にこんなことをされた程度で怒る俺ではない。まあ度を超えた嫌がらせに繋がるのなら話は別だが。

「ドッキーン!? な、何でそrゲフンゲフン! いいいいい一体何のことで御座ろう?」

(分かり易過ぎ! どんだけ本心隠すの下手なんですかこの子!?)

 タマモに同意。
 ドッキーンとか口から出る奴初めて見た。

「……あ、アリサ」

「ええええええ!? ど、何処で御座るか!?」

 十文字はビクつきながら物陰に隠れて辺りを見渡す。
 適当にアリサの名前を出しただけなのに。

「は〜なるほどなるほど。アリサが好きなんだ」

「ううっ、後生で御座る。どうか……どうかお慈悲を!」

 そういえば、俺は何故放課後の教室で初対面の男とこんな小芝居をしているのだろうか?
 教室にはもう俺と十文字以外誰もいない。
 ちょっと虚しくなってきたぞ。

「分かったから。言わないから」





「てなことがあったわけなのですよ」

 俺は下校中に八束神社に寄って、那美さんと久遠に今日あったことを大雑把にだが話した。

「あはは……」

 流石の那美さんもこれには苦笑い。久遠は狐だから表情は分からない。

 その後も十文字は何度も頭を下げてきてしつこかったので下校中に撒いてきた。
 別に言うつもりは無いし、小学生の恋愛に首を突っ込むほどミーハーでもない。勝手にやってくれって感じである。

 十文字に遮られなけりゃあの三人組と帰るのも良かったかな。友達を作るという意味で。

<……何かデレデレしてません?>

<何で小学生相手にデレデレしなくちゃいけないんだよ?>

 俺は子どもは好きだけど別にロリコンじゃありません。
 俺は年上のお姉さんで人妻は不可。間違っても小学生に惚れるなんてありえない。

<ふう、ご主人様が犯罪に走らないようで何よりです>

<帰ったら小一時間ほどその議題について話し合おうか>

 ふう、平和だな。今のところ事件らしい事件も起きていないし、謎の集団が襲いかかってくるわけでもない。
 あれから海鳴を見て回ったけど、タマモが異常を感じたのは猫をたくさん飼ってる月村と書かれてた大豪邸と、俺の膝に乗っかってる久遠くらいだ。あの豪邸から邪悪な感じはしなかったし、久遠も大人しいし、仲良くなったし、放って置いても平気だと思う。
 何かあった時のためにとこの一ヶ月間必死で鍛えてボチボチ強くなった気がするけど、あんなに切羽詰った特訓しなくて良かったかもしれないな。運動すること自体は別に悪い事じゃないけれど。

 しかし何故だろう。胸騒ぎがする。
 とても邪悪なモノがこの町にあるような、そんな気が。

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