小説『wanari流 小説の書き方講座『解体信条』』
作者:wanari()

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2.基本的な文章作法 〜句読点と改行


 どこに「、」や「。」を打ったらいいのか。どのタイミングで改行すればいいのか。
 パソコンで打つのはたったひとつのキーなのに、これが文全体にとても大きな影響を与えるということは、皆さんも感じていることだと思います。僕も同感です。実感しています。
 今回はこの『句読点と改行』についてお話ししましょう。
「読点(、)が多くて読みにくい」「改行が少なくて見づらい」――こんなことを指摘された経験はありませんか?
 僕自身がいくつか目にした小説作法では、この「、」「。」そして改行の使いどころについて、基本的で重要な文章技術のひとつとして解説されていました。
 適度に句読点を。適度に改行を。不自然なところは音読して発見せよ――確かこのような結論だったと思います。
 技術的なポイントについては、他に多くの先達、専門家の方がいらっしゃるのでそちらにお任せ。
 ここでは句読点や改行について僕なりに普段感じていること、意識していることに触れたいと思います。
 句読点にしろ改行にしろ、僕はふたつの柱から成り立っていると考えています。
 すなわち、

・作者のリズム
・読者のリズム

 です。まあ、意味は字面の通りなのですが……。
『作者のリズム』とはまさに書き手が「ここにこう打ちたい」「改行をいれたい」と直感、もしくは理論立てて取り入れていくことです。
 一方の『読者のリズム』とは、読み手が主観的に感じる読みにくさ、読みやすさです。読んで快く感じるか、不快に感じるかと言い換えてもよいと思います。
 端的な言い方をしましょう。
 作者のリズムとは『演出』のあらわれです。
 読者のリズムとは『期待』のあらわれです。
 僕はベストな句読点と改行のタイミングとは、この『演出』がうまいこと『期待』を満たす形になった瞬間、つまり作者のリズムと読者のリズムがぴったり合致したときのことをいうのだと思います。
A「こんな頻繁な改行はいらない、もっとずんと腹に響くような文章を読みたい。表現の幅を広げてくれよ」
B「さくっと軽く読めるのがイチバンだ。改行バンザイ! でもあんま単語ぶつ切りになるのは勘弁な」
 僕だってAさんBさんからいっぺんにこんなこと言われたら「えー……」となりますが、どちらも読者としての『期待』のあらわれには変わりありません。
 AさんBさんのどちらの期待を満たすか、あるいはその中間を取るのか、それは作者の『演出』次第であり、つまるところ作品の方向性を決めることに繋がるのです。
 句読点がなんだ、改行がなんだと侮るなかれ。小さな一手の積み重ねが作品全体に与える影響は大きいんだというのが、僕の考えです。
 では、どうすればこのベストなタイミングを見いだせるのか。
 ここで思い出しましょう。
 あなたが書いている作品、第一の読者は誰でしょうか。
 まず真っ先にあなたの文章を目にし、情報を取り込むのは誰でしょうか。
 そう。あなた自身です。作者本人です。
 作者もまた読者――この見方で考えるなら、まず自分自身が読んで快く思えるリズムを見つけることが句読点と改行を使いこなす第一歩なんじゃないかなと思います。
 要するに、自分が一番読みやすいところに句読点を打て、改行をしろということですね。まずは自分自身の『期待』に応えられる『演出』を身に付ける、と。そこから少しずつ『応えられる期待の数』を増やしていく。これが大きなポイントだと僕は思います。





(まとめ)
 ・句読点も改行も適当じゃダメよ。
 ・作者も読者のひとりです!

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