小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e9.常連の場所に誘われるって、ぶっちゃけどうだ?





今日も退屈のみの授業は寝て終了・・・に、ならずなのはに殴り起こされ。(誤字にあらず)

やっとの思いで放課後。今日は夢日記の記述もない。なら帰るのみ。

ホームルームが終わる。

バッグにものを詰める。所要時間10秒。
立ち上がる。所要時間0.5秒未満。
右向け右。所要時間0.5秒未満。

走り出す。

後ろから腕を掴まれる。

走るベクトルはそのまま。引く力でバランスを崩す。

机の角に後頭部直撃。←今ここ


:ちょっと待ちなさい


俺の腕を掴んだのはアリサ。

俺が後頭部強打したことに表情を1つも変えないとか、図太すぎる。

というか最近、原作キャラに絡まれるのが多い気がするのは俺だけか?


:殺す気か

:そんなダッシュで教室出ようとしたアンタが悪いのよ

:早く帰ることに罪はない

:早く帰ることを決断したアンタが悪い


その発想はなかった。
だが解せぬ。


:で、何の用だ

:アンタ、甘いもの好きでしょ?帰りに寄り道して喫茶店に寄るんだけど、アンタも来る?

:喫茶店?


凄く予想ができるんだが。


:喫茶“翠屋”。あそこのケーキおいしいのよ?


ドンピシャだった。

というかこいつら、翠屋以外のケーキ屋に行くのか?

しかも翠屋っつったら、俺常連だし・・・。


:常連である店に招待されてもさほど嬉しくないんだが

:ちょっと、初耳よそれ!

:キリヲ君常連なの!?


言ってないからな。あと、いきなり割り込むななのはは。


:でも、今まで翠屋で会ったことなんてないよ!?

:偶々じゃない?


嘘です、意図的です。

正確には原作キャラ自体避けているんだが。


:じゃあ一緒に行こう!すずかちゃんとはやてちゃんを誘っておくね

:まあいいけど


こういうのがきっかけでリインフォースと遭遇するのが怖い。

鬱END臭のする別れ方だったからな・・・。まあ、ドクロのことがバレなければ、ごまかしは効くはずだ。





そして翠屋にやってきた。見慣れた場所だ。

メンバーは原作女子5人勢揃い。神崎は管理局の仕事でいないらしい。ざまぁ。

店の前で長々と棒立ちすることもなく、なのはから入店、俺は最後尾。
お邪魔しまーす。

『いらっしゃいませ・・・あ、なのは!みんなも・・・って、キリヲ君!?いらっしゃ〜い!』

出てきたのは美由希さんだった。

俺の名を言ったことに、なのは達は微妙な顔をして何か言っている。美由希も何か返しているが、美由希サイドだけだと文字通りに話が見えない。

あ、美由希さんが紙寄越してきた


:注文はいつも通り?

:それで頼みます


さて、席に座るか。



いつも頼んでいるのはシュークリームとコーヒー。どちらもとてもうまい。さらにシュークリームについてはよくお持ち帰りもする。


:ホントに意外ね。アンタがここの常連だったなんて

:ホントだよー。店で会ったこと一度もないし。お父さんもお母さんも・・・というか、家族全員と仲良くなってるし

:悪いか

:そういう訳じゃないと思うけど・・・でも私も驚いたな。私にも今まで教えてくれなかったから

:教える教えないは人それぞれだろ
士郎さん達と仲良くなったのは、俺が筆談を使うようになってからだ


今では店に来る度に話し相手になってくれている。今回はなのは達がいる分、十分足りてるだろうと見てこっちに来ないが。


:ところで、キリヲ君は学校終わったら普段何してるん?いつもここに来てるの?

:いや、翠屋に来るのは週に1、2回ぐらいだ。それ以外の日はすぐに家に帰ってラノベを読んだりオカルトの検証をしたり。あとは図書館に寄ったり病院に寄ったり。これらのいずれかだな

:ツッコんでおきたいことがいくらか出てきたから、順番にまず1つめね。オカルト検証ってどういうことよ?

:まんまの意味だ。オカルトサイトを運営しててな。あといわく付きの物もだいぶ持っている。呪いの人形、死を呼ぶ水晶玉、呪われた人骨、あとは

:いい!それ以上はいいから!!


例を上げている途中でなのはの書き込みに割り込まれた。

まだまだあるのに・・・死霊の首飾りとか、不吉を呼ぶ指輪、あとは呪いの御札とか。さがせばもう数十は出てくるぞ。


:必死だねなのは・・・そう書いてる私もちょっと怖いけど・・・

:ちょっとで済むんだ・・・キリヲ君、怪談にも詳しいんだよ。狂気の電話の話を聞いた日には携帯を見るのも怖かった・・・

:すずかちゃん、ええから。無理に言わんくてもええからな

:一応書いとくが、不幸に導くものしかない訳ではないからな。例えば藁人形は人を呪い殺す道具だって言われるけど、本来は願いを叶える道具だって説もあるからな。

:意外だけど使いたくない知識をありがと
で、もう1つ、話に出てきた病院って?

:アリサには言ったよな?俺がコートを着てるのは怪我を隠すためだって

:ええ。右手の手袋もそうなんでしょ?

:ああ。で、この傷は何年も前のものだけど、まだ出血することがあるから、たまに診てもらってるってこと。


才能の関係上、背中の古傷の出血が止まることはないとわかってはいるが、おかげで何枚服が犠牲になっていることか・・・。

エニグマ原作のタケマルとは違って手足にもでかい古傷があるからな・・・動きは鈍いわ、出血はするわで堪ったもんじゃねぇ・・・。


:大丈夫なの?痛かったりしない?

:というより、なんでそんな怪我を負ったのよ?

:心配する気持ちはありがとよフェイト
そんでアリサの質問だが、小さい頃に暴力団だった、血縁上の親父からの虐待のせいさ。だがあんなイカレゲスを俺は親父だとは言わん

:虐待!?どうしてそんな酷いこと・・・!

:その腐れ野郎はもうとっくに事故死してる。今はおふくろと2人暮らしだ

:それで・・・怪我ってどんな感じなの?

:いや、見ない方がいい
お前らが見て、何かできるようなものじゃないから

:確かに、キリヲ君の痛みを全部わかることはきっとできない
でも、それでも。キリヲ君が、1人で背負う必要もないんじゃないかな


なのはのその言葉に、少しだけ迷った。

理不尽は俺が破壊する。そしてその理不尽は俺が背負い、犠牲になる。それが、エニグマになった時から持ち続ける信念だ。

だけど、誰かに支えてほしいと思わなかった訳ではない。俺も、心のどこかで助けを求めてきたかもしれない。

だけど―――


:悪い、見せたくない
同情されるのは、俺にとって一番嫌いなんだ


俺はその受け入れを拒否する。

同情ではないとはわかってる。特にフェイト辺りは、自分の経験から一番わかってくれるはず。

カッコ悪いところを彼女達に見せたくない。
俺の理不尽を、不幸を背負わせてしまうのが怖い。

・・・そういうのがあったのかもしれない。


:大丈夫だよ。そんな目で見たりはしないから

:ごめんねキリヲ君

:なのは?

:無理に見せてもらうのは良くないよ
つらい話だって、本人が話したい時に話してもらった方が、気持ち的にはスッキリするし


話したい時に、ね・・・

いつか、来るのかな。この古傷のつらさも、才能のことも、怪物になってしまった話も、全部打ち明けられる日が。


:そうだね
ごめんねキリヲ

:気にしなくていい
この古傷はもう俺の一部みたいなものだからな

:はいはい
気分が落ちるこの話題もうやめましょ
長々と話しても飽きてくるし


アリサの言葉でこの場の雰囲気が少し払拭された。

アリサもなんだかんだで、俺のことを思ってくれている。書いたら殴られそうだけど。

だけど少し嬉しい。


:そやな、暗い話よりも明るい話や!
キリヲ君の話をたくさん聞かせてもらったから、次はうちらの話をするな


それから、なのは達の話・・・互いの出会いや仲良くなったきっかけを(当然、魔法の話は伏せていた)話してもらった。

一通り話したら結構な時間になったので、そこで解散とした。

特に忘れ物をした訳ではないけど・・・なんか忘れたような気がする・・・。





家に帰ると、おふくろが出迎えてくれた。
まだ仕事には行ってなかったらしい。


:お帰りキリヲ。今日は翠屋に行ってきたの?

:ああ。ただいま


ちなみにおふくろの仕事とはキャバクラだ。売り上げの首位を独占しているらしい。

・・・最初に知った時、アンタはスミオのおふくろかと内心でツッコんだのは内緒だ。


:それにしては意外と遅かったわね。いつもは食べて買ってで終わりじゃない?

:友達・・・と言っていいのかな。その人達と会話をしてた

:へぇ〜
その人達って、男の子?女の子?

:全員女

:あらあら
キリヲも隅に置けないわね


何先走ってんだ。

・・・ん?翠屋では食って買って終わり?


:今思い出した

:どうしたの?


なんか物足りないと思ってたが、どうやら会話を楽しみすぎて忘れてたらしい


:お持ち帰りのシュークリーム買うの忘れてた・・・

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