小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e10.バレるの早っ!?





今日の夢日記。



4がつ23にち

ひったくりがうしろからはしってきました。

ひったくりはないふをもってぼくをきりました。

すごくいたかったです。



予言はもう終わった。

登校中、バッグを奪ったひったくりが後ろから走ってきた。

予知で気づいていたため、ナイフで襲いかかってきたのを避け、適当に蹴って投げ飛ばす。

そして奴がひったくった物を奪い取り、被害者に渡した。聖祥中の女子生徒だったが、その辺は別にどうでもよかった。

そういや今日、おふくろは昼から色々あっていないんだっけ・・・晩飯も自分でなんとかしなくちゃなんないし、何作っかな・・・。





今日はよく動く日だった。

朝のひったくりの一件に加え、午前から体育があった。

先生方は古傷のことは知っているが、だからと言って体育を全面的に休むことはできない。無理しない程度に抑えながらやった。

昼休みに弁当を食べ終えると今日の夢日記のもう1つの記述、男子生徒のカツアゲを阻止した。

そして、昼休みも終えた午後の授業の時だった。





―side・なのは―


午後のキリヲ君は少し様子が変だった。

授業が始まったのに授業道具を取り出そうとせず、席に座ったままピクリとも動こうとしなかった。


:キリヲ君、もう授業始まってるよ


そう書いた紙を、先生にバレないようにこっそりキリヲ君の机の上に置く。授業中にキリヲ君と筆談するのは、たまに・・・結構やってる。少し自重しないと・・・。

って・・・あれ?

キリヲ君が全然反応しない・・・寝てるのかな?普段なら机に突っ伏すからすぐ寝てるとわかるのに・・・・・・コートのフードを被っているから表情が見えない。

こういう時、辞書で叩き起こすけど、その前に必ず一度揺する。揺すって起きる可能性があるし(起きたことないけど)、確認もなしに叩くのは危ないし、失礼だから。寝てるキリヲ君が悪いんだけど。

肩を軽く揺すってみる。
キリヲ君の身体が左右に揺れる。けどそれだけ。寝てるみたい・・・退屈だからって、ちゃんと授業は受けないとだめだよ・・・・・・そう思って、いつものようにバッグから国語辞典を取り出そうとした時・・・


―――ガタガタ、ガタンッ!


机や椅子の鉄パイプ同士がぶつかったり、椅子の脚と床がこすれあう音がして、それが一瞬大きな音になった。

いきなりの音に慌てて音源を見る。音源は自分のすぐ横・・・キリヲ君がいた場所。

そこでは机が少しずれ、椅子・・・そして、キリヲ君が横になって倒れていた。

「キ、キリヲ君!?」

今までにないことに、私は驚いて席から離れて、キリヲ君のそばに寄った。

フードを取ってみるとキリヲ君は苦しそうに、細かい息をしていた。
そしてよく見てみると、キリヲ君の身体のどこかから、酷い出血をしているのが見えた。

「ちょ、ちょっとキリヲ!?なんでこんな出血してるのよ!?」

続いて事態に気づいたアリサちゃんも近寄ってくる。

虐待の傷から、今も血が出てくるって話は前に聞いたけど、この出血は想像できていなかった・・・。

その後、キリヲ君は先生と保険委員の子によって保健室に運ばれた。

授業が終わってからキリヲ君が運ばれるのを見たすずかちゃんがやってきて、その時に聞いたけど、2年前にも同じようなことがあったみたい。
キリヲ君、大丈夫かな・・・放課後見舞いに行こう。





放課後、私とフェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん、はやてちゃんは保健室に立ち寄った。
唯一はやてちゃんはあまり事情を知らなかったみたいけど、慌てたようすで道具をまとめるすずかちゃんの様子が気になってついてきたらしい。今は事情を説明している。

一応すずかちゃんに聞いてみたけど、キリヲ君の傷がどのようなものなのかはすずかちゃんにもわからないらしい。

保健室の扉を開け、私から入ってみる。
保健室には先生と、そしてベッドの上にキリヲ君が、いた。

キリヲ君を見た瞬間、言葉が出なかった。
キリヲ君は頭以外の全身に隈無く包帯が巻かれていた。冗談とかギャグなんてふざけたことじゃない。本当に服を着たミイラのような状態だった。
そんな状態のキリヲ君が、静かに寝息を立てている。

「あの、先生・・・キリヲ君の様子は・・・」

私達のほとんどが息を呑んだ中、すずかちゃんが先生に尋ねた。

「色々動いて、背中の古傷から出血したみたいね。他も少し出血してたみたいだから、全身に巻いちゃったけど。安静にするのが一番ね」

先生はそう答えた。

その時、キリヲ君がムクリと起き上がった。目が覚めたみたい。

「あ、キリヲ君、目が覚めたの?」

すずかちゃんがキリヲ君のそばに寄る。

キリヲ君は私達を見た後、首を動かして辺りを見回した。
一通り見回した後、キリヲ君はベッドから立ち上がろうと動き出した。


:だめだよ、動いちゃ
安静にしてて

:気にしなくていい


すずかちゃんの説得を無視して、キリヲ君は立とうとする。


:安静にしてなさい
アンタ自分の状態がわからないの?

:自分のことは自分でわかってる
だからどけ


私達が全員でキリヲ君を抑えようとするけど、キリヲ君は無理して動こうとする。説得の文は、敢えて見ないほど。

だけど次の瞬間、キリヲ君はビクリと反射したかのように表情を歪め、背中に手を回した。一瞬だったけど、見逃すことはなかった。

そこに先生が紙をキリヲ君に見せた。


:ほら、無理しないの

:よくあることだ
だからもう関わるな

:意識が朦朧とした中運ばれてきたというのに・・・


「月村さん」

「え、はい?」

キリヲ君の回答に肩をすくめた先生は、次に私達、というよりすずかちゃんに声をかけた。

「聖祥小学校の保健乗務員から聞いたんですけど、以前同様のことがあった時、月村さんが送っていったと聞いたんですけど」

「はい、一度・・・」

「よかったら、また頼まれてくれないかしら?忌束君のご家族は仕事で夜遅くまで帰ってこれないそうで・・・」

「はい、わかりました」

「あ、それならあたしも手伝っていいですか?」

「そう?ならお願いね」

「なら、私も・・・」

アリサちゃんに続こうと私も手を上げようとした。
けれどその手は途中で降りることになった。

「なのは達は、帰って“用事”があるんでしょ」

「用事?・・・あっ」

アリサちゃんに小声で言われて、少し間を置いて思い出す。今日、夕方から管理局としての任務があるんだ・・・。
小声なのに用事なんていう遠回しな言い方をしたのは、キリヲ君の読唇術があるからだということも理解した。

「大丈夫よ。すずかは一度送ったことがあるみたいだし」

「うん・・・ごめんね」

一言謝って、私とフェイトちゃん、はやてちゃんは先に出ることにした。

キリヲ君、こういう痛い思いは何も言わずに抱え込んじゃうんだね・・・なら、お隣としてできるだけ気づいてあげないと・・・。


―side・out―





―side・アリサ―


リムジンに乗った後眠りこけたキリヲを起こさないように、両肩をすずかと担いで家に運ぶ。

そういえば、ご家族・・・というか、お父さんが暴力団でもう亡くなってるって話を聞いたからお母さんか。仕事でいないのよね。それってつまり・・・。


ガチャガチャ・・・


・・・やっぱり。
鍵・・・どうすんのよ・・・。
・・・というかすずか、アンタコイツのコートのポケット探って何してんの?まさかそこに鍵なんてことは・・・

「あ、あったあった」

・・・あるのね。

適当に探ったのか、知ってるのかはわからないけど、知っていたんだったらある意味怖い気がする。

とりあえずその鍵で家に入る。コイツの部屋は2階らしい。なんとか上に上がっていく。
で、部屋に入ったんだけど・・・

そこは、おどろおどろしい空間だった。
部屋全体が薄暗く、人骨模型が置かれたり棚の1つの段には所狭しと人形とかわら人形が並べられている。他の段には説明するのも億劫になりそうな不気味な物体が多数。
他にも怪談や心霊現象、都市伝説とかがかかれた本とかもあった。

「アリサちゃん、ベッドはこっちだよ」

すずか、アンタはこの部屋に抵抗とか感じないの?

「気にするからいけないんだよ。気にしない内に、早く」

正論かもしれないけど、気にするなと言う方が無理があるわ。

とりあえず、キリヲをベッドに寝かせて(ベッドもオカルトに改造されていた)、疲れた私達もその場で休憩。

・・・そういえば、コイツのお母さんは夜遅くまで帰ってこれないのよね。
だったら・・・仕方ないわね。無理させて傷を開かせる訳にはいかないし、私達でキリヲの夕飯を作る他はないみたいね。後で家に連絡しなきゃ。

・・・でもその前に、この部屋、どこまでオカルトに染まってるのよ。見てるだけでこっちが呪われそう・・・

・・・・・・ん?

あのもの入れ、扉が開いてる・・・なんか入ってるのかしら?
せっかく来たんだし、もう来ないかもしれないから(というか、もうこんな部屋に来たくないし)、どんなものがあるのかぐらい見ても・・・いいわよね?

近づいて、もの入れの扉を開けてみる。

「・・・木箱?」

そこには、木箱が入っていた。
木箱を取り出してみる。重さ的に、中になんか入っていそうな感じ。

「ちょ、アリサちゃん?だめだよ。この部屋に置いてある呪いの品って、検証中のものだってあるんだからね」

「ちょっ、怖いこと言わないでよ!わかったわよ、今元に戻・・・あっ」

いきなりのすずかの声に驚きつつ戻そうとした時、手を滑らせて、その箱を落としてしまった。
その拍子に木箱の蓋が外れ、中身が飛び出した。

出てきたのは、ドクロだった。

下顎の骨が入れ替わって、頭の上部がバッカリ開いた気味の悪いドクロ。その辺にあったドクロの小物とかアクセサリーとかではなくって、私達の頭と同じぐらいの、本物のようにリアルなドクロが転がってきた。

ドクロの、目の部分が、私達の視線とかち合った・・・気がする。

私はすずかを見た。あ、すずかもこっち見てた。
もう一度ドクロを見る。
もう一度すずかと見つめ合う。言いたいことはわかるよね?じゃ、言うわよ?

せーの、





「「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!??」」

思いっきり叫んだけど、当然と言うべきかキリヲは寝たままだった。

ある意味、キリヲが耳が聞こえなくって助かった。


―side・out―

-12-
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