小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

e11.人が喰われた話





4がつ24にち

ぼくのしっているかみのながいおんながくろいふくろにいれられてすてられました。

はんにんのかみのながいおとこはたべながらぼくのものをさがしています。

かくさなきゃ!



俺が倒れた翌日、起きたら夢日記にこんな予知が記されていた。
・・・訳がわからん。

ひらがなで読みづらい上に明確な人物名が書かれることが少ない夢日記とは言え、ここまでよくわからない内容だとさっぱりだ。
わかることと言えば・・・

俺の知っている女性の身に何かが起きること。

犯人はロン毛の男で、俺が持っている何かを狙っていること。

そんぐらい。

俺の知っている髪の長い女性っつったって、範囲が大きすぎる。聖祥で髪の長い女子生徒なんて結構な人数がそうなので特定は難しい。
俺のおふくろもそうだが、事前にこの予知のことはもう伝えてある。まあ、おふくろが被害者で、これで阻止に成功したのであればそれが一番なんだがな・・・。
それに、俺の持つ何かって、なんだ?

うーん・・・何か忘れてる気がする・・・。

・・・おっと、早く登校しないと。





そうして現在昼休み。今日はアリサが朝からなぜかぐったりと、かなり眠そうにしていた。


:どうした?

:アンタのせいよ


とんだ言いがかりだな!?

読む話によると、昨日の夜寝る時に俺の部屋のオカルトグッズが頭に浮かんで眠れなかったらしい。


:それでアリサちゃんとすずかちゃん、すごく眠そうにしていたんだね

:そういやすずかも眠そうだったな。そしてなのは、またいきなり割り込みやがったな

:気にしたら負けなの


お前からその台詞が出てくるとは思わなかった。


:どうしてあんなもの集めてんのよ

:俺が集めてるんじゃない。おふくろが俺の口や耳をなんとかしようと集め出したんだ

:どういう発想なの!?


そういう発想、としか言いようがない。
おふくろ、地味に考え方がずれている。普通に考えても治療法とかだろ。俺の場合は無理だけど。


:で、アリサちゃん、どんなものがあったの?

:色々あったけど、最後に見たドクロがヤバかったわ・・・


・・・ドクロ?
いやいや、ないない。うん、大丈夫だ。あれは、ちゃんと木箱に入れてもの入れの中に保管していたし・・・


:ちょっと扉が開いたもの入れに興味を持って探ってみたら出てきたのよ。木箱に入ってて、顎の骨が入れ替わってたから不気味だったわ


やっぱそれかっ!!!

つーか!!


:お前何勝手に人の部屋漁ってんの!?

:そんなに漁ってないわよ!大体、微妙に扉を開けっ放しにしたアンタが悪いんじゃない!!

:言いがかりもいい加減にしろや!


筆談がデッドヒート。おかげで右手の傷が痛んじまった。
そのうち、アリサにシャーペンをノックするときに誤ってシャーペンの上下が逆のまま押してしまう呪いを見つけてかけてやると俺は心の中で誓った。





時は過ぎて、放課後。

いつものように玄関までダッシュ・・・は、怪我のせいでそこまで走れず、早歩きになった。
そのまま靴を履き、学校を出る。

昨日はすずかに家に送られてそのまま寝ちまったからな・・・今日病院に寄るか・・・あと、薬も貰った方がいいかな・・・。

薬とは、幼少期のあの虐待の映像がフラッシュバックしてくるのを防ぐための薬だ。今でもあの記憶で飛び起きることがあり、2年前も傷の出血で気絶した俺を介抱しようと、すずかが出血箇所を見ようとした時にフラッシュバックで飛び起き、すずかに襲いかかろうとしたほどだ・・・。

この記憶と傷は消えない。もし消せるとしても、それは俺の理不尽への復讐の誓いも消すに等しい。だから消したくもない。
だから薬でフラッシュバックを防ぐようにしてるんだが・・・最近フラッシュバックが起きることも少なくなってきたな。先生にそのことも言ってみるか?

そう思いながらも次の曲がり角を曲がった、その瞬間。





それが、俺が今までの日常と決別するきっかけになった。



目の前に立つ、1人の長髪の男。

その男の腹にはガラスケースが埋め込まれていて、中には―――



人の形をした、パイが1つ入っていた。



サイレント化のせいもあって、驚きの声は出ない。

だが俺は、その存在に驚愕し、畏怖してしまった。

俺は――この存在を知っている。





『忌束キリヲ・・・お前にドクロは相応しくない・・・・・・ドクロをよこせっ・・・!』










人喰い―――カニバル!!



すぐに、走り出した。

全身の傷の痛みなどどうでもいいっ・・・早く、安全な場所へっ・・・!

俺は、適当に開きそうな扉を探し、その扉に手をかける。
すぐにその扉を開け、扉の先へと踊り込んだ。

扉は民家の玄関だったが、飛び込んだ先は民家ではない。
俺が魔法の練習や力の制御などで何度も使用してきた世界――模写世界(コピーワールド)だ。

・・・この世界に来れば安全だ。今この世界は俺以外の人の侵入は許可していない。
座り込む。安全だとわかっているのに、恐怖で身体が震える。俺が抑えようとしても、震えは酷くなる。

でも・・・なんでだ?なんで、カニバルがこの世界にいる?

カニバルとは漫画エニグマにおける存在で、自身の頭がエニグマの証明のドクロとして使われ、その後エニグマの力によって復活させられた咬田シメイのはず・・・俺が所持するドクロが仮に奴の頭だとしても、この世界に来ている理由にはならない。これは、神がこっちに送ったものなんだから。

それにあいつ、ガラスケースの腹の中に・・・・・・パイを入れてなかったか?

パイ・・・カニバルは人を喰らう時、捕食対象の人の骨を抜き取ってパイにし、それを喰らう。そうして喰った人の姿と能力を得る。

つまり・・・あいつに捕食された被害者がどこかにいる・・・!

それはまずいっ・・・捕食された被害者は骨を抜き取られているから長く生命維持ができない。それに、カニバルの腹に入ったパイは時間をかけて消化されていく・・・!消化されたら、そいつは元に戻らないっ!

ここを出て、被害者を探す必要がある・・・・・・ここに入った場所から離れた地点に繋げて、そこに出れば、すぐに襲われることはないはず・・・。
有言実行しかない・・・!

再び扉に手をかける。扉をくぐると、入った時とは全く別の場所に出た。





・・・有言実行って言っても、どこ探しゃあいいんだよ・・・。

早速難題にぶつかった。被害者の居場所がわからない。
くそっ、どうすりゃいいんだ・・・!グダグダしている暇なんてないぞ・・・!

・・・・・・っ!予知!
運がよかった・・・!予知が起きる・・・起きたまま記述し、未来の動きを予知する夢日記だ!

すぐに日記帳を取り出す。左手が勝手に動き、記述されていく。



4がつ24にち

ごみすてばでかにばるにたべられたひとをみつけました。



記されたのは、ゴミ捨て場と黒い物体、そして俺と思しき人の絵。

なるほど・・・ここに被害者が・・・・・・!?

何かが日記の中に入ってきた・・・!?人・・・!?
そしてソイツが、俺を・・・捕まえた!?
行ったら、俺が捕まる未来・・・!?

・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・行こう。
助けを待ってる奴がいる。なら、助けに行こう。

俺は、走り出した。





夢日記にあったゴミ捨て場、それは俺が唯一知っているゴミ捨て場であった。
金網で組まれたゴミ入れがある、よく見るであろうゴミ捨て場だ。

そして、見つけた。

ゴミ入れのすぐそば。そこに黒いゴミ袋が置かれていた。ガサガサと、ゴミ袋が動いている。

・・・被害者は、一体誰なんだ?

だけど、予知がある。俺は確認せずにそのゴミ袋を手にとって走り出した。
そしてすぐ近くの扉に手をかけ、模写世界の中に逃げ込んだ――。





―side・シャマル―


おかしいわ・・・反応がいきなりロストした・・・。

ヴォルケンリッター全員と、はやてちゃんとなのはちゃんにフェイトちゃん、アースラスタッフも協力して貰って捜索してるのに・・・。

確かにこの辺りに魔力反応があった。なのについさっき、いきなり消えた・・・。

どこなの・・・・・・一体、祝福の風のあなたの身に何があったの・・・・・・?


―side・out―





模写世界の、病院内に降り立った。

できるだけ早めに、生命維持の緊急処置をしなければならない。

・・・でも、その前に。

確認しないと・・・・・・被害者は、おそらく予知にあった俺の知人で髪の長い女性・・・。



袋を、開けてみる。





―――すぐに閉じた。



骨を失った、人間だったものがグニャグニャと不気味に動いていた。



そして、見えた。





綺麗な銀髪と、黒い羽根が。



知人と言えば、確かに知人だった。



よりによって・・・・・・お前だったのかよっ・・・・・・!





祝福の風――――










――――リインフォースッ・・・・・・!!

-13-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える