小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

e12.沈黙者対人喰い





―side・すずか―


「はぁ・・・」

ため息が漏れる。ため息をしすぎると幸せが逃げるってよく言うけど、現在進行形で幸せとは正反対のことが起きている。

今日はクラスにはやてちゃんと拓也君の姿はない。正確には、管理局に勤めている4人が学校を休んでる。

理由は、はやてちゃんの家族、リインフォースさんが昨日から失踪したからだ。
今も、リインフォースさんからの連絡はないらしい。

はやてちゃん達が捜索に当たっている間私にもできることをしようと、こういう事例・・・神隠しの話はないのかキリヲ君に聞こうと思った。

けれど・・・

「どうしてこの日に限って休んでるのかな・・・」

キリヲ君は今日学校に来ていないらしい。
まあ、本当に神隠しなんてことはほとんどないと思うんだけど・・・

「はやてちゃん達・・・大丈夫かな・・・」

小さく呟く。
今は授業中で、先生が話しているけど、心配で話が耳に入らない。

本当に、なんでこんなタイミングよくキリヲ君は来てないんだろ・・・。

・・・・・・まさか、キリヲ君も何かに巻き込まれてるって訳じゃ・・・ないよね・・・?


―side・out―





特に何もない空き地。

人気はない。

そんな場所にいるのは、木箱を抱えて立つ俺という存在ただ1人。
今日は学校がある日だが、それを無視してここに来た。

木箱の中身は当然、エニグマの証明。災いを生み出すドクロ。
奴が欲する代物。
早い話が、俺はカニバルを誘い出す囮としてここに来た。

付近の扉の場所も確認した。

後は、カニバルが現れるのを待ち、模写世界に誘い込んでから一騎打ちで奴を倒してリインフォースを救出するのみ。

当然怖い。
一歩間違えれば俺が喰われるからだ。

だが・・・気づいている俺が、リインフォースの助けの求めを見捨てる訳にはいかない。

木箱を抱える腕に力が入る・・・。

俺は・・・ここにいるぞ。

俺は・・・忌束キリヲは、エニグマは、ドクロは!ここにあるっ!!



出てこいっ・・・カニバル!!





―――ゾクリ





来たっ・・・!



後ろを振り返る。

誰もいなかったはずのそこに、奴がいた。

『ドクロ・・・・・・ドクロをよこせっ・・・!』

身体が震え上がる・・・・・・死よりも恐ろしいような恐怖が迫ってくる。
だけどっ・・・ここで潰れる訳にはいかない・・・!

俺は走り出した。
そして事前に確認したすぐ近く空き家の扉に手をかける。
後ろを確認する・・・よし、奴は追ってきている・・・!

模写世界(コピーワールド)への扉を、開く!

・・・勝負だ、カニバル!!



模写世界の海鳴市でカニバルと向かい合う。

『ドクロッ・・・ドクロォォオオオッ!!』

突っ込んでくるカニバルの、特に“手”に注意して攻撃を避ける。

奴の手で頭を掴まれたら終わりだ。骨を抜かれ、パイにされて捕食される。

奴の手をかいくぐり、俺の手が腹のガラスケースについた。

・・・・・・死ねっ・・・三次減算解放っ!!

極限まで縮小して持っていた電柱に削った数字を全部加え、元の大きさに戻す!
電柱は元の大きさまで拡大、ガラスケースと手が密着状態だったため、拡大の力でカニバルが押し出され、吹き飛ぶ。
祀木がe-test内で使っていた手段だ。狭い空間よりも大きなものを三次減算によって入れ、中で拡大させて押し出す。
・・・直接持っていた分、衝撃がこっちにも来たが、予想の範囲内だ。まだいける。

で、カニバルは・・・・・・










・・・だめか。





カニバルのガラスケースは、“無傷”だった。

どうやらあのガラスケース、物理的攻撃には効かないらしい・・・。

『ドクロッ・・・!』

!?カニバルが黒・・・いや、濃い紫の魔法陣を・・・!?

ッ!!ガーディアン!!

次の瞬間、俺の四方八方から紅い刃――ブラッディダガーが襲いかかり、俺は爆発に包まれた。

っ・・・やはり、本人と同じ能力とだけあって重いなっ・・・!ガーディアンのセットアップが間に合わなかったらどうなっていたことか・・・!

煙が晴れる。俺の姿はいつものコート姿ではなく、学ランで両手両足に枷がつけられた姿――原作のキリヲの刑務所内での姿だ――になっていた。俺の、魔導師としての姿である。

チッ・・・物理攻撃は効かない・・・だからと言って無限回廊にぶち込むのも対した意味がないだろうし、時間がかかりすぎるとリインフォースが消化されちまう・・・!

『ドクロォォオオオッ!!』

砲撃が俺に襲いかかる。俺はそれを防御魔法で防ぐ。

幸い、ガーディアンの強さは異常な程の硬さだ。おかげで奴の攻撃で墜ちることはまずない。

考えろっ・・・あのカニバルから、リインフォースを救出する方法を・・・!

『ドクロを・・・よこせぇぇええっ!!』

黙って・・・リインフォースを解放しやがれ!!





俺が走る。

カニバルが追ってくる。

カニバルが魔法陣を展開した。
すると、俺の周囲を無数の魔力球が囲う。

『ドクロッ!!』

カニバルの手から、魔力球から、砲撃が俺一点に群がってくる。

俺は自分自身をクリスタルゲージに閉じ込める。
クリスタルゲージが俺の全面の防御壁となり、砲撃の嵐を凌ぐ。

砲撃が収まったところでゲージを解いて、透明化。
透明化で接近し、カニバルの顔面を蹴り飛ばす。
倒れたカニバルの上に立ち、小さくした鉄骨を投げる態勢をとる。

・・・解放っ!!

カニバルの顔面に、元の大きさに戻った鉄骨がぶち当たった。



・・・チッ、全然効かねえ・・・やっぱり、コイツは頭も腕や脚も、全身が物理的攻撃が効かないようにできてやがる・・・。

カニバル自身が、そもそも死人みたいな存在だからか?それとも、何か別の理由でもあんのか?

『穿てっ・・・!!』

・・・しまった!!

視界全体に現れる紅い短剣。それが殺到し、俺に襲いかかる。
ガーディアンのおかげでダメージはない。しかし、衝撃は別物。あらゆる角度から短剣に突かれ、衝撃で俺の動きが止まる。

『喰らえっ!!』

そこにカニバルが砲撃を仕掛ける。防ぐことができず、衝撃でカニバルの上から吹き飛ばされた。

地面を転がり、摩擦の影響で止まっていく。

デバイスの本体でもある、俺のバリアジャケットはもうかなりボロボロだ。奴が喰ったリインフォースの、本来の夜天の書の力が凄まじく、その力を得たカニバルの攻撃をだいぶ受けてきた。まだ機能があり、俺本体へのダメージがまだほとんどない分まだマシだ。

・・・戦闘が始まってから、何時間経ったんだろうか。

場所は変わり、周辺は瓦礫だらけになり、辺りには物が散乱している。

そんな中俺とカニバル、両者ともに傷は少なく、しかし、俺だけが片膝をつく有り様だった。
古傷からの出血、そして疲労。それが俺から体力を奪っていた。

もう・・・戦う力はない・・・・・・限界だ・・・。

『ドクロ・・・ドクロォッ・・・・・・』

カニバルが近づいてくる・・・・・・。

幸いなのが、奴の盲目さか。もう俺の手元にドクロはない。現実世界に放り込んで隠しておいた・・・。

・・・俺は奴と戦っても勝てない・・・それでも、リインフォースを救出するには、これしかない・・・!

メモ帳とペンを出し、ガリガリと書き綴る。
そして書いた内容を、カニバルに見せる。


:喰えよ、俺を


俺は自分から、喰われることを選んだ。

方法はただ1つ。奴の腹の中に入り、リインフォースと一緒に腹から脱出するしかない。

危険は大きい。まず、腹の中で俺の精神が目覚めることができるかどうかだ。目覚めることができなければ、そのまま消化される。
それに、コイツが原作と同じカニバルかも謎だ。脱出の方法が原作と同じである保証はない。

・・・だけど、時間を使いすぎた。ケースの中にパイがあるのを見る限りリインフォースはまだ無事のようだが、どこまで消化が進んでしまっているのかわからない。ここで何もできずに、ただ逃がしてしまうのはもうできない。


:必ずリインフォースを救出してみせる・・・そのために、俺を喰え、カニバル!!


俺の感情をカニバルにぶつける。

『ドクロッ!!』

奴の手が俺の顔を掴んだ。

俺の何かが引き抜かれる――


ズルズルッ・・・





ドシャッ――――










―――ガサッ










ガサ・・・ガサッ










ガサガサガサ・・・・・・










 ガサガサ      ガサ  ガサガサ ガサガサガサ       ガサガサ ガサガサ     ガサガサ           ガサガサガサガサ    ガサガサ  ガサガサガサ       ガサガサガサガサ     ガサガサ    ガサガサ  ガサガサ    ガサ    ガサガサガサガサ       ガサガサ  ガサガサガサガサ   ガサガサ      ガサガサガサガサ ガサガサ  ガサガサガサ     ガサガサ ガサガサガサガサガサガサガサガサ     ガサガサ      ガサガサガサガサ    ガサガサガサ   ガサガサガサ     ガサガサ  ガサ    ガサ       ガサガサ   ガサガサ  ガサガサガサ     ガサガサ   ガサ ガサガサガサ ガサガサガサガサ     ガサガサガサ  ガサガサ    ガサガサ  ガサガサ    ガサ ガサ   ガサ          ガサガサガサ   ガサガサ    ガサガサガサ  ガサガサガサ     ガサガサ  ガサガサ  ガサガサ  
 ガサガサ   ガサ    ガサガサ      ガサガサ  ガサガサガサ   ガサガサ ガサガサ  ガサガサガサガサガサガサガサ         ガサガサガサガサガサ    ガサ  ガサガサ    ガサ   ガサガサガサ      ガサガサ   ガサガサ      ガサガサ   ガサガサ   ガサガサガサガサ      ガサガサガサガサ  ガサ   ガサガサ     ガサガサガサ     ガサガサガサ  ガサガサ   ガサ   ガサ    ガサガサ ガサガサ  ガサガサ      ガサガサ          ガサガサガサ  ガサ ガサ  ガサガサ   ガサガサ    ガサガサ  ガサガサ     ガサガサ      ガサガサ   ガサ  ガサガサガサ        ガサガサ    ガサガサ ガサガサ ガサガサ    ガサガサ      ガサガサ  ガサガサ    ガサガサ   ガサガサガサ     ガサガサ   ガサガサ       ガサガサガサガサ  ガサガサ  ガサガサ   ガサガ
サガサ    ガサガサガサ          ガサガサ ガサガサガサ   ガサガサガサ         ガサガサガサ  ガサガサ    ガサガサガサ    ガサガサ ガサガサガサ    ガサガサ   ガサガサガサ  ガサガサ   ガサガサガサ  ガサガサ ガサガサ          ガサガサ  ガサ  ガサ  ガサガサ    ガサガサ  ガサガサ  ガサガサ      ガサガサ  ガサ ガサガサガサ    ガサガサ  ガサガサ ガサガサ      ガサ    ガサガサ  ガサガサ ガサガサ  ガサガサ     ガサガサ  ガサガサ    ガサガサ  ガサガサガサガサガサガサガサガサ・・・・・・










「ドクロォッ・・・









ドクロォォォォオオオオオォオオォォオオオオオオオッッッッ!!!!!



















ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア
゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!」

-14-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法少女リリカルなのは (メガミ文庫)
新品 \578
中古 \1
(参考価格:\578)