小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e13.人喰いの部屋





―side・はやて―


今日のリインフォース捜索は開始からすでに、何時間も経っていた。

反応がロストした地点を中心に手分けして捜索していて、私はリインフォースがなぜかうちとユニゾンできなくなったことから新たに生まれた融合騎、リインフォース・ツヴァイ、略してリインと捜索しとる。ちなみに、初代の方はリインフォース・アインスとなってる。リインフォースの呼び方はそのままリインフォースや。

「リインフォース・・・一体どこに行ったんや・・・?」

「はやてちゃん・・・」

家族を失うなんて経験をするのはもう嫌や。リインフォースに何かあったら、私・・・・・・。


―――ドガァンッ!!


「「っ!?」」

突然の後ろからの轟音。
振り返ると民間の扉が壊されていて、ボサボサの長髪の男が出てきた。

「八神はやて・・・リインフォース・ツヴァイ・・・・・・ドクロをよこせ・・・!」

・・・!?私達の名前を知ってる?
それにドクロって何のことや・・・?

「一体誰です?それにドクロって何やねん?」

「ドクロ・・・ドクロをよこせっ!」

「っ!?」

男が展開している、濃い紫色の魔法・・・これって、リインフォースの・・・!?

「よこせぇぇええっ!!」

「っ!!リイン!」

「はいですっ!ユニゾン・インッ!!」

高速で飛来してくるブラッディダガーを、セットアップとリインとのユニゾンをして回避する。

でも、なんでや・・・あの魔法陣の色もブラッディダガーも、リインフォースのものやで・・・?

「あなた、一体何者なんや!?なしてリインフォースの魔法を!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」

聞く耳持たんかコイツ!

ロン毛男の砲撃――やはりこれもリインフォースの魔力と魔法やった――を魔法陣を展開して防ぐ。

なら、こっちも反撃や!
足下に魔法陣を展開し、夜天の書の頁が開かれる!

「クラウ・ソラスッ!!」

白銀色の砲撃が男めがけて撃ち出される。
男は防ぐ動作すらせずに、砲撃に呑み込まれた。

・・・やったか?

「ドクロッ・・・!」

「・・・!!」

砲撃で舞い上がった砂煙の中から、男が出てきた。

―――無傷やった。

両手両足にやけにデカい枷をつけたそいつは、身体どころか服にも傷1つついてない姿で出てきた。
なんて硬さや・・・全力でなかったにしても、硬すぎる・・・。


―――ズズズッ


その時やった。
男の全身が黒くなっていった。

そして、その黒が剥がれ落ちると、男は別の姿になっていた。
よう知ってる人物・・・自分達が今探してる人物になっていた。

「主・・・」

「――リインフォース!?」

『お姉様!?』

男が、リインフォースになっていた。

どういうことや?こんな相手の目の前で変身魔法を使うのは意味がない。なら変身してなんの意味があるんや・・・?

けれど、その考えはいとも簡単に覆された。

「主、申し訳ありません・・・私は、この男にパイにされ、捕喰されてしまいました・・・」

「な・・・!?」

パイにされ、喰われた・・・そないなことが、現実としてありえるんか!?

うちと中にいるリインが驚愕しとる間にリインフォースの身体が黒くなり、またあの男に姿が戻った。

「この女を助けたければ、ドクロをよこせっ・・・!」

男が見せた自身の腹にはガラスケースが埋め込まれていて、中にパイが2つ入れられていた。

人質や・・・自分の目的を達成するために、リインフォースを人質にっ・・・!

せやけど・・・!

「ドクロを、ドクロをよこせっ!」

「せやから、ドクロって何やねん!」

『っ!はやてちゃん!!』

リインの声に気づいた時には、うちの周囲に黒い魔力球が大量に浮かんでいた。

「ドクロ・・・ドクロ、ドクロッ、ドクロォォオオオッッ!!!」

次の瞬間。
うちの視界を、紫色の砲撃が埋め尽くした。


―side・out―





・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・ぐっ、ぅっ・・・・・・!

・・・・・・どこだ、ここはっ・・・。

・・・そうだ、俺はカニバルに喰われたんだったな・・・・・・だとしたら、ここは奴の精神世界か・・・?

棺から起き上がる。殺風景な部屋だ・・・。

まずは身体チェック・・・よし、まだ消化はさほど進んでない。才能も全部、まだ使える。それぞれ2回ずつといったところか・・・身体が全体的に重いが、まだ動ける。

・・・そうだ、この部屋に来たってことは、リインフォースは・・・?リインフォースは無事なのか・・・?

周りを見渡して、すぐに別の棺を見つける。立ち上がってその棺の中を見てみると、甲冑姿のリインフォースがいた。

だがまずいな・・・だいぶ身体が透けて骨が見えている。消化が進んでる・・・早く、安全な場所に避難させないと・・・!

俺は近くの壁に手をかけ、念じる。少しして壁の一部が動き、隠し扉なってこの部屋のコピーと繋がった。当然、コピーした部屋の方はカニバルの腹とは別物。消化はされない。

コピーが完了して、俺はリインフォースを抱えて・・・とは身長的にうまくいかず、背負ってなんとかコピー部屋まで入ることができた。

リインフォースの様態はあまりよくない。腕や脚はほとんど透けてしまっていて、頭部も口だけでなく結構な面積が透けている。長時間消化されて、危ないところまできていたようだ。息も細かい上に荒く、かなりうなされているようだった。

逆再生の力を使って平常な状態まで巻き戻そうかと少し考えた。しかし、ここで無闇に力を消費する訳にはいかない。それに、巻き戻して目覚めた時への不安もある。
3年と少し前のサイレント化の一件。完全にサイレント化したところまでは見ていなくとも、リインフォースはおそらく俺のサイレント化はもうわかっているはず。今ここで目覚めさせたら、言葉を発せない俺を、3年前の俺だと気づかれる可能性がある。気づかれなかったとしても、重ね合わせて重く見るのが目に見えている。

だから巻き戻さず、現状維持という形にした。

後は・・・脱出のための手がかり探しだ。この部屋から出るために、奴の記憶を再生させなければならないはず・・・。

・・・あった、パソコン。しかも電源が入ってる・・・。
近寄って調べると、こんなことが書かれていた――。





(記憶復元プログラム、パスワード入力)

あなたについて、次の文の【】に当てはまる言葉を記入してください。
正しいパスワードが入力された場合、本体の活動が停止されます。


氏名:【    】

願望:【    】





―――なんだこれ・・・!?

あなたって、この部屋の持ち主・・・カニバルのことだよな・・・。
願望はわかるけど、氏名?原作でこんなのあったか・・・?プログラムを開くシステムそのものが違うぞ・・・?

・・・・・・ちょっと待てよ、この部屋って・・・!?

この部屋の周囲を見回す。
そして見つけた人骨模型や、棚に飾られた人形を見つけ駆け寄った。

・・・ある!?この部屋、全部の人形に頭部があるぞ!?
どうなってんだ・・・カニバルは、咬田シメイが頭部の骨を引き抜かれて、その後復活させられた存在のはず・・・・・・そして自身の頭を取り戻すためにカニバルになって、精神世界にある人形は全部頭部だけがない状態になっているはずだ・・・!

・・・・・・ということは、この部屋・・・・・・いや、奴は・・・カニバルは、咬田シメイじゃない・・・?

・・・第3の手で本棚の上を調べる・・・ここには、シメイがカニバル化した一部始終が撮影されたカメラがあったはずだ・・・。

・・・・・・ない。

あるはずのカメラが、ない。脱出の手がかりがない・・・。





・・・出られない・・・・・・!?

-15-
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