e17.神さん久しぶり。そしてはじめまして
翌日。
俺はホームルームが終わってすぐ、昨日の無断欠席について先生から説教を受けた。
カニバルとの危険な決闘のためおふくろにも内緒にしていた故の無断欠席であり、責任は全部俺にある。やっていたことが非日常的なためそれを言う訳にもいかず、説教を黙って聞くほかはなかった。正確には筆談なため読むほかはない、だが。
リインフォースについてだが、無事に解放されてその日の内に八神家に戻ることができたらしい。
おかげで、登校中にはやての姿がチラッと見えたが、いつもの通り・・・少しテンションが上がっていた。他の原作組も表情が明るい。
・・・だがそろそろ、原作組との接触頻度をある程度落とすことも考えた方がいいかもと思ってる。あんまり接触頻度が多すぎると思いもしないところで俺の正体がバレるかもしれない。
ただでさえ以前にアリサとすずかにドクロを発見されてバレるのではないかヒヤヒヤしてるんだし。
・・・やっと説教から解放された。のそのそと席に戻る。
:何の話だったの?
・・・さっき関わらないようにしようと思ったばかりなのに・・・。
:無断欠席したことについての説教
:そういやアンタ、なんで昨日来なかったのよ
:色々あるんだよ色々
:ロクな理由には見えないわね・・・
:ほっとけ
さて、寝るか。
・・・という訳にもいかずなのはに殴り起こされ。
さらには昼休み。すずかにも昨日休んだ理由を問い詰められ、誤魔化すのに苦労する羽目になった。
・・・なんだ?コイツらと関わっていくのは、もう確定事項なのか?
これが何かの補正力というやつなのか?そうなのか?
:今朝思った理念が早速砕けそうな件について
:意味わからないよ
あっさり斬られた。
ようやく学校が終わり、帰宅。
昨日の疲れもあってか、やる気が起きずに夜になったらすぐに寝た。
駄菓子菓子。
気がついたら、すごく見覚えのある真っ白空間にいた。
そしてそこには、すごく見覚えのある中年男性が、すごく見覚えのある低姿勢っぷり・・・土下座を敢行していた。
・・・とりあえず、顔上げてほしい。読唇術も使えない。
あ、顔上げた。
『申し訳ありませんっ!!』
いきなり謝られた。
そいつは俺を転生させた神だった。
ポケットを探る。筆談道具はちゃんとあった。
:とりあえず説明を
謝られるだけだと訳がわからん
つーか、俺また死んだの?
:はい、了解しました
内容については、先日遭遇した分あなたの方が詳しいかと
あと、私がここに呼んだだけです。死んでません
俺の生死がついで扱いとか。
でも・・・なるほど。
:カニバルについてか
俺も情報が欲しかった
:では、説明します
読む話によると、転生した後の死んだ肉体のカニバル化は神にもよくわからない存在――イレギュラーということらしい。
神のミスによって死んだ奴らの死因は全員心臓麻痺。身体の欠損はないのだが、転生の際に記憶や魂を抜き取り、それらが本体から欠損したのがカニバル化の原因らしい。
だが本体には微量ながらも抜き取った記憶などの残りカスができる。言わば残留思念だ。それが、動く死体、カニバルとして復活、記憶の残りカスを頼りにさ迷い歩く。さらに言えば記憶や魂を抜き取る際に使った神の力――神力と言うらしい――の残像がカニバルに残り、その神力の欠片で他の世界に来たとか・・・こんな感じだろうということだ。正確にはまだ謎だそうだが。
そもそも、神のミスで人が死に、転生させるということすら異例の事態だったらしい。神力が外界に及ぶこともまずないことらしく、何も起きずに済むという保証は元からなかったそうだ。
カニバルに物理攻撃が効かないのも、まだ謎らしい。ただ、すでに死んでしまった身体だからではないかとのこと。
:ホントに申し訳ありません
我々は直接干渉してはならないことになっていますので・・・
:別にいい。むしろアイツには感謝してる
けど、話の中でまさかと思ったんだけど
:ええ。あなたの予想は合ってます
カニバルは複数存在します
そのことに気づいたのは話の途中。
神はカニバルについて“俺の名前”ではなく、“転生前の本体”という面倒な言い方をしていた。浩人(おれ)1人で済むのならそんな言い回しの必要はない。
:あと何体・・・リリカルなのはの世界には何体のカニバルがいるんだ?
:カニバルは自分の転生者の元へ行く傾向があります
あなた達リリカルなのはの世界へ転生した方はあなたを含めて全員で13人
つまり、リリカルなのはの世界に行ったカニバルは13体です
俺のカニバルはもう活動停止したから、12体か。
:いえ、カニバルはその本人の魂が消滅した場合でも活動停止するみたいです
すでに4人程リリカルなのはの世界で亡くなった転生者がいますので、現在カニバルの数は8体ですね
:なにチャンネル[es]使ってんだ
:読心術は神のデフォルトですので
知らんかった。
:で、どうするってんだ?
攻撃が効かないカニバルにどうやって対処するんだよ?
わざと喰われて腹の中からなんとかしろってか?それとも転生者を抹殺するのか?
:いえ、どちらも非効率的すぎますので
こちらから対カニバル専用の転生者を送ります
対カニバル用転生者ってなんぞ。
:カニバルは先ほど言った通り生きた亡霊ですので
浄化プログラム・・・成仏させるためのものです。そのプログラムを組ませた転生者をそちらに飛ばします。
カニバルについて最もよく知るあなたが現地でうまく扱ってください
:ちょっと待て
要はカニバル対策をした転生者をこっちに送るってことだろ?
俺が扱うってどういうことだ。そいつらに任せればいいんじゃないのか?
:言ったでしょう?
カニバルを一番知っているのはあの世界にいる転生者でもあなただけなんです
それに転生者の方は魂と記憶の破損が酷かったので
色々手を加えてユニゾンデバイスにしたんですよ
そして、その人自身にカニバルの浄化プログラムを組み込んだんです
人にプログラムを組み込むって、正気かアンタ。
:存在がプログラムなので。見たらわかりますよ?原作のキャラですし
なんだと。
:で、そいつとユニゾンしてやってけと
:ええ
面倒になってきたな・・・。
:すみません
お詫びとして、あなたが今受けているサイレント化を
:いや、サイレント化の解除はいい
:なぜ、です?
:俺は、自己満足って言う罪を犯したんだ
これを解いたら、その罪もなくなっちまう
罪は罪として、償いたい
:わかりました
では代わりにこれを
少し悩んでから俺の主張を受け取った神は、そう書いて小さな笛を渡してきた。
:これをあなたが吹けば、私の元へ来れます。必要になったら使ってください
ちなみに使い捨てです
なるほど。つまりは願いをもう1個叶えられるってことだな。
:では、そろそろ戻しますね
ユニゾンデバイスは直接あなたの元へ送るので、説明は彼女らに聞いてください
ん?彼女“ら”?複数形なの?
:はい
では、送りますね
ん?覚えのある浮遊感。
ってか、また落下オチかよぉぉぉおおおおっ!!
畜生あの神!!帰ったら変な語尾をつけてしまう呪いをかけてやるからなぁぁぁぁぁ!!!
・・・っ!!
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
気がついたら俺の部屋。
時計を見る。朝だ。
・・・・・・夢?
いや・・・何か持ってる・・・?・・・・・・あの神からもらった笛だ・・・。
てことは・・・現実か。
現実ってことは、俺はこれからカニバル狩りをしていかなきゃなんねぇってことだよな・・・あ、神からカニバルの現在地がわかるようなものがあるか聞いて、あったら貰っとけばよかったかな・・・くそっ、しくった・・・早速笛使うか?
でもな・・・ここで使って、必要な時に使えなくなるのもなぁ・・・。
うーん・・・まいった。
・・・つか、起きてから思ったんだが、おふくろが俺の髪を引っ張ってやがるな・・・おふくろ、まだ時間はあるんだし、そんな起こし方すんなよ・・・・・・。
「 ! !!」
・・・・・・は?
えっと、待て待て。予想外すぎて読唇術での読み取りに失敗した。
・・・なんで、闇の書の闇の欠片である闇統べる王・・・確かGODではロード・ディアーチェだっけ。ソイツがここにいる?
なんで、ディアーチェがねんどろいどサイズにまでちっさくなっている?
なんで、俺はそんなディアーチェに怒られている?
『いい加減聞かんかこの戯け!!』
なんで俺の額を蹴るし。
・・・ん?
『ねぇシュテるん、こんなのでいいかな?』
『伝われば問題ないかと』
いや、問題大ありです。
なんで星光の殲滅者・・・シュテル・ザ・デストラクターと雷刃の襲撃者・・・レヴィ・ザ・スラッシャーまでもがねんどろいどサイズになっている?
サイズの割には俺のシャーペンを持ってるし、紙になんか書いてるし。
そしたらシュテルとレヴィが、そのなんかを書いた紙を2人で持って運んできた。
:神の使命によってカニバル対策のためにやってきました
よろしくお願いします
紙には、そう書かれていた。
―――はあぁぁぁぁあああああっっ!!!??