小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e19.サイレント対チート





マテリアルズが家に来て約1週間。

GWはもっぱらリョウ家でデバイスマイスターになるための勉強に費やした。
原作キャラと関わらないようにするには一番いい過ごし方だったから、というのが理由の1つである。
だがおかげで、勉強は随分先まで進んだ。今ならアドバイスありでなら、簡単なストレージぐらいなら作れる。

そんな感じの連休を過ごし、連休明けの学校。

授業が退屈なのは変わりない。だが寝ることはなかった。ここ最近は授業中でも寝ていない。
理由は2つある。1つはなのはという脅威。時々管理局の仕事で休むなのは達だが、そんなの稀だ。それに、なのはが休みの日は変わりに左斜め前のアリサが睡眠の妨害に入ってくる。そのせいでロクに眠れない。
それともう1つはマテリアルズの存在、筆談相手ができたことである。
マテリアルズもただ見てるだけでは飽きがくる。しかしだからと言って遊ぶとかは色々タブー。
なので、彼女らを机の中に潜り込ませ、その中で筆談させることにしたのである。俺も筆談に参加する。何も見ずに、しかも左手で書き込むという無駄スキルがあるんだぜ俺には。さすがに内容はちゃんと見なきゃならないが。
この2つの要素によって、俺は授業中も起き続けるようになったのである。授業?見てもいないけど何か?

そんな感じで、校内での生活が僅かに(ホントに僅かだが)充実してきた昼休みだった。
飯も食い終えて、マテリアルズの話相手になってやろうかと机の中に手を突っ込んだ時に、そいつは来た。

バンッ!という音がしただろう。特に机の中にいたマテリアル達の被害は甚大なはず。
その、机に手を叩きつけて音を出したのは・・・神崎だった。

『サイレンス、屋上に来い!』

・・・コイツ、俺が音が聞こえないのを知ってて、わざと口で言ってやがるからな。
ってか、まだサイレンスなんて呼び名使ってんだ。なんつーか、哀れに見えてきた。

なのはやフェイトらの心配するような目。かわいそうな人を見る目。
それもコイツは自己解釈で『不良のサイレントと話なんて拓也大丈夫かな、心配しちゃう』なんて思ってるとか考えてそうだ。チラッとなのは達を見た神崎(バカ)の顔がそう主張してる。

コイツの自信はどこから来るのか、それこそ通信(テレパス)で確かめてみたい。


:別にいいけど


右手で回答を書いてその紙を神崎に見せる。そして左手は机の中で紙に『少し待っててくれ』と書いておく。

さてと、面倒だがついてくか。シカトしたら余計に面倒臭いことになるし。





で、屋上。

昼食の時間は過ぎてるからなのか、コイツが統制する謎の迷惑集団『チーム神崎』の部下が入らせないようにしたのかは謎だが、誰もいない。


:で、何の用だ?


そう書いたメモ帳を見せると、神崎はそれを奪い取って書き始めた。
そして書き終わったそれを俺に見せてきた。


:なのは達の弱みを握り、会話や笑顔を強要させるな!!
俺はそんなこと絶対に許さないぞ!!


・・・はあ?
何書いてんだコイツ。

大体、弱みってなんだよ。そんなのあって俺が握ってたらなのはの暴力を封じるのに使ってるわ。


:色々意味がわからん。俺は何もなかったらずっと黙ってるし。アイツらから話しかけてくるんだよ。笑顔なんてしてる人の勝手だろ
そもそも、弱みってなんだ弱みって

:とぼけるな!
俺に惚れているなのは達が、お前みたいな不良に話しかける訳がないだろう!!特にすずかなんて呼び出してまで強要させているじゃないか!
お前が何らかの弱みを握って、なのは達に脅しかけている証拠だ!


まあ、不良なのは認めるよ。許可貰ってるとは言え現在進行形でコートを着続けてるし。たまに無断欠席するし。
だが意味のわからん言いがかりをつけられるつもりはない。
それにさ・・・自分から惚れているって、よくそんなこと堂々と言えるな。
それに字が超汚い。読みづらすぎる。


:とりあえずその被害妄想?と馬鹿げた自信ですでにお前は世紀末
早急に病院へ行くべき
というか、病院が来い

:それはこっちの台詞だな
障害者は音のない病院で、ただ字だけを読んでればいいのさ


・・・これにはプッツンときた。

俺は神崎(バカ)の右手を素早く引き、右腕を両手で掴んで背負い投げをした。確か、背負い投げの中の1つ、一本背負いだったか。
神崎(バカ)は呆気なくぶっ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

だがバカはすぐに起き上がってきた。

『何をする貴様っ!』


:全世界の障害者に対する不適切な発言だ阿呆
次同じこと言ったら処刑だ


コピーを利用して作った、出口のない無限回廊にぶち込んで静かに廃人にさせるぞ。

『む、確かにはやても足に障害があった頃もあったしな・・・こんな発言をしたら好感度が下がってしまうか』

丸聞こえだぞ。
好感度って、恋愛ゲームのつもりか。かなり引いた。
ホントに病院が来ないか、これ。

『いやぁ、すまない。おかげでいいことを思い出した。よって今回のはチャラにしよう』

触んなという意味を込めて、肩を掴んでくるバカの手を払う。


:おっと、書いた方がいいんだったな
君のおかげでいいことを思い出した。よって今回のはチャラにしよう


わざわざ書き直してきた。
読唇術があるの忘れてんのか?

それから神崎は上機嫌で屋上を去って行った。

何だったんだ結局。

そう思いながら、俺も教室に戻ることにした。





俺が教室に戻ると、なのは達5人が待っていた。
シュテル達に待っててくれとは書いたが、コイツらに書いてはないハズだ。


:キリヲ、大丈夫だった?

:アイツの言ってることが馬鹿馬鹿しすぎて病院が来ないかと思った。

:具体的になんて言われたのよ?

:俺がお前らの弱みを握って、会話とか強要してんじゃねえかとか言われた

:やっぱそないなことやったんか
うちらにも似たようなことでキリヲ君に笑顔向けることを強要されてるんじゃないのかって言うてきたんよ


お前らも言われてたのか。
となると、アイツ本気でなのは達を守ろうとしてんのな。よくない方向性に向かってそうだが。


:特にすずかがよくこっち来るのが気に食わない様子だった

:そういえば、すずかちゃんがよくキリヲ君とお話するのって、なんで?

:それはななのはちゃん
多分すずかちゃんはキリヲ君のことが

:何でもないよ!!


すずかがはやての書き込みに割り込んだ。顔真っ赤で。
え、なに?まさか、そういうことなの?

・・・まっさかぁ。うん、ないな。だって俺だし。不良だし。フラグなんて立てた覚えもないし。神崎は立てようとして失敗の上に気づいていないみたいだけど。


:まあそれはいいとしてだ
お前ら、しばらく俺に話しかけるのを控えてくれないか?

:え、なんで?
私達はキリヲ君との会話は楽しいと思ってるよ?

:そうじゃなくて
神崎に突っかかれるのが嫌なんだよ
できるだけ面倒になりたくないし、だから原因であるお前らとの会話を控えてほしいってことさ


これは嘘ではないが、理由はもう1つある。

前から思ってたなのは達との接触頻度の調節。この期に実行しようと思う。

・・・正直、もう手遅れな気がしてならないが。


:そんなこと?
ならあたし達がキリヲを守れば解決じゃない?


予想の斜め上を通過する回答がやってきた。
手遅れとかそういう次元じゃない。


:そんなことになったら、俺がカッコ悪さでマッハなんだが


女子に守られる男って・・・カッコ悪っ。


:問題ないわ
あたし、腕っ節は強い方だから


どういう理論だ。

・・・あれ?そういやコイツらの強さってどんだけだっけ。

・・・・・・。

通称“悪魔”もしくは“魔王”のなのは。

転生前に読んだ二次小説では“金色の死神”なんて呼ばれることもあったフェイト。

“歩くロストロギア”のはやて。

その辺の男子より圧倒的に強いアリサ。

過去に俺の睡眠妨害のため幾度となく広辞苑をハンマーとして扱ってきたすずか。

・・・1名変な気がするが、それを考えてもコイツら強すぎる。
というか、俺が弱いのか?

若干鬱になった。



結局俺が説得して、守りの話をなしにする代わり関係はこのままということになった。

・・・どうやらもう、俺と原作キャラは切っても切れない状態になったようだ。

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