小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e22.情報は戦の結果を左右する





家に居候が2人できてから数日後。アリシアはおふくろの勧めで聖祥小学校に通うようになった。学校では自身の明るさからすぐ友達ができて楽しく過ごしているようだ。

俺は今日学校をサボり、ミッドのリョウ家に来ていた。
マテリアルズもいる。リョウ家とマテリアルズは何日か前に対面させており、仲良くしている。

だが今は、そんな空気ではなかった。

原因と言えるのが、俺達の目の前に展開されたモニター。
そのモニター内に記された文が問題だった。


:どう思います?


コールが聞いてくる。

俺はその回答をメモ帳に綴った。


:ああ
こんな被害、奴にしかできないな


コールが依頼人だった時とは違い、現在は普通に話している。

で、俺達が見ているモニターには、最近のニュースが書かれている。
そのニュースの中で、最も大きく書かれているのがこれだ。



『無差別襲撃事件―被害者が軟体化。レアスキルか―』


5月15日、ミッドチルダサードアヴェニューの公園にて民間人、管理局員問わず無差別に襲われる事件が発生。
被害者は全員骨がなくなり黒いゴミ袋に入れられた状態で発見され、生命維持が困難なため現在聖王病院で延命されている。
目撃者の証言によると、犯人は黒い長髪の男性で、コートを羽織っている。年齢は20歳程。
犯人が被害者の顔を手で掴んだ瞬間、被害者が軟体生物のようになって崩れ落ち、その後ゴミ袋のような物が現れてそれに包まれたとのこと。
管理局地上本部はこの事件をレアスキル保有者による極めて凶悪な犯行として捜査している。(ニュースの内容を抜粋)



・・・この被害を見たら、確実にカニバルだな。
被害者がパイにされて喰われたことが書かれていないが、目撃者がそんなことを見ている余裕がなかったのだろう。


:どうします?すぐにカニバルの調査、捜索しますか?

:いや、でたらめな捜索は意味ないな。こんなミッド全域の捜索なんでできる訳がない

:言われてみれば、そうですね

:だけど、調べたいことはある
案内を頼めるか?

:はい、喜んで


調べること・・・まずはあれかな。





事件のあった、サードアヴェニューの公園に来てみた。

だが当然のごとく公園には局員がいたため、俺は立ち入ってない。道案内として車の運転を担当したコールも同じく。俺達2人は公園から少し離れた場所にいた。
そう、俺達2人はな。

・・・お、来たか。

『全く、小さいからって遊んではいけませんよレヴィ』

『うぅ〜・・・』

『ほれ、撮ってきたぞ。感謝せよ』

各々言いながら戻ってきたマテリアルズ。
そう、ねんどろいど程度の大きさしかないマテリアルズに公園の風景を撮影してもらった。小さいから気づかれずに済んだようだ。レヴィについては後で説教しておくか。

さて、それよりも撮影した映像だな。
サードアヴェニューは今まで来たことはないし、覚えがない。しかし、公園で1つ心当たりになりそうなものがあった気がする。そのためにシュテル達に行かせてまで調べてみた。

さて、映像はっと・・・。

映ったのは、事件当時に戦闘があったのか荒れた状態の公園。所々、局員の姿もある。


:どうですか?何か情報が入りそうですか?


シュテルが聞いてくる。

うーん・・・・・・だめだ。アニメでミッドの公園が出たような気がしたんだけどな・・・思い出せん。転生してからだいぶ経つし、随分知識が抜けてきたからなぁ。公園なんて、覚えてる訳がないか。

まあ仕方ないもっと直接的な情報を探ろう。主に次に狙われる奴の限定・・・とか。


:コール、また案内頼む

:お安い御用で





次に訪れたのは、首都クラナガンからだいぶ離れた、廃れた街。
その一角にひっそりと佇む、一軒の酒場だった。


:あの、本気で行くんですか?

:ああ。コールはここで待ってろ。シュテル達もだ。危ないからな

:その危ない所に、キリ1人だけで大丈夫なの!?


この酒場はただの酒場ではない。
なんでもここには、ミッド一の情報屋がいるだとか。常連みたいで、常にこの酒場にいるらしい。取り扱っている情報は合法非合法関係なく、ほぼ全て。管理局の未公開情報なんてのもあるとか。

ここを使うのは初めてだが・・・一般公開されている情報だけだと限界があるからな。カニバルの発生範囲を特定するにはやむを得ん。

俺はコールとマテリアルズを待たせて、扉をくぐった。

酒場の中に入ってすぐ目に入ったのは、いくつも置かれてある円テーブル。円テーブル1つにつき椅子が4つ程備え付けられていて、酒を飲む客の姿が見える。どいつもこいつも柄が悪い。奥のバーカウンターでは、オーナーだろう人がコップを拭いている。

新たに入ってきた客――俺に、他の客が注意を向けてきた。中には殺気を立てる者もいる。

・・・さてと、いくか。

俺は適当にスキンヘッドの男に近寄り、前もって書いておいた紙を見せる。


:筆談をお願いします
調べたいことがあるのですが、情報をお願いできませんか?


スキンヘッドだけでなく、その紙を見た円テーブルにいた者の視線がこっちに向かって来た。

『なんだお前。その口は一体何のための口なんだぁ?』

『どうでもいいじゃないか。おいガキ』

スキンヘッドの向かい側に座っていたモジャ頭が言ってきた。

『人からものを乞う時には、相応の態度ってのが必要だ。わかるか?』

ニタニタ汚い笑みを浮かべるモジャ男。

俺はそれに対する回答を書き綴った。


:知識までなら


『なら、やってみろよ』

言われて、俺はテーブルの中央に片手を置いた。
その手には、あるものが握られている。金?違うね。そんな釣れるかどうかわからないものではない、もっと確実なものだ。



・・・解放。

そっとその手をテーブルから離した次の瞬間、床から天井までを、1本の何かが貫いた。

テーブルを粉砕し、床と天井を貫通したそれ、鉄骨。廃ビルから三次減算で持ち込んできたやつだ。その鉄骨の1本に数字を戻し、元に戻しただけ。

男どもは、粉砕されたテーブルと突然現れた鉄骨に固まっていた。他の席の奴らも唖然としている。


:こんなところです
どうです、情報をくれませんか?


俺は何事もないように尋ねた。

まあ、俺のやってることは簡単に言えば脅迫だ。力を見せつけて相手を怖がらせ、「こうなりたくなければ言う通りにしろ」。こういう場所での、典型的態度だ。

オーナーの男性がこちらを見ているが、その目には店のものを壊されたことに対する怒りとか、危険人物に対する恐怖は感じない。
・・・どうやら、『喧嘩酒場』とかって言う噂は本当らしいな。情報屋の噂も信用できそうだ。

・・・さて、奴らは・・・?

ああ、キレてるキレてる。
宣戦布告に等しい態度をとられて、このテーブルのみならず、他の野郎どももそうだ。デバイスを取り出している。

『テメェ・・・いい度胸してんじゃねぇか・・・』

スキンヘッドが大斧型のデバイスを握る。

・・・めんどくさい。全部解放。

投げる。

瞬間。

数十の鉄骨が至る所に突き刺さった。

1つは他のテーブルを粉砕し、1つはデバイスを粉砕。いくつか人に裂傷を負わせたものもあるし、肩を貫かれて吹っ飛ばされた奴もいる。だが、死んだ奴はいなさそうだな。
スキンヘッドの方は、デバイスを砕かれた上に目の前ギリギリに鉄骨が突き刺さっていた。

ふぅっとため息。

辺りが阿鼻叫喚に包まれ出した中、ようやく思考が動いてガタガタし始めたスキンヘッドの顎を持ち上げ、紙を突きつけた。


:情報をお願いできますか?


『ひ、ひぃぃぃぃっ!!』

スキンヘッドは口から蟹のようにブクブク泡を吹かせ、失神寸前。
・・・だめだ。コイツは使えそうにないな。

他の奴らも逃げちまったみたいだしな・・・情報屋ももういないか。・・・・・・ん?

誰かが俺の肩を叩いてくる。俺は後ろを振り向いた。

振り向くと、ニコニコとした表情で拍手をする、オーナーがいた。





:これが、あなたが頼んだ一通りのデータですかね

:ありがとうございます


ガーディアンにデータを転送してもらい、礼を書く。

予想外だったな・・・オーナーがその情報屋だったとは。しかし、それならここに常にいるという話も頷ける。


:損害については気になさらなくてもよろしいですよ。ここでは強者が正しく、敗者に責任というのが決まりですから

:すいません


『喧嘩酒場』と言われてるここは、力による格付けで成り立っている。弱者が強者の言いなりとなり、損害賠償も弱者が支払う。そういうルールだ。どうやらこのオーナーも、強者にだけ情報を公開するようにしているらしい。


:喉が渇きましたね、水を一杯いただけませんか?

:かしこまりました。


水一杯を飲んで、いくらかチップを置いて店を出た。

店を出てすぐ、コールに心配されたのは、まあ当然か。

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