e24.テスト勉強・・・色々危険
さて、ここ最近アンビリーバボーなことがたくさん起きた訳だが。
実を言うと、あと1週間もしたら中間テストなのである。
転生してからだいぶ経って、生活に関係ない知識もだいぶなくなってたり、あと英語と社会科は普通に苦手なんだよなぁ・・・つか、テストの範囲ってどの辺まっだっけ・・・あれ、意外とやばくね?
:ねえ、キリヲ君
:なんだ?
またなのはから話しかけられた。
また翠屋に行こうとかだったら断るかな。今まで何度も翠屋に訪れたけど、はやて以外の八神家に遭遇しなかったのは奇跡みたいなもんだし。
それに俺、バレてないとは言えもう完全に犯罪者だし。
犯罪者と親しくしていたなんてこと、仮にそれがバレたら局内でのなのは達の信頼はおそらく下がる。組織とか世論っていうのはそういうもんだ。特に、闇の書事件のこともあってはやてや夜天の騎士達の風当たりが厳しくなる。
それが原作に悪影響を及ぼさないという保証は1つもない。だから目立つようなことは避けないとな・・・。
・・・で、なのはの話はっと・・・
:今日、はやてちゃんの家でテストに向けて勉強会しない?
何・・・だと・・・。
待て、落ち着け。落ち着くんだ炎田浩人・・・じゃなくて、いや、あってるけど。落ち着くんだ忌束キリヲ。
状況を整理するんだ。
なのはが誘ってるのは勉強会だ。うん、そこまでならまだわかる。そこまでなのは達と仲良くなった覚えがないのは置いとくとしてだ。
問題は場所だ。なぜに八神家?
考えろ。八神に行った場合に最も確率の高いシュミレートを・・・。
八神家に入る。
↓
リインフォースとエンカウント。
↓
終始無言な俺を見てリインフォースが気づく。
↓
色々バレる。
↓
リインフォースの鬱が悪化。俺は犯罪者として収容所行き。
・・・最悪だぁぁぁ!!
これ以上ないほど最悪だよ!これだったら翠屋に行く方が何万倍もマシだよ!!
いや、まだだ!まだ諦めてはいけないぞ忌束キリヲ!!突破口を開くのだっ!
まずは色々聞くのだ!
:なんではやての家でなんだ?というか、それ以前になんで俺?
:キリヲ君、筆談をするから国語には強いのかなって。私とフェイトちゃん、国語がちょっと苦手だから教えてほしいんだ
はやてのウチを使うのは、私のウチもフェイトちゃんのウチもちょっと忙しくって。あ、メンバーは今のところ私とフェイトちゃん、はやてちゃん、すずかちゃん、アリサちゃんだよ
筆談イコール国語力ではありません。確かに国語は得意だけど。
忙しいって話は高町家は翠屋だとして、ハラオウン家は・・・ああ、カニバル事件の方か。
だ、だが、俺もここを譲ることはできないんだ!
:図書室ではできないのか?
:図書室はよく満席で使えないの
つか、図書室使えるなら確かに使ってるね。普通に考えて。
け、けど!
:家の人に迷惑は
:大丈夫だよ
それにはやてちゃんの話だと、この筆談に家族がハマって、一度キリヲ君との筆談もしてみたいって
シャマルとかヴィータのことだよね、それ!?
だ、だがしかし!
:残念だが、俺には用事が
:先に場所を聞いた時点で、今日キリヲ君が用事がないのは明白なの
詰んだ!!
結局断る要素を全部叩き斬られた俺はなのは達5人に連れられ、八神家もとい、懺悔の地に来てしまった。
ちなみに、シュテル達はいつもの通り俺のフードに隠れて一緒にいる。俺達運命共同体。
:何この世の終わりみたいな顔してるのよ
:俺、この勉強会が終わったら告白するんだ
:誰に!?誰に告白するの!?
なぜここで突っかかるんだすずかは。
:というかそれ、死亡フラグやない?
:もう俺は怖くない
:マミるよ!?
なのは知ってるんだ。というか、この世界にあるんだ、ま○か☆マ○カ。俺はこれっぽい名言以外は全然知らんけど。
:まあとりあえず、早く上がろか
時間稼ぎも大した効果にはならないらしい。元から期待できてなかったが。
はやて、すずか、アリサ、なのは、フェイト、俺の順番に八神家に入ってく。
居間まで行ったらリインフォースがいて、俺のことがバレて、それで乙るんだろうなぁ・・・ああ、結局願いを2つ残した・・・。
ごめんよ母さん。俺ぁ先にゲス親父の元に行ってる・・・ごめんよナンバーズ。お前達の救済計画は夢で終わった・・・会ってすらいないのに。
ついに断罪の場、居間にさしかかる・・・。
『あ、いらっしゃ〜い』
『はやて、おかえりー』
『お帰りですはやてちゃ〜ん』
居間で出迎えたのはシャマルとヴィータとリイン・・・。シャマル、結構美人だな・・・なんていうか、女神的な感じ・・・。ヴィータは目つきがキツいイメージがあったけど、案外そんなことなくてかわいいな・・・リインは、普通に天真爛漫な子供って感じ。あ、リインは普通に子供サイズね。
他には狼形態のザフィーラが床に伏せていて、あと2人。
『お帰りなさい、主はやて。それと、よく来たな』
ピンクのポニーテールの女性・・・シグナムもこっちに来た。
そして、シグナムと共にやってきたもう1人・・・リインフォース。
『ようこそいらっしゃいました。我が主、この方が・・・?』
ご丁寧なまでに、リインフォースは早速俺に気づいたようだ・・・まあ、見慣れない客人で、かつ男となれば結構浮くか。
『うん、彼が忌束キリヲ君や。仲良うしてな』
:キリヲです。お邪魔させてもらいます
はやての紹介に続いて挨拶はしておく。いくら関わりたくなかったとは言え、ここまで来てしまったら引き返しようがない。下手に印象づけないで、できるだけ存在感をなくして立ち去るのが得策だ。
:リインフォースと言います。ようこそいらっしゃいました
:シグナムと言います。あなたのことは、■はやてからお伺いしています
:シャマルです。どうぞゆっくりしていってくださいね♪
:リインって言います!よろしくお願いします♪
:ヴィータ。で、あそこにいる青い■犬はザフィーラ
八神家の守護騎士から次々と紙を渡される。
黒く塗り潰された部分をいくつか見つけたが、そこには確実に“主”とか“狼”という文字が入るに違いない。
そんなことより・・・まあ、すぐに気づくことはないか。3年以上も前のことだし。
それにひょっとしたら、もう忘れてくれてるのかもしれない。あの時の言葉も、本当に俺のことだっていう確信はない。過去の、闇の書だった頃の主に対する言葉だったのかもしれないし・・・な・・・。
:さ、勉強会、始めよか
:そうだね
はやてとすずかの言葉で、勉強会が始まることとなった。
:キリヲ君、問4の問題はどうすればいいの?
:またか。これで何度目になるんだ?
:キリヲ、この問5はどうすればいいのかな?
:なぜに俺ばかりに集中する。どう見ても他がいるだろ。というか、こっちも教えてほしいものが溜まってるぐらいなんだが。
:キリヲ君、これ教えてくれへんかな?
:だが断る
:なしてうちだけ!?
:てかはやてにはすずかがついてるじゃないか
:酷い、キリヲ君と私の付き合いやなかったの!?
:意味不明
緊急事態である。
なんと魔導師3人組が揃いに揃って教わる側につきやがった。
この歳でもう働いてるからか?それが理由なのか?
つーか、こっちも英文法とか聞きたいのに教えてばっかだし。俺だけ勉強が進められない。アリサとすずかも魔導師組に教えてるからあまりこっちに関わってくれないし。
誰か教えてくれ・・・この際誰でもいいからさ・・・。
・・・・・・ん?
誰かがシャーペンを持って例文に線や矢印を引いたり、説明したり・・・おお、結構わかりやすいかも。一体この解説をしてくれてる方は・・・
・・・リインフォースでした。
いや、確かに誰でもいいって思ったけど、ここでリインフォースかよ。シャマル辺りだと思ってたからびっくりだよ。え、びっくりしてるように感じない?びっくりしてないように見せるため頑張ってるんだよ。
というか、顔近い。あ、微笑んだ。ふつくしい・・・いやいやいやいや、そんな目で見ようとするな俺。
落ち着け。挙動不審にはなるな。ここでキョドっちまえば乙る、そういう覚悟で終始冷静でいるんだ。
あ、クッキー発見。差し入れかな?落ち着くためにも、1ついただいちまおう。
『あ、ちょっ、それ!?』
はやてがなんか言ってるけど、それは無視。
そういや何気に、甘いものを食うのは久し振りになるな・・・モグモグ。
・・・・・・フゴッ。
ま、まさかこれ・・・シャマル特製クッキー・・・・・・だと・・・・・・。
この世界のシャマルは・・・ポイズンコックだったのか・・・?
油断したところで刑の執行とか・・・マジ鬼畜・・・・・・ガクッ。
・・・・・・知らない天井だ。
いや、十中八九八神家だろうけど。
視界の端に俺の様子を伺うリインフォースの姿が・・・あ、少しひっこんだ。
:気がつきましたか?
そう書かれた紙を見せてくるリインフォース。
とりあえず上半身を起こす。
こかは・・・居間か。俺が寝てたのはソファの上だったようだ。
勉強に使っていたテーブルの方を見る。あったのは俺の勉強道具のみ。例のクッキーは姿を消している。
:すみません、私達の注意不足で・・・シャマルが料理を作ったばっかりに
:いえ、食べる直前にはやてから警告みたいなのを言ってたのを見たので、自分も悪かったりしますよ。今何時ですか?というか、どのくらい寝たんですか?
:だいたい、2時間ほどです
マジでか、もうそんな時間?
やべーな。これは地味に帰りづらい。今ここで帰ろうとしたら、俺が不機嫌になって帰っていったという印象がつけられてしまう。
でも、そろそろ帰らなきゃな・・・おふくろはもう仕事だとしても、今はプレシアやアリシアがいるからなぁ・・・。下手に長引けばプレシアの説教が待ってる。あれ、本日2回目の詰みじゃね?
・・・そういや、パッと見た限りリインフォースと・・・ザフィーラ以外誰もいないな・・・八神家メンバーはシャマルへの説教だとしても、なのは達は?
:他の人達は?
:■はやてとシグナム、ヴィータ、リインは今シャマルに説教を。高町やテスタロッサ達は、先にお帰りになられました。
また主と書いて塗り潰した痕跡が・・・もういいや。
つか、それって今ここにお邪魔してるのは俺だけってことか。なら・・・
:じゃあそろそろ、俺もお暇しましょうか?こんな時間ですし
:そうですか。本当にすみません。よろしければ、お見送りしましょうか?
:いえ、そんなお構いなく
:せめてものお詫びです。今、はやてに一言言ってきますね
いや、本音を言ったらリインフォースと2人っきりって気まずくてキツいんだが・・・
あー、リインフォース行っちまった・・・しゃーない、俺の分の勉強道具を回収して帰る準備をするか。
帰る前にはやてから色々謝られて、八神家を出発。
俺とリインフォース、横並びになって歩いている。
個人的になんだが・・・気まずい・・・。
リインフォースは気まずく感じてない・・・はず。だけど、事情を知ってる分、今も気負いしてるんじゃねーかとか、俺と過去にリインフォースが会った俺を重ね合わせてるんじゃねーかとか、そういう妄想が止まらん。
や、やばい・・・何かこのマイナス妄想を止めるために会話を・・・いや、会話したら何かボロが出るかも・・・。
ええい、背に腹は替えられん!適当な話題!!
:リインフォースさん
:何でしょうか?
:シャマルさんでしたっけ?あのクッキーを作ったのは・・・シャマルさんって、いつも料理はあんな感じなのですか?
:はい、お恥ずかしいことに・・・
:それは、大変ですね
いかん、話が続かない・・・!
ええと・・・な、何か・・・何かないか・・・!
:あの、忌束さん
そんなこんな考えてたら、リインフォースから話しかけられた。
:キリヲでいいですよ
:では、キリヲさん。もし気に障らないのでありましたら、いつからそのように声を出せないのか、教えてくれませんか?
・・・思い切った質問だな・・・。
俺と過去の俺を重ね合わせてるのか、それとも俺に気づいたのか・・・。
:だいたい、今から6年ほど前ですね。当時に、父親に当たる人からの虐待を受けていて、そのせいで
嘘と事実を混ぜた話をする。勿論、虐待を受けていたというのが本当、そのせいで耳が聞こえなくなったというのが嘘。
:すみません、嫌なことを思い出させてしまって
:いえ、気にしないでください
これで・・・誤魔化せたのかな・・・。
そろそろ、家も近いな・・・八神家との距離もそれなりに離れてきてるし、ここまでかな。
:では、ここら辺まででいいですよ。もうすぐ家ですし
ありがとうございました
:そうですか
わかりました。またいらしてくださいね
:はい、機会があれば
その機会が来た時、俺はそれを受け入れられるだろうか・・・。
まあ、いいか。こうして、リインフォースの元気そうな姿を見ることができた・・・それだけでいい・・・
メモ帳とペンをしまい、歩き出す。
歩き出してすぐ、俺の足は止まった。
誰かが・・・・・・リインフォースが俺の手を掴んだのだ。
『あ、す、すみません。つい・・・』
慌てて謝るリインフォース。
・・・気づいてるのか・・・?
・・・いや、まさか、な・・・・・・。
そりゃあ、フード付きコートとか右手だけの革手袋・・・当時の面影をそのまま残したような格好だけどさ、ちゃんと他人のような演技はできた。大丈夫だ。まだバレてない。
・・・正体を明かして、全部話して、謝れば・・・俺は楽になれるかもしれない。カニバルの腹の中での出来事を話して、つらい思いをさせて悪かったって言えば、リインフォースも・・・・・・
でも・・・・・・本当にそれでいいのか?全部話して、そうしたら本当に彼女も救われるのか?
いろんな奴を不幸にして、苦しい思いをさせた俺のこの答えは、本当に正しいのか・・・?
その思い、恐れが、リインフォースへと伸びようとした手の動きを封じた。
この手は・・・俺は、周りを不幸にする・・・。触れたら、壊れてしまうかもしれない。余計に不幸にしてしまうかもしれない。
そんな風に怖がって、恐れて、遠ざける。関わらないようにする。拒絶して、1人カッコつけようとして、自分の弱さから逃げようとする。
最低だよな、俺・・・自分の都合で、他人を振り回してさ。
こんなことになるなら、介入なんてしなかった方が、彼女のためになったんだろうか・・・。
俺はそんな感情を押し殺して、リインフォースに軽く礼をしたあと、再び歩き出した。
俺の歩きは間違いなく、彼女から逃げるための歩きだった。
―side・リインフォース―
少しずつ、コートを羽織り、右手に手袋を填めた少年の背中が遠ざかっていく。
我が主達の勉強会に一緒に来た少年、忌束キリヲ・・・。
・・・間違いない。彼は、あの時の・・・
気づいたのは、以前から聞いていた彼についての我が主からの話と、彼の服装を見た時だ。
耳や発声器官に障害を持っているというだけならまだ別人の可能性もあった。フード付きのコートもだ。しかし、常に右手だけに革手袋を填めているという特徴が決定的だった。そのような特殊な服装をすることはまずない。そしてその格好を、4年前の彼もしていた。そしてそれら全ての特徴が、全て一致していた。
だが、彼は私を見ても驚かず、私との接し方も他人のような素振りだった。
忘れてしまったのだろうか?いや、自分の耳が聞こえなくなった時のことを忘れるはずがない。
だとしたら、なぜ耳が聞こえなくなったのが6年前だという嘘を言ったのだろう・・・。
彼が何も聞こえず、何も言えなくなった原因は私だ・・・私が生きたいと望んだから、自由を望んだから・・・だから彼は、私の願いを叶えるために自ら犠牲になった。私が彼の自由を奪ったも同然なんだ・・・。
闇の書のバグが修正されたその日から、ずっと会いたいと望んだ。会って謝り、償いたいとずっと思い続けた。
彼の見送りをすると言ってついてきたのも、歩き去る彼の手を無意識の内に引いたのも、彼に謝罪をするため。
なのに私の声は、私の手は、謝ろうとする時ばかりに私の言うことを聞いてくれなかった。
謝るべきなのに、償うべきなのに。そうしたら互いの何かが壊れそうだと感じて、怖くて何もできなかった。
だいぶ小さくなった彼の姿がぼやけてくる・・・。
何もできない・・・バグが治ってもやはり、私は誰かを不幸にする、呪われた存在なんだ・・・!
涙を溢れさせる顔を手で覆い、泣き崩れてしまう。
彼の姿は見えない。
だがそれは、彼が遠くに行ってしまったせいではなく、自分の視界が遮られたせいでもない。
私の・・・全部私のせいなんだ・・・・・・。
―side・out―