小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e25.アリシアとの1日





結果として、こっちの鬱が悪化した勉強会から約10日。
テストが終わり、返却されたんだが・・・。



チックショォォォォォッッ!!!

心中でそんなシャウトをしながら、俺は目の前の何枚も束ねられた用紙にシャーペンを走らせている。

まあ、早い話が赤点である。そしてペナルティーのプリントである。

赤点を取ったのは、予想通りっちゃあ予想通りの社会と英語。

社会科はまあ、記憶力の問題だし、前日の一夜漬けでなんとかしようとした俺に非がある。
けどさ、英語はないよね、存在的に。日本人は日本語だよ!!


:調子こいてるからこんなことになるのよ


アリサ、こんな時に筆談持ちかけんな。邪魔。
そう思いながらアリサが渡してきた紙を手で払う。

マテリアルズに手伝ってもらおうとも考えたけど、アイツらが書くと字がちっさくて別の人が書いたとバレちまう。だから俺が処理する他ない。

その後気合いで、帰りの前にはプリントを全て消化しきった。





帰りのホームルームも終わり、俺はいつものようにダッシュで教室の外へ――


:待ちなさい


アリサに腕を引かれ、慣性の法則に抗えず後ろに倒れた。なんかデジャヴ。


:前にも書いたが、もう一度聞くぞ。殺す気か

:前にも書いたけどもう一度書くわね。早く帰ろうとしたアンタが悪い

:早く帰ることに罪はない

:早く帰ることを決断したアンタが悪い


解せぬ。


:で、何の用だ

:また一緒に翠屋行こ!


なぜなのはが書くんだ。流れ的に見てアリサだろ普通。


:悪いが用事がある

:用事用事って、最近アンタそればっかじゃない。何やってるのよ?

:オカルト検証

:やめなさい


まず嘘である。今日にそんな予定はない。

本当の予定としては、プレシアの代わりにアリシアの迎えに聖祥小学校へ行く予定だ。

最近加わった日課だ。学校が近いこともあって、よく俺が迎えに行っている。たまに、俺の都合が合わない時はプレシアが迎えに行く。

アリシアを原作組に見られれば、面倒になること間違いなし。バレたくない。

アリサは俺を怪しんでいるのか、ジト目で見てくる。早くやめてほしい。


:アンタ、最近私達のこと避けてない?
なんか隠してるの?

:お前らの場合、隠しきる前に辞書ハンマーで吐かせようとするだろ


グーパンされた。

アリサ、勘が鋭いな・・・どこまで隠し通せるか・・・というか、転校するか?


:キリヲ君、お前らって何?“ら”って

:そりゃ、なのはも含んでるからに決まってるだろ


なのはからもグーパンされた。





最終的になんとか振り切り、俺は小学校の方へと向かう。

校門の前で待つ。最初の頃は、自身の格好から不審者と間違われたもんである。

・・・お、きたきた。

『キリヲおにーいちゃーんっ♪』

タックルされた。いつものことだが、抑えてほしいものだ。
頭からのタックルをかましたアリシアは、次にグリグリグリグリ頭でこすってくる。

もうなんていうか、お兄ちゃんという立場で定着しちまってる俺だ。
生まれた年で言ったらアリシアの方が先じゃないのか?
つか、アリシアはフェイトの姉で、俺はアリシアの兄、そんでもって俺とフェイトが同級生って・・・。

いろんな意味で不安になってきた。





グダグダすることなく学校から歩き出す。


:キリヲお兄ちゃん、おんぶして!

:だが断る


『ぶー、ケチー』

アリシアはいつもおんぶを要求してくるが、俺はいつも拒否してる。おんぶなんてしたら、両手が塞がって会話ができんだろ。


:そういえば、キリヲお兄ちゃんってなんで何も聞こえなくなっちゃったの?


ん、そういや言ってなかったっけ・・・。
誤魔化す・・・は、無理か。何気に勘が鋭いし、何より才能のこととか知ってるんだし。

アリシアが俺の才能のことを知ったのはテストの前日の話だ。
勉強中にひっついてきたので、第3の手で相手をしてみたら幽霊と勘違いして怖がらせてしまったのである。説明のために1時間もかかったのを覚えてる。プレシアに本気で電撃処刑されかけたのもいい思い出だ。
そこから俺の才能全9種を2人に説明した。マテリアルズは、神からすでに聞いていたらしい。

まあそんな訳で、アリシアは俺が普通の人とは違うことを知っている。そんな状態で事故だと言ってもあまり信じないだろう。事実事故じゃないし。

でも、だからって全部話すのはきついだろうな。
そうだな・・・


:願いを叶える、怖いドクロに願ったから


具体的とは言い難い事実を書いてみる。

アリシアはその答えを見て首を傾げた。


:願いを叶えてくれるのに、怖いの?

:願いを叶えてくれるから怖いんだ


再び首を傾げるアリシア。
・・・やべっ、かわいい・・・じゃなくて。

まあ、アリシアがこれの意味に気づくのはまだ当分先か、このまま気づかないかだな。


:早く帰るぞ。今日は俺の頑張りの労いでカレーだ

:ホント!?


本当だ。ペナルティーを気合いで終わらせた自分へのご褒美。


:ならおんぶして!

:なぜに

:なんでもいいの!


好きだな、俺の背中。

うーん・・・ぶっちゃけちまえば、俺が無言になってもそれは構わないけどさ・・・。


:おんぶすると、俺は会話できなくなるぞ。それでもいいのか?

:うん、シュテル達がいるから!


そうだった。


:わかった。シュテル達は他人に見られないようにしろよ

:うん!


結局おんぶしてやることになった。
俺が身を屈み、アリシアが俺の背中に抱きつく。俺の背中が気持ちいいのかどうだか、頬ずりまでしてくる。
そんな中俺は立ち上がり、歩き出す。

さっさと帰って、カレーの準備をしなくては。





さて、夕食のカレーをおいしくいただいて。

俺は胡座をかいてテレビを見ているのだが、その組んでいる脚の上にアリシアが座っている。アリシアはよく俺の前や後ろが好きなのである。
母である自分よりも俺のそばにいられて、プレシアはよく涙目である。現在プレシアは風呂に入っているからここにはいないが。
まあ俺も、小動物みたいなアリシアはまんざらでもないが。
ただ、座りながら重心を前後に移動させるのは勘弁いただきたい。

『お風呂上がったわよ。早く入ってらっしゃい』

プレシアが風呂から上がってきた。

ぶっちゃけて言うのだが、髪が濡れたプレシア、なんかそれだけで妖艶な美を感じる。

『えー、今いいところなのに〜』

アリシアが愚痴る。まあ確かに、テレビでやってる番組はいいところである。
しゃーない。ここはアリシアに譲ってやるか。


:じゃあ、俺が先に入るぞ


そう書き置く。
で、立とうとする。だが立てない。当然である。脚の上にアリシアがいるから。


:アリシア、風呂に入ってくるから、そこどいてくれるか?


そう書いた紙を見せると、アリシアはなにやら考え込み始めた。いや、早くどいてくれよ。

少ししたらアリシアが紙に何か書き出した。


:なら、私も一緒に入る!


嘘ぉぉぉ!?

ちょっ、待って!なんでそうなるの!?ちょっ、プレシア、いや、プレシア様も殺気立てないで!


:やめてくれ。主に俺のために

:えー


えー、じゃない。


:というより、なぜいきなり一緒に入ろうと思った?

:お兄ちゃんと一緒にいたいもん


ブラコン・・・なのか?

まあとにかくだ。俺は認めん、恥を知りなさい。俺のためにも。


:一緒に入ろうとすれば、間違いなくプレシアに処刑されるため断る

:しょうがないなー
じゃあシュテル達と一緒に入るね


そうしてくれ。

なんとかプレシアからの処刑を回避して、俺は風呂に入るのだった。





夜、寝る前にはラノベを読んで、だいたいそれで12時ちょい前ぐらいになって寝るんだが・・・そろそろか。

俺の部屋の扉が開く。

『キリヲお兄ちゃーん・・・』

アリシアが、開いた扉から顔を出してきた。

『勉強・・・教えてくれる?』

やっぱり。

はいはいわかりましたよーと、俺は立ち上がるのだった。



言葉で言うようにここはここ、という言い方はできないため、主に矢印や線を多用する。あまり文字は書かない。

アリシアはどうやらじっと座って勉強するより身体を動かす派のようで、勉強には苦手意識があるみたいだ。
ただ、成績が悪い訳ではない。むしろいい方だ。理解もそこそこ早く、わからないところもある程度やれば結構早くにわかるようになってくれる。

そんでもって、アリシアの勉強に付き合ってだいたい1時間弱。

アリシアは眠気に負けたようで、机の上に突っ伏して寝てしまっている。だいたい、アリシアの勉強が終わるのはこんな感じだ。

俺はアリシアを起こさないように抱きかかえ、ベッドに移す。
布団もかけてやり、これで完了っと。

・・・ん。
そして部屋から去ろうとした時、アリシアに袖を引っ張られた。
それはまるで、俺が行ってしまわないように、引き止めているかのように――



―――行かないで・・・・・・私に、謝らせて・・・!



・・・・・・っ。
・・・あぁ、何思い出してんだ、俺は。
目の前にいるのはアリシアだぞ。リインフォースじゃねぇんだ。似たようなことをされたってだけで重ね合わせてんじゃねぇよ。

アリシアの俺の袖を掴む手をほどく。
ほどかれた手はしばらく俺の手を探すように動き回っていたが、やはり寝ぼけた行動。そのうち手の動きが止まった。

・・・ふぅ、世話焼かせの妹だな、コイツは。

だからこそ、今度こそ俺が間違えることなく守りたい。そう思う。

こうして、俺は自室に戻った。

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