e27.うちの家族が全員揃ってるってことって、意外と少ないんだ
特に予定もない休日。現在はまだ午前。
暇なので居間のソファにふんぞり返る。
午前中だから、おふくろはいるし、今日は休日だからアリシアもいるし、諸事情で働きに出られないプレシアは基本家の中。マテリアルズは基本俺と行動が一緒のため家にいる。休日の午前は家族全員がいる貴重な時間なのである。
おふくろは朝食に使った食器洗い、プレシアは洗濯物干しの作業をしている。家事はこの2人でよく分担して行っている。夜おふくろが仕事に出ている時は大体プレシア担当、時々俺。
マテリアルズは現在マイホーム内。ぐっすり寝てる。
で、アリシアは・・・。
『キリヲおにーぃちゃん♪』
今し方、俺にダイブしてきた。
元気なのはいいが、頼むからもうちょっと抑えてほしい。俺の身体が保たん。
アリシアがさっきまで何をしていたのかと言うと、歯磨きと顔洗い。普段ツインテールにしているアリシアだが、まだ縛ってない。
アリシアが紙にペンを走らせ、筆談を持ちかけてきた。
:キリヲお兄ちゃん、髪縛ってくれる?
いつもと同じで♪
:わかった
俺にリボンを手渡し、アリシアは後ろを向いて俺の膝に座る。
俺はそこそこ慣れた手付きで髪を纏め、リボンで縛る。
なんていうかもう、すごい懐きようである。ここのアリシアは。こんなに懐かれるようなことしたっけか、俺?
アリシアを蘇生させたって言っても、その様子を本人が見た訳じゃないしなぁ・・・ホントになんでだ?
・・・よし、完了。9歳フェイトと同じ髪型になった。
:できたぞ
:ありがと、キリヲお兄ちゃん♪
ツインテールを触って確認してから、満面の笑顔を向けてくるアリシア。うむ、かわいい奴だ。
・・・何気にシスコン化してないか、ちょっと不安になってきた。
ああそうだ、今更だが聞いてみるとするか。
:ところでアリシア、どうして俺を兄と呼ぶんだ?
あとなぜにここまで懐くかも教えてほしい
:だめ?
:だめではないが、考えてみたら不思議だったから
アリシアはうーんとシンキングタイムに少し入ってから、答えを書き出した。
:キリヲお兄ちゃんだから!
:意味わかんねぇよ
:頼れるキリヲお兄ちゃんがいいの!
頼れる・・・?俺、そんなに頼れるのか?
頼られるのは嬉しいが・・・俺で大丈夫なのかちょっと不安だ。
そう考えている隙にアリシアは俺をソファ代わりに背中を引っ付けてきた。なんだコイツ、やるか?
俺をソファ代わりにするお仕置きにアリシアに両腕を回してがっちりホールド。力の強さとしてはアリシア基準でちょっと苦しいと思えるぐらい。
程なくして、予想通りうーうー唸りながらアリシアがじたばたしだした。だがその表情は楽しそうな笑顔である。かわいい奴め。
・・・シスコン化が随分と進んでいるようだ。
:今日はみんなで買い物に行きましょ?
俺とアリシアで戯れて、その間にプレシアと一通りの家事を終わらせたおふくろの第一声がこれだった。
ふむ、確かに買い物には行きたいな。そろそろ古傷からの出血でお釈迦になった服を買い替えたい。それに食材の買い足しとかもしなきゃだし。あ、ラノベもそろそろ新巻出てるかな?あー、あとマテリアル達が欲しがってたもの作るために必要な道具もだなー・・・。
・・・おっとっと、アリシアに引っ張られた。
『お兄ちゃん、早く行こーよ♪』
ああ、わかったわかった。だから引っ張んな。
・・・よし、行くか。
で、全員で出てデパートで色々買い物を初めて数時間後。
・・・俺さ、思うんだ。
既に古傷で出血が少ない(才能に使われる背中の部分は除いて)からって、怪我人に荷物持ちを任せるのはどうかしてるって。
しかも手が塞がっているために会話能力までもが著しく低下するという二重トラップ。おかげで嫌と言うこともできずどんどん荷物が追加されていく。第3の手?こんな場所で使えるか。
今んとこ買ったのは、食材、日用品、あとマテリアルズ用の服や家具を作るための布やら小道具etc・・・。
これらのほぼ全てを俺に持たされているのである。やばい、もう握力が。
唯一の救いはアリシア。大変そうだと荷物持ちを手伝ってくれた。持ってくれたのは一番軽いマテリアルのためのもの数点・・・それでも義妹(アリシア)の優しさに涙した。
・・・さて、次が最後の難関、服だな・・・・・・。
『ああ!似合ってるわよアリシア!』
・・・・・・・・・。
『最高よアリシア!ああ、こっち向いて・・・!』
・・・・・・。
『ああ・・・アリシアのこんな姿が見れるなんて幸せ・・・!』
やめんか。
アリシアに色んな服を勧めてはキャラ崩壊させているプレシアの頭にチョップを叩き込む。
アンタね、自分の娘がかわいいって気持ちはわかるが、だからって異常な悶え方してんじゃねーよ。
そしておふくろ、アンタも平然と次の服を選ぼうとしてんじゃねー。
・・・ん、アリシア?どした。
:どうかな、似合う?
・・・ああ、俺に意見求めてんのね。
つってもな・・・俺、あんまコーディネートセンスがあるなんて思わねーしなぁ。服なんて、買って数回使えば血がべっとりでポイだし。
:悪い、俺にはあまりよくわからない。でも似合ってるんじゃないか
正直なことを書く。
人によっては、よくわからない時はただ似合ってると言う奴もいるらしいが、所詮そんなのはただの機嫌取りにしかならない。そのうち相手もそのことに気づかれる。そうなるぐらいなら、自分からバラした方が後々楽だ。
『あ、そっか・・・でも、ありがとー♪』
わからないと言われつつも、褒められたことに笑顔になるアリシア。
その笑顔がかわいいからよしよしと頭を撫でてやる。なんていうか、俺はこういう性格の妹属性持ちが好きなようだ。なんていうか、アリシアの明るさにちょっと憧れているんだろうか。
『さて、アリシアちゃん。まだまだ色んな服を着てみようね〜♪』
『うん!』
やめい。聞いてくれないだろうけど。
そしてアリシアも。簡単に頷くな。
『どう?』
うん、結構白主体も似合うな。
麦藁帽子があればより良さそうだ。
『これは?』
まず問おう。ゴスロリなんてどこから見つけてきた。
『あぁあっ、アリシアのゴスロリ姿っ・・・今すぐ永久保存を・・・』
やめんかと、カメラを手にしたプレシアにチョップを叩き込んだ。
『アリシアちゃん、今度はこれなんてどう?』
何ナース服着せようとしてんだ。というか、なんでここにナース服なんてあんだ。
ここはコスプレ専門店なのかと疑問を持ちつつ、おふくろに手刀をめり込ませた。
『ふぅ、買った買った』
ああ、買ったな。余計なもんまで買わないようにさせるのに苦労したが。
てか、また俺が荷物持ち。もう俺の腕が爆ぜる。
『もうこんな時間か・・・レストランでお昼にしましょ?』
時間は既に12時に差し掛かっていた。
うん、それがいい。というか、そうなってほしい。というか、そうしてください。もう腕が限界だ。
そんな訳で、デパート内にあった洋食店に入っていった。
飯食ってからはすぐに帰って帰宅。
荷物をまずは居間の床に置く。やっと、腕が解放された・・・。
マテリアルズもフードの中から出てきて、伸びたりしていた。まあ、ついてきたはいいけどコイツら人前には出せないからずっと隠れてばかりだったからな。
さて、と。自分の服とかマテリアル達用のものを部屋に持っていきますか。
:キリヲお兄ちゃん、遊ぼ!
買ったものを一通り片付けてすぐ、アリシアにそんなこと言われた。
だがしかし。
:悪い、ちょっと休ませてくれ
さすがに今日は疲れた
『うー・・・』
今日は疲れてしまったためやんわり断るとアリシアはしょぼーん。
負けるな俺。俺にも限界があるんだ。休むべきなんだっ!
『アリシア、私達が相手になりましょうか?』
『うーん・・・シュテル達はちっちゃいから、遊べることも限られるしなぁ』
『あの神ぃ!なぜ元の大きさに戻れるようにしなかったのだぁぁ!!』
王様ご乱心である。
結局、アリシアは3人といつもよくやるかくれんぼをやることになった。
ちっさいマテリアル3人を探すのがとても手間取ったそうな。
おふくろは仕事に行って、残る6人で夕食。
今日の夕飯はアリシアの大好きなハンバーグだ。
アリシアが満面の笑みでハンバーグを食べる姿がまあかわいい。
・・・む、ほっぺにソースがついてしまってるぞ。ベタだな。
俺が指で取って舐める。ベタな展開。
はにかむアリシア。うむかわいい。
マテリアルズは俺のを一部分けたのを食っている。
もう口中にソースが。特にレヴィのが酷い。ティッシュでちょっと強引に拭き取る。
むーむー騒ぐな。
『むーっ!なんでアリシアにはそんなに優しくて、僕にはこんなに乱暴なのさ!』
そこまで乱暴ではなかったと思うけど。
『もういい!キリはアリシアとずっといちゃついてればいいんだー!』
勝手にふてくされた。
なんでこうなったんだ?
周りはと言うと、プレシアはあらあらと微笑ましく見てるし、ディアーチェはやれやれと呆れてるし、シュテルに至ってはもはやどうでもいいようで食事に専念してるし。
で、問題のアリシアは・・・?
『ふっふーん・・・?』
・・・なんか企んでるし。
ちょっ、いきなり抱きつくな。飯の途中だろ。
『じゃ、言われた通りキリヲお兄ちゃんとイチャイチャしてるねー♪』
はぁ!?
何考えてんのこの子は!?
『ちょっ、なんでそうなるのさ!?』
『勝手にイチャイチャしてればいいって言ったのはレヴィじゃん。だから、言われた通りキリヲお兄ちゃんにイチャイチャするもん♪』
アリシア、この歳で策士になっちまってるようである。
あーあ、シュテルとディアーチェから睨まれてるよレヴィ。
『だめーーーっ!!』
『あははっ!』
逃げるアリシア、追うレヴィ。呆れる俺を含めた残り4人。2人とも、今は飯の途中なんだから暴れんな。
騒がしいのは嫌いだが・・・まあ、こういうのならたまにはいいかもな・・・。