小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e29.投票対決の結果





投票日は全力で休みました。





14日。

今日も全力で休みたかったのだが、おそらくレヴィ辺りから事情を知ったおふくろに叩き起こされ、仕方なく登校。とりあえずレヴィには指で頭グリグリの刑をした。
廊下や教室での俺に対する視線が以前とすげー変わってる。特に女子。俗に言う黄色い視線的なものがこっちにくる。やめてくれ。こっぱずかしいから。

そして昼休み。結果発表である。
場所は体育館ステージ。そこに俺と神崎、そしてそれぞれのサイドに尾崎さんと伊集院さんがいる。・・・尾崎さんとはほとんど目を合わせていない。ついさっき一瞬目が合ってしまったのだが、その瞬間に尾崎さんがオーバーヒート。こんなことになるなら言うなよ・・・。あ、それと俺にだけ加藤先輩もついている。

司会のはやてが進めているが、生徒側の方を向く分俺に対して後ろ向きなため読唇術が使えない。そのため会長からはやてが話す内容が書かれた紙を手渡されたが、はやては確実にアドリブを入れると確信しているため見ていない。一番肝心な結果は別紙で加藤先輩が持ってるし。

ステージの壁がスクリーンとして映像が映し出される。映し出された映像、というか画像は神崎と俺で別れていて、それぞれに1年生、2年生、3年生、合計と書かれた枠がある。

さて、ルールを確認しよう。
投票者は俺と神崎、それぞれの応援スピーチに出た人を除く生徒全員。男女問わずだ。
確か一学年分の人数が1クラス30人×6で約180人。三学年揃って540人ぐらいか。
合計での投票数が多い方の勝ち。
ちなみに投票用紙にはその人を選んだ理由、逆に選ばなかった理由も書いてあり、学年ごとに発表していくとか・・・どんな鬼畜仕様なんだこれは・・・。

まあ、ざっと説明すればこんなもんである。

そうこうしているうちに、1年生の枠の中で数字がこう、発表前によくあるような高速で動いたりしている。
そして、1年生の結果が表示された。


神崎拓也   忌束キリヲ
 108    69


表示された瞬間に神崎が立ち上がってガッツポーズをしていた。そんなに嬉しいのか。どっちかっつーと、お前の言う不良に69票も入れられていることに驚くべきじゃないか?

ん、加藤先輩から1年生分の資料が手渡された。

えっと・・・?神崎に投票した理由は『チーム神崎のリーダーだから』『気軽に声をかけやすい』『親しみやすい』etc・・・。
逆に、神崎に投票しなかった奴の声は・・・『軽々し過ぎる』『はっきり言ってセクハラ』『自分をカッコよく見せようとしすぎてる』etc・・・まあ、尤もな意見だな。

で、俺に票を入れた理由は・・・『アピールタイムでの主張力に感動した』『2人の仲を応援したい』『ワルっぽいところがイカす』etc・・・。
逆には、『無口すぎて怖い』『話しづらい』『元から嫌い』etc・・・まあ、これも尤もだと言えば尤もか。
だが、票を入れた奴の2番目。そんな仲じゃねぇから。尾崎さんが勝手に口走りやがっただけだから。

表を見ている間に、2年生の票が表示された。ギリギリで加藤先輩のおかげで気づいた。


神崎拓也   忌束キリヲ
 84     96


おい、勝ってんぞ、俺。
神崎、お前以上に取ってるぞ俺。

『なっ、なにぃぃぃぃっ!?』

神崎(バカ)が叫んでいるが無視。
えっと・・・資料資料・・・。
神崎に入れた奴は・・・ああ、チーム神崎の奴らが半分ぐらいか。だいたい意見は1年とダブってるのが多いな。あと批評に『彼女に手を出そうとしていた』とかそんなん。

で、俺は・・・?・・・『古傷がカッコいい』『上半身裸に男気を感じる』『魔王と戦う(厨二設定省略)な勇者みたい』(3つとも男子の意見から抜粋)その他外見のビジュアル意見多数・・・厨二野郎共がっ!!
んだよこれ、ルックスなんて言われても全然嬉しかねーよ。魔王と激戦をしていたような跡とかさ、現実と二次元を混ぜないでくれよ。

いかん・・・このままじゃあ負ける・・・そもそも3年生の場合だとコミュニケーション力が問われるだろ。俺加藤先輩達生徒会を除いたら3年と関わってすらいないよ・・・。

まあ、とりあえず結果は見ておくか・・・。


神崎拓也   忌束キリヲ
 13     166


・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。

・・・・・・ええええええええええ!?

ちょっ、まっ、負けるどころか、圧倒的に勝ってるんですけどぉぉぉぉ!?
えっ?どういうこと!?資料見せろ!

・・・『アピールでの主張力が神がかっている』『アピールタイムに忌束君の思いが感じられた』『人を現すのに文字数や時間なんて関係ないことを思い知らされた』『アピールタイムで自分の目が覚めた』etc・・・。
加藤先輩自作の割合円グラフでは、アピールタイムでの主張性が約75%、応援スピーチタイムで動かされたが約20%、それ以前から俺が好きもしくは神崎が嫌い約5%・・・。
・・・やりすぎたぁぁぁぁ!?
やばい・・・別の意味でいかんことになってきた・・・。

神崎はこの結果を見て立ち竦んでいる・・・まずは座ってくれ。そして互いに、どの辺で俺達が間違ってしまったのか話し合おう。

俺だって、ここまでくるとは思わなかったんだよ!ここまでやりすぎる気なんてなかったよ!!

詰んだ・・・完璧なまでに俺の静寂な生活に終止符が打たれた・・・・・・。

明日から・・・・・・大丈夫なのか・・・・・・。





翌日。

現在、通学路を歩いているんだが・・・なんだ、結構普通だな。

まったく、何か変わるのかと身構えていたのが馬鹿らしくなってきたぜ・・・でもこれからまた静寂に暮らせるんなら、その結果だけでも十分・・・・・・ゴフゥッ。

タックルされた。誰だ。じゃじゃ馬嬢のアリサか?ボケ狙いのつもりのはやてか?

『おはよ、キリヲ君♪』

尾崎さんでした。なぜ。

尾崎さんはメモ帳を取り出してなにやら書き始めた。


:通学路の途中でキリヲ君の姿が見えたの。同じ道だったんだね

:そうなのか。そういや尾崎さん

:優香ね

:いや、尾崎さんの名前なら知ってるが

:優香って呼んで!


そういうことか。


:じゃあ優香、12日のあれって本気なのか?

:うん、だって、私のヒーローなんだもん


そう書く尾崎・・・じゃなくて優香の顔は少し赤く染まっていた。マジか。


:私は、キリヲ君のことが大好き。だから、これからよろしくね

:まあ、気持ちは知った


応えるかどうかは別だが。


:じゃ、一緒に行こう?


そう書いて、俺の腕に抱きついてきた。よりにもよって俺の右腕にである。
優香、そんなことされたら俺の会話能力が著しく低下するんだが・・・ゴフゥッ(2回目)。

誰だ。今度は。

『キーリーヲーくーん?何をしてるのかなー?』

すずかだった。素晴らしい笑顔を向けてくる彼女にカニバル以上の身の危険を感じるのはきっと気のせいじゃない。

『私、今日からキリヲ君の彼女になったの。だからこうするのも当然だよ♪』

気持ちを知ったと申しただけなんだが。

『むっ・・・私だって、キリヲ君のことが好きだよ!』

遂に言いやがった。

ねぇ、お願いだから周りを見て・・・俺、恥ずかしさで死んじゃうから・・・。

『甘い甘い♪私は好き程度じゃなくって、大好きって告白したんだから♪』

『むーーっ!!』

二次創作を読む人は一度は憧れる、ハーレムという立場。
だが現実はこれだ。

いがみ合う女子。周囲からの嫉妬や敵意の視線。そしてさり気に奪われる自由。胃に穴が開きそうでとか、そんな次元じゃない。

い、胃が・・・胃が消えるっ・・・!!

静寂以前に・・・無事にいられる・・・のか・・・?

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