e30.人気者とか席替えとか再び翠屋とか
教室に着くと、早速加藤先輩に会った。チーム神崎について報告したかったそうだ。
チーム神崎はあの対決でかなりの影響を受けたらしい。具体的な例を上げれば大人数のチーム脱退。特に女子。ほぼ完全に野郎チームになってしまった訳だ。それでもまだいるが。
:彼らも、これから少しは大人しくなってくれると思う。ありがとう
:その代償として俺の命がマッハなんですが
俺の教室にまでついてきたすずかと優香(未だにいがみ合っている)。神崎組の野郎達から伝わってくる殺気。なんか教室の外にいる女子からの黄色い視線。
今更なんだが、本当に休めばよかった。
ここまで変わられちゃあ誰でもそう思う。俺は静寂に暮らしたいのに・・・。
一体俺はどこで間違えた?
:でもあまりの反響に君のファンクラブができたのは想定外だったな。また忙しくなりそうだ。
ちょっと待て。
今とんでもない一文を見た気がしたぞ。
:ファンクラブってなんすか
:理不尽\隊って名前の、君のファンクラブだよ。昨日からすでにメンバーが集まりだしている。クラブの名前はこうだけど、普通のファンクラブとやってることは同じだよ
ネーミングセンスはこの際どうでもいいとして、なぜにこうなった。
理不尽\・・・やっぱあれか。アピールタイムのあれがいけなかったのか。
こんなところに留まっていたら、俺の精神が底尽きるのは明白。
:俺、転校したら彼女つくるんだ
:それは転校不可能だと言ってるようなものだよ
オワタ。
その後加藤先輩やすずか、優香は自分の教室のところに戻っていき、やっと落ち着けるようになった。
:人気者ね、アンタ
:羨ましいならこんな称号くれてやる
:別にいらない
アリサに話しかけられたので返事と同時に助けを求めたが、見事に切られた。
というかアリサ、今日はなんだか機嫌が悪くないか?
:アリサ、今日何かあったのか?
:別に。アンタはいいわよね、美少女に抱きつかれながら登校できて
:先程までの光景を思い出してから、自分の言ったことのどこが間違ってるかを確認しようか
どこがいいんだよ、あんな状況。
ドロドロな取り合いに嫉妬と殺気。俺の精神が保たんわ。
アリサは(多分)鼻を鳴らした後、そっぽを向いた。何なんだこれ。
:でもすごかったよね、あのアピール
私も思わず息を飲んじゃったもん
なのはは俺の間違いをすごかったの一言で終わらせてやがる。
:光栄だが今の俺にとって嬉しくない評価をどうも
くそ、どの辺で主張性を上げすぎたんだ、あれ
:元からすごかったと思うよ
それを押したのがあの古傷かな。あれ、本当に本物なの?
偽物の傷からどうやって出血する。
かなり動いた分結構痛かったんだぞ、あれ。
:でも、これで拓也君のあのグループが落ち着いてくれるんだよね?
:大した変わりないグループが結成されたらしいがな
というか今回、徹底的に俺が生贄にされただけな気がする
:諦めなければ、きっといいことがあるよ!
もはやいいことの基準がわからないんだが。
LHRとは。
L・・・レモンの輪切りをしてて、
H・・・人差し指切っちゃって、
R・・・流血!
の、略である。嘘である。銀○先生のネタである。正確にはロングホームルームの略である。週に1回行われているのである。
そして現在、そのLHRの時間なのである。
『今回のLHRは席替えにすんぞー』
やる気のない我らが担任の一言に活気と、期待の声があちこちから出てくる。俺には聞こえないけど。
俺の場合・・・席はどこでもいいや。原作キャラが近くにいなければ。願わくはなのはやアリサは極力避けたい。真横に来られた場合には俺の静寂が砕ける。
夢日記が発動する度にガッだぜ?よく今まで保った俺。いい席に当たっていいんだよ。
『忌束ー、引けー』
おっと、くじを引く順番が来たようだ。
・・・燃えろ!俺の何か!!
なーーーーー
:ぜーーーーー
:何なのかわからないよ
何かあったの?大丈夫?
大丈夫じゃねっす。まだマシな方だけど。
フェイトとお隣さんになりました。
フェイト、今もう執務官やってんのか?もし観察眼スキルがあるとしたらなのはよりもタチが悪い。
俺の席は窓側から数えて2列目の最後尾。右隣にフェイト。
アリサは廊下側の前から2番目。かなり距離を離すことに成功した。なのははフェイトとアリサの中間ぐらい。2人が突っかかってくることはないだろう。
まあ、フェイトは字が綺麗だし、これから筆談をしていきたいという願望はあったりしたしバレさえしなければ問題ないか。
『そんじゃあ、今日のLHRは終わりっつーことで。騒がしくすんなよー』
どんだけやる気のない教師なんだアンタ。
・・・ぬ、眠気。これは・・・ちょうどいいや・・・・・・ZZZ。
―side・フェイト―
席替えが済んでからほどなくして、もうキリヲは寝ちゃった・・・。
LHRは終わりになったけど、起こした方がいいかな?
なのははよくすずかの教え通りに辞典で叩いていたけど、さすがにあれはちょっと・・・あの鈍い痛そうな音を聞く度に大丈夫か心配になったし。
とりあえず揺すってみる。
・・・だめ、起きそうにない・・・どうすればいいのかな。できるだけ痛い思いはさせたくないし・・・・・・あれ?
・・・キリヲの左手・・・動いてる?
うーん・・・うつぶせに寝ているキリヲの体が邪魔でよく見えない・・・でも寝てるのに左手が動くって変だよね・・・やっぱ起きてるのかな?
あ、左手止まった・・・。
・・・・・・・・・。
あ、起きた。眠そうにしてるけど、やっぱり寝ていたのかな。
そしてキリヲは机の左側に置かれていた・・・日記?それを手にとってジッと見ていた。
・・・程なくして閉じた。
うーん、何なんだろう?もし今度同じことがあったら聞こうかな?
―side・out―
さて、帰りのホームルームも終わり、後は帰るだけだ。
すでに帰る準備は済んでいる。
嫌な予感がするのでダッシュで帰る!
『キリヲくーん!!』
待ち伏せタックルっ!?
教室に出てすぐに、待ち伏せていた優香に抱きつかれた俺であった。
:一緒に帰ろ!
:わかったから抱きつくな
周囲の視線がつらい
:やだよ
キリヲ君に抱きついていたいもん
なぜこうなった。
:それと、翠屋って言う喫茶店があるんだけど、そこに寄らない?あそこのケーキすごくおいしいよ!
:誘い文句がアリサとほぼ同じ件について
アイツも誘い文句にケーキという単語を使ってた気がする。
・・・ん?空気が変わった。
:キリヲ君、アリサちゃんもオトしてるんだ
:何のことだ
いつの間にか瞳が単色化している優香に冷や汗。
まず俺は誰をオトした覚えもない。
:せっかく理不尽\隊の女子隊長がいるのに、キリヲ君はずるいよ
ちょっと待て。
今とんでもない一文を(ry。
:優香が隊長だと?
:うん
なんてこった。敵は近くに潜んでいたとは。
:男子隊長は勿論キリヲ君ね
:まずその集団に入ることすら言ってないのだが
:いいの!
俺がよくないん・・・ゴフゥ。
いい加減にしてくれ。今日だけで4回目になるぞ、タックルされるの。
てか、またすずかか。
:キリヲ君、翠屋行こう!
アンタもそれか。
それからすずかと優香で口喧嘩が勃発。内容はどちらが俺を翠屋に連れて行くかとか、どちらがキリヲの隣に相応しいかとか。
リア充展開のつらさとか以前の話をしよう。周りを考えろお前ら。
というかさ。
:俺に拒否権は
『『ない!』』
疑問に思うんだ。
こういう時の女子って、ヤケに強いってことが。
結局流され2人に連れられ、気がつけば翠屋の前。
最近は極力避けるようにしていたこの店。懐かしく感じなくもない。
ええい、今回は何事もなく済みますように・・・!
扉を開け、入店する。
『いらっしゃいませ・・・あ、すずかちゃん!キリヲ君も!』
出迎えたのは美由希さん。まあこれはいいとして、客の中には・・・。
『あ、すずかさん。久し振り〜』
・・・げっ、あの緑髪の女と黒髪の男は!!
『あ、リンディさん!クロノ君も!』
やっぱりだぁぁぁ!!
く、くそ・・・何なんだこのエンカウント率は・・・テメッ、神!俺なんかしたのか!?
しかも美由希さんとすずかの先導で2人と近い席に着いてしまった。
とりあえずいつものを頼んで、さっさと食って素早く脱出するが吉と見た。
・・・ん?なんだすずか。
:紹介するね
リンディさんとクロノ君
フェイトちゃんの家族だよ
俺は逃げ場を失った。
もう、なるようになれ・・・。
:忌束キリヲです
ちょっとした事情で音が聞こえませんが読唇術があるのであしからず
:リンディ・ハラオウンです
あなたのこと、フェイトから結構聞いてますよ
:クロノ・ハラオウンだ
優香は普通に自己紹介をした後、すずか、リンディと談笑し始める。
あとクロノ。いつも無限書庫に地獄の資料請求ありがとね。おかげで俺まで駆り出されてストレスもマッハだよ。
:クロノ、お前を見ていたらなんだかムカついてきた。1回投げさせろ
『なんでそうなる!?というか、答えも聞かずに掴みかかろうとするな!!』
許可があればいいのか?
あ、ちょっ、リンディさん、それ俺が頼んだシュークリーム!勝手に食べないで!てか、優香とすずかも何勝手に食ってんの!?
そしてクロノ、テメーは逃げてんじゃねー!!
数分後
クロノと2人揃って士郎さんに怒られました。
店で暴れられたら困るのは当然なので、反論はできない。
:元気なのはいいけど、暴れたらだめだぞ。わかったね
:すいません
素直に謝り、解放された後席に戻る。
・・・シュークリーム・・・なくなってやがる・・・。
シュークリームを再度注文してから座る。
:ごめんねキリヲ君
怒ってない?
:すずか、謝ってくれるのはいいが謝罪の順番がおかしい
一番食ってたリンディさんが一番に謝罪すべきだと思う
:気にしたら負けよ?
アンタホントに大人なのか。
:ところで、キリヲさんは甘いものが好きだって話を聞きましたけど、どのくらい?
:味覚が変にならない程度です
確か俗称で“リンディ茶”とか呼ばれる甘ったるいお茶があったはず。そんなもん飲めるほど甘党ではない。というか、甘党ですらない。ちょっと甘いものが好きなだけだ。
:そう
あなたと共感できないか、ちょっと期待してたんだけど
:音がない俺にとって、味覚は1つの大事な自由なんで
飲まそうと思ってたんか。
動きの自由も限られている中、俺に残された自由と言えば視覚と味覚ぐらいである。それを失われたら堪ったもんじゃない。
てかクロノ。お前はさっきから何考えている。
『忌束キリヲ・・・・・・おかしいな、本局のどこかで聞いた気がする・・・』
ギクッ
・・・・・・ユーノくーん?誰にも言わないようにって言ったよねー?他の司書達もー・・・。
どうしてクロノの耳に入ってるんだーい?
本人は小さな呟きだと思うが、こっちには丸聞こえである。
・・・って、ちょっ!
:優香、何また俺のシュークリーム勝手に食ってんだ
:ごめんね♪
無邪気そうに笑って、かわいらしさで誤魔化そうという算段のようだがな、さすがに限界というものがあるのだよ人には。
:勝手に食う罰だ
あのデラックスケーキを奢れ
:対価で抑えて!
お前が悪い。
・・・と言いたいが、まあ冗談だ。さすがにそこまで俺は酷い奴じゃない。
:冗談だ
:そう?よかった
:女の子にそんな脅しつけるものじゃないですよ
:アンタは謝れ
どんだけフリーダムなんだリンディさんは。
・・・おっと、もうこんな時間か。
:ではそろそろお暇するか
俺が頼んだシュークリームの分は置いておくから
:うん、またね
おうすずか。
次からはもうちょっと抑えるようにしてくれよ。俺の身体が保たんから。
最後にお土産としてシュークリーム12個入りの箱を買って翠屋を後にした。
シュークリームは晩御飯の後、家族7人揃っておいしくいただいた。