小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e34.侵食





暗闇の中。



目の前には、リインフォースの姿が見える。
うずくまって、何かに怯えた様子だ。



続いて自分の手を見る。
手が真っ黒だ・・・影(シャドー)化・・・なのか・・・?



―――オ前ノセイダ・・・。



不意に、音を失っているはずの俺に、絶望に染まったような声が響いてきた。



身体が勝手に動く。
勝手に腕が、リインフォースへと伸びていく。



―――オ前ノセイデ、俺ハ自由ヲ失ッタンダ・・・!



・・・黙れ。



止まれよ・・・。



―――殺ス。



黙れっつってんだこの異物。



人の身体を、勝手に動かしてんじゃねぇ・・・!



―――コイツヲ、殺ス。俺ノ自由ヲ奪ッタコノ女ヲ殺ス!



やめろ、やめろ、やめろっ!



リインフォースに手を出すな!リインフォースは悪くない!



俺の命令を聞けっ、すぐにやめろ!










―――殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺スッッ!!!!



やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおっっ!!!










―――っっ!!!!

・・・・・・・・・。

・・・・・・ここは・・・居間、か・・・?

さっきのは・・・・・・夢?
それともまさか・・・・・・俺が予知した、未来・・・?

っ・・・・・・寒いなっ・・・視界も暗い。
影(シャドー)化は、進行してるのか・・・?それとも、留まってるのか?

えっと、場所は居間の、ソファの上・・・どうやらあのまま寝ちまってたみたいだな・・・。
身体が随分軽い・・・プレシアが頑張ってくれたみたいだ。

えっと、後は・・・。





・・・・・・ったく。

アリシアにシュテル、レヴィ、ディアーチェ・・・プレシアまで。
何俺に寄り添う形で寝てんだか。風邪引くぞ?

でもまあ・・・すごく嬉しい。

最低な上に現金な人みたいだな俺は。そばにいてくれてると知って、嬉しがっているんだから。
ただ・・・起き上がりづらいなぁ。アリシアが俺に覆い被さるようにして寝てるんだから。起こさないようにする自信があまりない。


:おはようキリヲ
気分はどう?


ん・・・・・・おふくろか。

顔を上げて確認すると、エプロンを身につけたおふくろが微笑みかけてきた。どうやら、朝食を作っている途中らしい。


:多分過去最悪の寝起き
どのぐらい斑点ついてる?というか、何割ぐらいが斑点に侵食されてる?

:何割とかそう表すほどでもないわ
シャドー化っていうのについてシュテル達から聞いたけど、進行は少し落ち着いてるみたい


・・・そうか。

コイツらには感謝しないとな。プレシアが回復魔法をかけてくれて、アリシアやマテリアル達がそばにいてくれたから、影(シャドー)化の進行も留まっているらしい。


:今日からちょっと学校休む?
まだつらいだろうし、こんな斑点があるまま登校したら、色々危ないでしょ?

:ああ、頼む

:じゃ、そういうことを先生に連絡しておくわね
あと、もうちょっとで朝ご飯ができるからね


そう書いた後、おふくろは台所の方へと去っていった。

しばらく学校は休みか・・・当然だろうな。こんな状態で登校したら、奇異の眼差しが飛んでくるに違いないし、裏人格が現れると危険だ。

それに俺も、さすがに原作組と会う気になれない。

原作組と会ったら、関連づけてリインフォースのことを思い出しそうになるから。
そして、たった昨日言ったことを思い出すかもしれないから。



―――呪われた魔導書である貴様に、償えるものなど何もないわっ!!



・・・こんなはずじゃなかったんだ。

俺のことは気にしなくていいって、そう言いたかっただけだったのに。

一体どこから、どうして間違えたんだろう。

リインフォースに説得しようと思った時から?
ロードの姿で彼女の前に出ようと考えた時から?
面と向かって再会した時に、本当のことを話すチャンスを無駄にした時から?
カニバルの腹に潜り込んだ時、リインフォースを目覚めさせて再会しようとしなかった時から?
リインフォースのバグを治してから、彼女を避け続けた時から?
俺がドクロを使ってリインフォースを救おうと考えた時から?
俺が理不尽への復讐を決めた時から?
・・・俺が、この世界に転生した時から?

もしも、if、仮説・・・考えようとすればいくらでも出てくる。
出てきた分だけ、俺は間違えた可能性が見えてくる。

全部あってるなんてことは有り得ない。
だが、全部間違っていたという可能性は考えられる。

俺がもし、原作に関わらなければ。俺がもし、転生なんてしなければ。
原作通りに無印を済ませれば、俺はフェイトの苦しみを想像することはなかったのか?
原作通りにA’sを済ませれば、彼女が逝くことができれば、彼女は苦しまずに済んだのか?
俺はこんなに悩まずに済んだのか?
俺さえいなければ――



辺りが黒くなる。自分が黒くなっていく。黒く暗く冷たくなってくる。真っ黒な連載が起きる。

・・・・・・もう嫌だ。

誰か助けてくれ・・・。

こんな思いは嫌なんだ。
もう俺は、誰も苦しめたくないんだ。

誰か助けて・・・俺を、この暗い闇の中から出してくれ・・・・・・。

誰か・・・・・・誰か・・・・・・・・・。










闇は深く、俺を蝕んでいく。

-36-
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