小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e36.追跡開始直前





7月4日。今日も体調が良く学校に行けることになった。
昨日、家に帰った後で影(シャドー)化が起きたものの、案外すぐに収まった。
最近はあまり影(シャドー)化が起きない、もしくは起きてもすぐに収まることが多い。なぜなのかはわからないが、なんとかなっているのならそれで良しだ。
ただ、影(シャドー)化が収まるとはあくまで黒い斑点が出てこないってだけの話で、若干の寒気やだるさが困りものなんだけど・・・まあ、これらもまだ耐えられる。

このまま影(シャドー)に呑まれることがなくなってしまえば、後はいつもの日常に戻るだけだ。
音のない世界で、いつものように授業中は寝て、昼休みや放課後には夢日記に書かれた予知を阻止して、帰ってからはアリシアがじゃれてきて、大火星王の宴に来た依頼を確認・遂行して・・・最近では、すずかと優香がよく喧嘩してるな。そして、できるだけ管理局の魔導師達とは・・・リインフォースとは関わらないようにする、そんな日常に。
そう・・・それでいいんだ・・・何もなかった過去に戻ってしまえば、それで・・・・・・

変わってしまうことに、恐れる必要もなくなるんだから・・・。





―side・三人称―


5時間目終了後の休み時間、屋上。

昼休みは弁当を食べたり、談笑したりする生徒で賑わっているこの場所も、授業と授業の間の時間となれば来る人はいない。
だが今、この場にはなのは、フェイト、はやて――管理局員の3人が集まっていた。
神崎拓也の姿はない。昨日に続いて任務があるためだ。常人離れした力を持つ故に任務の数が多く危険の高いものが多く、なのは達以上に多忙だったりする。

「みんな、準備はできてるね?」

フェイトが2人に尋ねる。

「うん。ばっちり」

「こっちも。サーチャーもちゃんと稼働してるし、もし何かあってもシグナム達がいつでも出れる。あ、でもフェイトちゃん・・・」

「何?はやて」

「リインフォースも追跡に入れてくれへんかな。やっぱりリインフォース、キリヲ君と何かあったみたいなんよ。それが何なのかまでは聞けへんかったけど」

はやての頼み、それはリインフォースの追加。
はやては昨日の彼女の頼みを聞き入れたのだった。そして確認のために、ここで聞くことにしたのである。

「・・・うん、わかった。リインフォースは放課後に校門まで来てくれるんだよね?」

「うん」

フェイトははやての頼みを了承した。リインフォースの参加はこの追跡調査に問題ないと判断したようである。

「でも・・・これでもしキリヲ君が悪いことをしていたって、それで逮捕になったらすずかちゃんやあの人・・・優香ちゃんだっけ。2人ともきっと悲しむよね・・・」

「だろうね・・・だけど本当にそうなら、管理局としてそれを見逃す訳にはいかないよ」

「うん、わかってる。わかってるけど・・・」

表情を曇らせるなのは。

やはり相手が知り合いとだけあって、抵抗感が抜けない様子。
が、いつまでもそうしている訳にもいかず、なのはは少し深呼吸し、気持ちを切り替える。

何も、まだキリヲが犯罪を犯したというのが決まった訳ではないのだ。無断渡航の可能性は高いが。
それに、今回の目的はキリヲの逮捕ではない。あの日記に書かれた『かにばる』の意味、そしてそれが、最近問題になっているあのカニバルだったら、それについての情報収集。攻撃が効かない、あの怪人をどうやったら止められるのかを聞き出せばそれで十分なのだ。はやての場合、キリヲとリインフォースの関係も調べるつもりのようだが。

「それじゃ、また放課後に昇降口でね」

「うん。はやてちゃん、キリヲ君はいつも早く帰ろうとするから、早く来てね」

「うん、わかった」

最後にフェイトが放課後の集合場所を、なのはがはやてに忠告してから屋上出入り口へと向かう。

前述でも記したが、今は授業と授業の間の休み時間。そんなに長い時間はいられない。

授業に遅れないように早足で出入り口に向かい、扉を開ける。

「「「あ」」」

「「「・・・・・・」」」

ドアノブを掴んだまま、フェイトが固まった。どうしたものかとフェイトの奥を覗き込んだなのは、はやても同様に固まる。

果たして3人の目の前には、アリサ、すずか、優香の3人がいた。

「えっと・・・3人とも、こんな所で何してるの?」

「それ、どっちかって言うと私達の台詞」

顔をひきつらせながらフェイトが尋ねたが、アリサの言葉に早速言い返せなくなる。
まさか「キリヲの追跡調査の会議をしてました」なんて言えない。魔法のことを知っている2人ならまだしも、優香もいるのだ。

「えぇと・・・いつからいたの?」

「3人の後をついていって、屋上に出たのを確認してすぐだから・・・結構最初から・・・」

「その、すいません。ほとんど全部聞いちゃいました・・・」

続いてなのはの質問に、バツが悪そうにすずか、優香と答えた。

「というか、優香ちゃんもいるのは・・・なして?」

「授業が終わった後すぐに高町さんとハラオウンさん、八神さんがどこか行くのが見えて、それから月村さんとバニングスさんが追うようについていってたから、気になって・・・」

「アタシ達も3人揃って急にどっか行っちゃうから気になって、それでここまで追って来た時に気づいたらいてね・・・」

最後にはやてが尋ねると、急に揃って教室を出て行った5人が気になってのことだったらしい。ちなみに1組のはずなのになぜ5人の動きを見たのかと言えば、たまたま休み時間を利用してキリヲを会いに行こうとしていたらしい。
それと一緒に、ため息混じりにアリサも経緯を話した。

話を聞いて魔導師3人は半ば呆れた様子だった。

「そ、それで、3人が話していたことなんですけど・・・」

「!え、えっとね優香ちゃん、あれは・・・」

が、優香の言葉で魔導師組に焦りが生まれる。

魔法を知らない一般人に、魔法のことは言わずにどうやって切り抜けるか・・・話を聞かれた以上、切り抜けることが難しい。

「あ、あの!」

だがここで、優香が動いた。

「私も、それに連れて行ってください!」

「「「「「!?」」」」」

優香からの同行の願い。これには魔導師組だけでなくアリサとすずかまでも驚いた。

「優香、でもそれは・・・」

「そうや。それに、あまり多くは言えへんけど・・・危ないかもしれへん」

「あなた達が何を考えてるかはわかりませんが・・・それでも、聞いた以上は知りたいんです!キリヲ君が本当に悪いことをしているのかどうかを!」

「あの、なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん!私も連れてって!お願い!」

「でも・・・」

なおも渋るのはなのは。しかし、

「・・・わかったよ」

「フェイトちゃん!?」

「ちょ、それ本気なん!?」

(バレた以上、勝手についてきてくるかもしれない。なら、私達が守れるようにしたらいいと思う)

驚く2人に、フェイトは念話でそう告げた。
確かに今ここでだめだと言っても、ついてくる可能性がある。しかもすずかの場合はキリヲの家を知っているため、先回りすることだって可能だ。
そうなった場合に怖いのが、もし戦闘になった時に巻き添えになる可能性があることだ。勿論、戦闘になったら結界は張るのだが、結界を張るまでに巻き添えをくらってしまったら元も子もない。ならばその間も守れるようにすれば、危険は少なくなる。

「けど、さっきはやてが言ってたように危険かもしれない。だから、危なくなったら必ず逃げて」

「「うん」」

「・・・で、アリサはどうするの?」

「乗りかかった船だし、友達が危ないかもしれないところに行くっていうのに、それを見過ごすことはできないわ。アタシも行くわよ」

「わかった。じゃあ、放課後に昇降口に集合、そこからリインフォースとも合流してキリヲを追跡するよ」

「「「「「うん!」」」」」










すれ違い続ける2人。始まる追跡調査。

追跡調査の先にあるのは、2人にとっての再会か。

それとも、悲劇か。


―side・out―










7がつ4にち

みんなとかくれんぼしました。

ぼくはみんながしってるあのばしょにかくれました。

でもだれもみつけてくれなくて、まっくろになりました。

-38-
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