小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e42.キリヲ救出作戦





―side・シュテル―


さて、私達5人は自宅に到着しました。

家にあがり、まずはアリシアに明日の準備をさせます。
アリシアが鞄に勉強道具を入れていき、最後にチェックもして、準備完了。
・・・あとは特に、やることはないですね。夕食はアースラで取りましたし。

とりあえずは、5人でテレビでも見ます。
しかしそこには談笑という雰囲気はなく、エイミィがあれこれと模索しますが、この雰囲気は変わらず。
アリシアも、キリヲや母親がいないために暗く、俯いてばかりでした。

結局はそのまま、後は3人が歯を磨いて(アースラの2人は歯磨きを持参してきてました)そのまま就寝となりました。
さすがに雑魚寝はないので、クロノとエイミィはそれぞれノゾミ様とプレシアが使う寝室を借りることとなりました。





・・・・・・。










・・・・・・・・・。










・・・・・・・・・そろそろでしょうか。










「レヴィ、起きてますか?というか、起きてください。というより、起きていなさい」

模型の家、寝室部。
3人が寝静まったであろう頃合いを見計らって、レヴィを起こします。
というか、あなたまで寝てどうするんですか。あなたは起きてもらわなければ困ります。

「う〜ん・・・」

「起 き な さ い」

「イダダダダッ!?起きるっ、今起きるから!髪強く引っ張んないでぇ〜っ!」

レヴィが涙目になりながら起き上がります。
全く・・・キリヲの未来に関わる大事なことだと言うのに・・・。

「何をやってるのですか。こんな一大事の時に・・・」

「うぅ〜、ごめんシュテるん・・・」

「はぁ・・・とにかく、急ぎましょう。他の者達が寝ている今の内に、笛を探すのです」

「うん・・・急ごう・・・!」

そして互いにそれぞれ手に魔力光を纏わせ、それを明かり代わりにキリヲの部屋を探索します。
探すのは、以前神から貰った笛・・・ホイッスルみたいな小さな笛です。

キリヲを救う方法は、至ってシンプル。
笛を見つけ出し、それで神の元へ行ってキリヲの影(シャドー)化を治してもらうこと。

しかし問題は、その笛の使用権を私達が行使すること。
元々キリヲのためのものであるその笛を私達が使った場合、何が起こるかわからない。神の元へ辿り着けたとしても、私達の頼みを聞き入れてもらえる保証がない。
私達が無事に帰してもらえる保証も、ない。

なので、万一のためにも王だけは残し、私達2人だけで笛の捜索ということにしました。
この、キリヲの部屋のどこにあるのか、それはわかりません。しかし、どうにかして見つけ出します、絶対に・・・!

その決意を胸に、暗い部屋の中探索を開始しました。





――7時間後――

「全然見つからないよシュテるん〜!」

「参りましたね・・・」

もう夜が明け始めているというのに、笛は全く見つかりません。
調べられる範囲・・・力のいる引き出し以外は手当たり次第全て隈無く調べ尽くしました。それでも見つかりません。
となれば、あと残るのはどこかの引き出しの中・・・

「今回はここまでにして、今日の夜また探索を再開しましょう。時間的にもう限界です」

「うん・・・」

日中は3人が起きていますし、何より平日は学校もあります。
建て前上、私達は護衛としてアリシアについて行かなければなりません。
なので今回はここまで、次回に持ち越しになります。
しかし急がなければ・・・キリヲがあの状態のままでいつまでも保っていくことはできませんから・・・。


―side・out―





―side・アリシア―


いつもお母さんに作ってもらってるお弁当を、エイミィさんに作ってもらって、シュテルとレヴィをポケットに入れて、1人で学校へ。
昨日突然休んだことを友達に心配されたけど、なんとか誤魔化すことができた。

けど、授業中にキリヲお兄ちゃんのことを思ってボーっとしちゃって、それで先生に注意されたりして・・・。
キリヲお兄ちゃんと一緒に暮らし始めて2ヵ月ぐらいになるけど・・・キリヲお兄ちゃんのいない日々が、とても寂しく感じた。





そんなこんなで、現在昼休み。屋上で友達と一緒にお弁当。
エイミィさんお手製のお弁当は・・・まあ、美味しい。
でもキリヲお兄ちゃんのことを考えているからか、どうしても味の感覚が薄れていっちゃう。

「アリシアちゃん?」

「・・・・・・ん、あ、えっと、何、かな?優芽(ゆめ)ちゃん」

食べながらキリヲお兄ちゃんのことを考えていたら、私のクラスメイトで友達、星野(ほしの)優芽ちゃんが声をかけてきた。
若干遅れて、それでもなんとか返事をする。

「授業中にも思ったんだけど、どうしたの?なんだかとても悲しそうだよ?」

「うん、あたしも思った。ボーっとしてて、それで先生に怒られてたよね」

優芽ちゃんの言葉に頷くのは、同じくクラスメイトの香田(こうだ)汀(なぎさ)ちゃん。
2人ともホントに優しくて、私達3人は困ってる人を見たらよく、こうして声をかけて、悩みを聞いている。
・・・まさか自分が相談役になるとは思わなかったけど。

「うん、キリヲお兄ちゃんのことでちょっと・・・」
「キリヲお兄ちゃんって、アリシアちゃんが今住ませてもらってるってところの?」

「確か今中学で、音が聞こえないとかって話だっけ」

「うん・・・そのキリヲお兄ちゃんが、ちょっと色々あって、その・・・少し遠くの病院に入院してるの」

影(シャドー)化や管理局のことはぼかして、そしてできるだけ雰囲気を和らげようと思って苦笑を作る。
けれど苦笑は意味をなさず、優芽ちゃんと汀ちゃんは悲しげな表情になった。

「遠くの病院って・・・何か深刻な病気?」

「あー、うん。ちょっとね・・・・・・でも、きっとすぐ良くなるよ!具体的な退院の時期は、わからないけど・・・」

言ってて、自分でも悲しい気持ちになっていき、俯いてしまう。

「アリシア・・・・・・よしっ」

・・・?

汀ちゃんは自分のお弁当を隣に置くと、メモ帳とペンを取り出した。

「アリシア、遠くの病院にいるってことはキリヲさんのご家族もそこにいるの?」

「え、あ・・・うん、そうだけど・・・汀ちゃん?」

「早く良くなるように、メッセージメール、作るわよ!」

言って、汀ちゃんはメモ帳にペンを走らせ出した。
『はやくよくなってね』という文字が書かれ、周りに可愛い花の絵が描かれていく。

「ほらアリシア、こっち来てっ。アリシアが真ん中で、これ持つ!優芽も早く来る!」

「え、え?」

「ふふ、うん♪」

訳がわからない内に準備が進んでいき、そして汀ちゃんが腕を伸ばして携帯を構えて・・・って、それ私の携帯!?


―――カシャッ


―――そんな機械音が鳴る。

「画質は・・・こんなもんかな?あとはメールに貼り付けて・・・・・・送信っと」

「えっと、汀ちゃん?」

「ん、何?アリシア」

「・・・今のは、何?」

「何って、早く良くなるように、さっきの写真とメッセージをメールにして送っといたんだけど?」

「早く良くなるといいね、キリヲさん」

「そういうこと♪」

言って、私に微笑みかけてくる2人の友達。
その笑顔が、とても優しくて、嬉しくて。

「・・・ぅんっ、ありが、とうっ・・・」

「ちょっと、なんでアンタが泣くのよー」

「ほら、涙拭いて」

生き返ることができて、お母さんと一緒にいられて、こんなに優しい友達もできて。
キリヲお兄ちゃんがいたから・・・キリヲお兄ちゃんのおかげで、私は、本当に幸せなんだ。
だから――早く良くなってほしい。そしてキリヲお兄ちゃんも、ずっとずっと幸せでいてほしい。

私は、そう思った。


―side・out―





―side・シュテル―


帰宅後、まずキリヲの様子を確認しにアースラを訪れてから、また自宅に戻って過ごし、就寝時間。
魔力の光を手に灯し、その光を頼りに笛探しを再開します。
これから探るのは、机の各引き出し、なのですが・・・。

「「ぬぐぐぐぐ〜〜〜っ!」」

引き出しが、重い・・・っ!
小さくなって少し不便だと思ったことは多々ありましたが、恨めしいと思ったのはこれが初めてです・・・!

「れ、レヴィ・・・もう少し・・・気張って、くださ、いっ・・・!」

「わ、わかって・・・うわぁっ!」

レヴィが手を滑らし、後ろにすっ飛んでしまいました。
少しばかり慌てて、レヴィの元へ近寄ります。

「レヴィ、大丈夫ですか?」

「うぅ〜・・・な、なんとか・・・」

レヴィは起き上がり、そして2人で再び引き出しの元へ行こうとして・・・

「・・・シュテルとレヴィ・・・何やってるの?」

「「・・・あ」」

・・・非常にマズい事態になりました。


―side・out―

-44-
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