小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e43.救出のための、願い





―side・アリシア―


今日はなんだか眠れなくって、それでなんとなくキリヲお兄ちゃんの部屋に行くことにした。
キリヲお兄ちゃんの部屋には怖いものがたくさんあるけど・・・シュテル達はそこにある模型の家で寝てるし、意外と落ち着けるかもしれない。そう思ったから。

で、そしたら・・・

「・・・シュテルとレヴィ・・・何やってるの?」

「「・・・あ」」

手元を魔力で光らせているシュテルとレヴィがいた。

「・・・・・・えっと、ですね・・・」

シュテルが目を逸らしてる・・・普段なら殆ど見ないことだ。
シュテルが目を逸らすことっていったら、殆ど致命的なことが露見した時だ。

「な、なんでもない、なんでもないよ!笛を探そうと引き出し引っ張ってたとか、そういうのじゃないから!」

「・・・笛?」

「レヴィ・・・」

「・・・あ゛っ」

レヴィがボロを出したみたい。シュテルが頭を押さえてる。
笛って、シュテル達が演奏する・・・というかできる訳がないし、何よりこんな時間に、そしてシュテル達にとって重いはずの引き出しの中に入れるはずない。
となれば・・・

「笛って、キリヲお兄ちゃんを治すのに関係あるの?」

「「・・・・・・」」

無言の2人。
それに確信を持って、私は言った。

「なら、私も探す!」

「え!?だっ、だめだよ!」

すると、レヴィがだめって言ってきた。

・・・なんで?キリヲお兄ちゃんを治すのに、その笛が必要なんでしょ・・・?
どうして・・・私はだめなの?仲間外れなの・・・?
レヴィの拒絶が悲しくなって、涙が出てくる。

「どうして・・・?」

「え、いや、それは・・・その・・・・・・」

「どうして・・・私はだめなの・・・?」

「そ、それはね!その――――っ!?」

レヴィが何か言おうとするのて、それをシュテルが遮った。

「・・・わかりました。・・・・・・笛を探すのを、手伝っていただけますか?」

「ちょっ、シュテるん!?」

「シュテル・・・・・・うん!」

シュテルの言葉にレヴィが驚いている。どうして、私が手伝うのをそんなに嫌がるんだろう。
決まるとすぐに部屋の照明を小さく灯して、その明かりを頼りに1つの引き出しを開ける。

この中に笛が・・・という訳じゃなく、キリヲお兄ちゃんがオカルト検証のために部屋を暗くする時があって、その時に使うペンライトがここにあったはず。暗い中で動ける、しっかりした明かりが必要だから。

「えーっと・・・あったあった」

見つけ出したペンライトをつけて、部屋の照明を完全に消す。
シュテル達の言動からして多分、笛のことは他の人達には知られたくないみたいだから、クロノさんやエイミィさんには気付かれないように、机の引き出しから調べてみる。





そして、どれくらい経ったかはわからないけど、何個目かの引き出しを開けた時。

「あ・・・」

色んな物と一緒に置かれていた、笛・・・というかホイッスルを見つけた。
真っ白で、何か模様が刻まれてる。

「あ、それだよ!それ!」

「やっと見つけましたね」

そう言って、シュテルとレヴィがその笛の元に降りて、2人で持ち上げる。私はその笛を取って見た。
この笛でどうやってキリヲお兄ちゃんの影(シャドー)化を治すんだろ・・・デバイス・・・は、違いそうだし、特別な何かがあるようにも・・・見えないし・・・。

「さて、後はこれをキリヲの元で吹くのですが、それは明日にして、今日は寝ましょう」

「あ、うん」

でも、これでキリヲお兄ちゃんが治るんだよね。

そう思って、安心しちゃったのかな・・・眠くなってきた・・・。

「ねぇ、シュテル、レヴィ」

「ん、なになに?」

「なんでしょうか」

「実は、ここで寝たいんだけど・・・いいかな?」

ていうか、元々はそれを目的にここに来たんだけど。

「うん、いいよ!実は僕もシュテるんだけだと寂しくってさー」

「私も構いません」

「・・・うん。じゃあ、寝るね」

2人からオッケーもらって、笛を机の上に置いて、キリヲお兄ちゃんが使ってるベッドに横たわる。
そう言えば今更だけど、怖いのに慣れたなぁ・・・最初にこの部屋見た時は腰を抜かしちゃってたのに・・・。

枕に顔を埋めて空気を吸い込む。キリヲお兄ちゃんの匂いがする。

待っててね、キリヲお兄ちゃん・・・もうすぐ、良くなるから・・・。

そして私の意識は、夢の中へと落ちていった。


―side・out―





―side・シュテル―


「・・・どう?シュテるん・・・アリシア寝たかな?」

「・・・ええ。寝たようです・・・では行きますよ」

アリシアが完全に寝たのを見計らって、私達は模型の家から出ます。
そして机の上に置かれている笛へと移動します。

アリシアに笛のことがバレるという誤算がありましたが、そのおかげで笛の発見ができたとも言えるでしょうか。
しかし、ここから先までアリシアを巻き込む訳にはいきません。

私とレヴィで、笛の口を吹きやすい位置まで持ち上げます。

「では、吹きますよレヴィ。合わせてくださいね」

「うん、シュテるんもね!せーのでいくよ!」

レヴィにタイミングを合わせるように言うと、レヴィからも同じことを言われました。
最後の問題と言うべきなのは、私達で笛を吹けるかどうか。1人では肺活量的に無理があるため、2人で一気に吹くことにしてます。

互いにアイコンタクトを取り、タイミングを合わせようとします。

そして――

「「せーのっ」」

同時に笛に口を付け、息を吹き込みました。


―――ピィィーーー・・・










 









気がつくと、私達は真っ白な空間にいました。

間違いありません。あの場所です。
私達は、ここに辿り着けた・・・。

「はいはいっ、お呼びでしょうか?って・・・」

どこからともなく現れた神が、私達を見て動きを止めました。

「・・・なぜ、あなた達がここに?笛の音が聞こえたから来たのですが・・・」

「その笛を使って、ここに来たのです」

私のその返事を聞き、神は呆れたような表情になりました。

「・・・あの笛は、忌束さんのための物で、あなた方は勝手に吹かないようにと、私言いましたよね」

ええ。私達が転生する前にそんなこと言ってましたね。

「そのキリが、今大変なことになってるんだよ!早くキリを助けて!」

「はい?」

レヴィの言葉を聞いた神は片眉を上げて、そして空間の一部を歪ませました。
歪んだ空間の奥には、影(シャドー)化に侵食されているキリヲの姿が映っていました。

「!・・・影(シャドー)化を発症なされていたんですか・・・?」

「知らなかったのですか?」

「カニバルについて調べる方に集中していたので」

カニバルについて調べるのに、そんなにかかるものなんでしょうか・・・?

「色々あって、結構あなた達にとって深刻な事態になってるっぽいんですよ」

おっと、神には読心術があるんでした。
深刻な事態・・・何があったのでしょうか・・・?

「っと、それよりまずは忌束さんの方ですね。影(シャドー)化の回復、ということでよろしいですか?」

・・・確かに、まずはこっちの方ですね。

「うん!早くキリを「少し待ってください」―――え、シュテるん?」

催促しようとするレヴィを一旦引き止める。

「ところで、今回笛を私達が使った訳ですが、新たにキリヲにもう1個、ということはことはできないのですか?」

「残念ながら、無理です。こっちも難しいものでして」

「そうですか」

「なにやってるのさシュテるん!早くキリを治してあげないと!」

「落ち着いてください。元々、神はキリヲに笛を渡す以前はどうしようと思ったのか、それはわかりますね?レヴィ」

「え?・・・うん、キリのサイレンス化を治そうとしてたんでしょ?」

それだけ覚えていれば十分です。

「ええ。つまりここで影(シャドー)化を治すように願えば、サイレンス化はもう一生治ることがなくなるでしょう」

「そんなのどうでもいいよ!それより先に影(シャドー)化を治さなきゃ――」

「ですから、この2つを同時に叶える言い方をするのです」

キリヲには勝手ですが、サイレンス化の治療ができる唯一のチャンスを使ってしまった以上、ここで治すしかありません。

私は神の方に振り返る。
そして私が考えた、この2つを同時に叶える言葉を、口にしました。



「才能を消さずに、キリヲの身体、及び精神の状態を最善の状態に治療してください」



沈黙。そればかりが過ぎていく。

何十分にも感じた数十秒後、神が口を開けました。

「なるほど・・・確かに、影(シャドー)化は病のようなものという話ですからね・・・・・・いいでしょう。その願いを叶えますよ」

「!・・・じゃあ!」

身を乗り出しそうになるレヴィ。
そして神は、私達に頷きました。

「ええ、治しますよ。影(シャドー)化もサイレンス化も。ついでに、才能に関係する背中以外の古傷も」

その言葉を聞いて、私達は飛び上がりそうな程に喜びました。すでに飛んではいますが。

これで・・・キリヲが助かる・・・!

「報告書、どうしますかねぇ・・・まあ、もう最近は珍しくないですけど」

・・・苦労、してるんですね・・・。

「それじゃ、治療はしますので、あなた達は戻ってもらいますよ」

「・・・笛を勝手に使ったことに、なんの咎めもないんですか?」

帰すという言葉を聞いて、不思議に感じて尋ねる。
キリヲが助かるという喜びで少し忘れそうになってましたが、罰を受ける覚悟はしてたのですが。

「咎めって言われても、あなた達にはカニバルを処理するという仕事があるじゃないですか。その様子だと罰の対策としてディアーチェを置いてきたみたいですけど、そんな心配は必要ありませんよ。大丈夫です。・・・私が上司にお叱りを受けるだけですので」

・・・申し訳ありません。

「ありがとー、神様!」

「ええ。それじゃあ任務、頑張ってくださいね」

神が言った直後、飛行ができなくなり、私達は穴の中へと落ちて行く。

そして、私達の意識は遠くなっていきました。





気がつくと、私達はキリヲの部屋に戻っていました。
すでに夜が明けています。時刻は・・・5時30分と少し・・・あの後、寝てしまっていたようです。

とりあえず、まだ隣で寝ているレヴィを揺さぶります。

「レヴィ、起きてください」

「う〜ん」

しばらくして、レヴィは起き上がりました。

「あれ・・・ここキリの部屋?」

「ええ。戻ってきたようです」

「そっか・・・」

「う〜ん・・・」

どうやら、アリシアも目が覚めたみたいですね。

振り返ると予想通り目を覚ましたアリシアが、現在上半身を起こして目を擦っていました。

「目が覚めましたか、アリシア」

「シュテル・・・?・・・うん」

まだ眠そうに、目を擦り続けるアリシア。

と、そこに何やらドタドタと、騒がしい足音が聞こえてきました。

足音はこちらへと近づいていき・・・そして勢いよく、大きな音を叩き出しながら扉が開かれました。

「あぁ!アリシア!ここにいたの!?」

「え、エイミィさん?」

入ってきたのは、エイミィでした。
この様子は、おそらく・・・・・・。

「大変なんだよ!今日突然キリヲ君の影(シャドー)化が治ったって話が通信で来て!でもなんだか様子がおかしいらしいの!」

「え・・・!?」

驚くアリシア。私も、おそらくはアリシアと別のところに驚いていました。疑問を持った、と言った方がよろしいでしょうか。

様子がおかしい・・・?精神の治療もするように言ったので、すぐにおかしくなることはないはずなのですが・・・。

「とにかく、早く着替えて!すぐにアースラに向かうよ!」

「え、あっ、はい!」

とにかく、私達も早く着替えましょう。
私達が着替えに行こうとした時、アリシアがこっちに顔を向けて、そして首を傾げました。

「あれ?笛がない」

「アリシア、早く着替えてエイミィの元へ。影(シャドー)化が治ったそうなので、笛はいいでしょう」

「・・・あ、うん!」

アリシアが部屋を去って行ったのを確認してから、急いで私達も着替え、そしてエイミィ、クロノと合流、すでに開かれていたアースラへのゲートをくぐりました。

しかし・・・嫌な予感がします・・・・・・一体なぜ?キリヲに何が・・・?


―side・out―

-45-
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