小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e50.キリヲ対拓也 勝負は・・・





翌日。今日も音有りとなっても大した変化がある訳じゃなく、学校が終わる。
カバンを手に廊下に出る。するとすでに、優香が待っていた。

「キリヲ君、一緒に帰ろ♪」

・・・昨日もこうだったな・・・。
まあ、別にいいか。
構わない、と返事をしようと口を開けようとする。

・・・が

「忌束ぁっ!!」

「ふぇっ!?」

「・・・・・・」

・・・後ろに振り向くと、神崎が仁王立ちしていた。
お前、廊下で大声とか出すなよ。迷惑だろうが。

「屋上に来い!今すぐにだっ!」

そう言って、神崎は歩き去っていった。
いや、普通ついて来いとか言って俺がついてくのを確認するんじゃないのか。言うだけ言って立ち去るんじゃ、無視される可能性だってあるよ。

「き、キリヲ君・・・」

「・・・はぁ。そういう訳だ、優香。悪いけど・・・」

「あ、うん。待ってるね」

いや、先に帰っててくれって言いたかったんだけど・・・いっか。

「すまん。じゃあ行ってくる」

このタイミングで呼び出すったら、一体何のいちゃもんやら・・・。
しかし神崎のやつ、やけに殺気立てていたが、なんだ?いや、いつも殺気立ててるんだけどさ。





屋上に着くと、廊下と同じく神崎が仁王立ちしていた。

「で、何の用だ?」

「お前、転生者だな!」

・・・気づいたか。
まあ、そりゃそうだよな。登録しているだけで8つの能力。怪しまない方がおかしいし。

「何言ってんだかよくわからんが・・・仮にそうだとして、そしたらお前はどうするつもりだ?」

とりあえずあしらおう。明かしても何のメリットもないんだし。

「潰す。二度と俺のなのは達に近づき、誑かそうとしないようにな・・・!」

俺のなのは達、か。

コイツは・・・

「・・・・・・いいぜ。勝負ならやってやる」

「ククッ、じゃあデバイスを起動しろよ。今持ってないなら、取りに行くのは許してやる」

神崎はニタリと笑いながらブレスレット――待機状態のデバイスを見せつけてきた。魔法戦を仕掛ける気なんだろう。
今ガーディアンは俺の手元にあるが、俺は起動する気などない。

「待てよ。誰が魔法戦をやるっつった?」

「あ?」

俺の言葉に呆けた表情になる神崎。
俺はそれを一瞥して歩き出した。

「神崎拓也。史上初のSSS+ランク魔導師。その異常なほどの魔力に加え、自身が持つ相手の能力や魔法をコピーし、性能を向上させた状態で使用できる能力からつけられた別名は、『超越者』」

「・・・・・・」

神崎の周りを大きく迂回するように歩きながら、神崎に関する情報を口にする。
これらの情報は全て、以前にも使ったあの酒場のオーナーからもらった情報だ。ホントに何でも出るもんだ。黒い噂――コイツが殺人をしたことがあるという情報もちらほらあった。多分、転生者を狩っているってことだろう。

「それに対して俺はAA程度。レアスキルがあると言っても戦闘向けじゃない。そんな状態で魔法戦なんてのをすれば負けが見えてる」

「ああ?てめぇ、負けるからって逃げる気か!」

「それに魔法戦をやれば、結界を張ろうが張らなかろうが他の魔導師が来て騒ぎになる。お前も、それは避けたいはずだ」

「・・・チッ」

神崎は舌打ちしたが、それは納得した証拠だ。・・・うまくいった。
ま、神崎が言ってたことは否定しない。
勝てないとわかって飛び込むほど、俺は正義の主人公のような頭になっていない。

「じゃあ、お前はどうするってんだ?なんかあんのかよ?」

・・・問題はここからだ。どんな勝負を持ちかけるか。
建前上では公平、それでもって俺がほぼ確実に勝てる手段・・・。

考えついでにコートのポケットに手を突っ込む。
そのとき、突っ込んだ手が何かを捕らえた。

コイツは、確か・・・・・・待てよ・・・?





―――そうだっ。

「・・・あるぜ・・・もっと単純に、もっと早く、もっと隠密にできる勝負がな・・・!」

言って俺は、カバンを開け、カバンに入っている筆箱から油性のペンを取り出した。
そしてもう1つ、ポケットから、昨日の帰りにたまたま拾って入れっぱなしだった、ゲーセンのコインを取り出す。
そしてペンのキャップを取り出し、コインの片面をペンで黒く塗り潰す。
・・・完成だ。

「コイントス・・・!コインを投げ、それの表裏を当てるだけの簡単な勝負だ。コイツの3回勝負にしようぜ・・・!」

「コイントス・・・だと・・・?」

「そ。ルールは簡単、1人が投げ、もう1人が当てる。3回、交互に行うんだ。先に2回勝った方の勝ち」

「ただし」と俺が続ける。

「すり替え防止のため、使うのは硬貨ではなく、今作ったコイツで行う。これの白面か黒面かを当てるんだ。イカサマ防止のため、投げる前には投げる方の手を見せ、挟む時は下になる方の手は開いたままにすること。これでいいな?」

「・・・・・・」

神崎は顎に手を添えて考える仕草を取った。
しばらくして、さっきと同じように笑った。

「いいぜ・・・その勝負、受けてやる・・・!」

「・・・・・・」

勝算があるって顔をしてるな。
いや、あれはどっちかって言うと、勝ちが決まったと思ってるのか・・・。

「投げか当てか、お前が決めろよ。ルールも道具も俺が用意したんだ。お前にこれくらいの権利はくれてやる」

「クククッ・・・いいんだな・・・!じゃあ・・・・・・」

まあお前の場合、9割方選ぶのは・・・





「俺は先に、当てる!」



―――当てだろうな。

まあ、当てであろうと、投げであろうと俺には関係ないんだがな。

だがこれで、奴が取る手段は大体確定した。
そして、結果もだ。

「じゃあ、投げるぜ」

神崎拓也・・・お前は、この勝負に抜け道を見つけたようだが、そこで止まってる。
そこで止まってちゃあ・・・・・・


―――ピィィィィン・・・












―――お前は、負ける。

-52-
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