小説『魔法少女リリカルなのは―ドクロを持つ転生者―』
作者:暁楓()

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e53.夏休みの課題って実際に計ると厚さは5ミリもないことが多い





あれから、神崎とのイカサマギャンブルをしたあの日から数日後。
・・・数日後とか、数ヶ月後とかいう表現って便利だよね。正確な日数を設定しなくても話を通すことができるんだから。
まあ、それはいいとして、数日後だ。

今日は、一学期の修了式。
明日から始まる夏休みに向けて、先生方から夏休みの過ごし方を長々と話されたり、量の多い課題を渡されたりする日だ。
時はすでに1時限使っての修了式を終え、担任から渡された成績表にクラスメイトが喜んだり叫んだりし、渡された課題に文句垂れるのもすでに終わっている。
・・・いるの、だが。

「・・・・・・先生」

「あん?なんだよ?」

教卓の横に招かれた俺は、今さっき渡されたものだけを視界に入れていた。いや、それ以外は何も視界に入ってこないと言った方が正しいか。
その、もの越しに担任のダルそうな声を耳にしてから、俺は問うた。

「・・・なんすか、これ」

「何って、決まってんだろーが。ペナルティーだよ、ペナ」

渡されたもの――それは、厚さが1センチを超す程はあろう紙の束だった。
それもただの紙ではなく、色んな教科の問題がびっしりと書かれている。

ペナルティー。つまり・・・

「・・・追加の課題・・・ってことっすか」

「そうだよ」

「ちなみに、どのくらいあるんですか」

「最後の日に急いでやったとしたら、俺は軽く死ねるな」

「・・・俺の夏休みは、自宅学習期間ってことですか」

「そうなるんじゃね?」

・・・・・・・・・。

「つったってよぉ、忌束。お前無断欠席が多すぎるんだよ。今月なんて登校日の半分も来てねぇじゃねーか。声を出す治療だっつーのも遅すぎるしよぉ」

銀八先生みたいにダルそうな口調から出る、もっともな話に全く反論できない。
無断欠席については、元から俺に反論の手段などなかった。さらにその上魔法関係は話せることではないため、もはや一方試合どころじゃない。すでに出来レースだ。

「無理するような量じゃねーんだし?まあ頑張れや」

反論のできない俺は、この紙の束を持って席に戻るしかなかった。
追加課題を机上に置いて席に座るなり、俺は突っ伏し、乾いた笑い声をあげた。

「ははは・・・」

終わった。始まる前から俺の夏休みが終わった。
厚さ1センチって、とんでもない量だぜ?1日、2日じゃ絶対終わらねーよ。
それにさっきチラッと確認したが、追加課題のプリントの中には『○ページから□ページまでの範囲全て』とか書かれた紙もあったから、実際にはもっと多いよ。
加えて、普通の課題なんかもあるし。
オワタ。

「キリヲ・・・大丈夫?」

「フェイト・・・嘘みたいだろこれ・・・全部課題なんだぜ?」

「う・・・私達よりも多い・・・」

フェイト達よりも・・・?
・・・ああ、なのはとフェイトも先生のところに行ってたな。2人はあれか、管理局の仕事で休んでたからその分のか。でも聞く限り、俺より少ないらしい。ちくしょう。

「キリヲ君、先生から何を渡され・・・・・・あー」

なのはがやってきた。やってきたと共に質問しようとしていたが、俺の追加課題を見て察したらしい。
うん、大体察したからその申し訳なさそうな表情やめれ。

「ちょっと、なのはやフェイトも結構渡されてたけど、アンタはどんだけもらってんのよ!?」

アリサ、お前はお前でズカズカ言ってくんじゃねぇ。もう俺のライフはとっくに0だ。

「ほっとけ。それよりお前ら揃って、なんか用でもあるのか?」

「あ、うん。キリヲ君、夏休みの始めに勉強合宿しない?」

「・・・勉強合宿?」

勉強合宿で、なぜか寺と怪談が頭に浮かんできた。
それはほっといて、まずは話を聞くことにしよう。悪い話じゃなさそうだし。

「なのはとフェイトとはやて、3人が時空管理局で仕事をするようになってから毎年恒例でね。休んだ分のペナが出てくるから、みんな集まって課題をやるって訳」

ふーん・・・そんなのをやってたのか。

「へぇ、場所は?どっか1カ所固定にしてんのか?」

「ううん。アリサやすずかの別荘とか、キャンプ場とかでやるんだ。リフレッシュも必要でしょ?」

「・・・それ、勉強合宿を名目に遊んでばっかなんじゃねーのか?」

「あうっ」

「はうっ」

フェイトの回答にツッコんでみたら、なのはとフェイトに揃って何かが突き刺さったようだった。
いや、問題の2人がそれじゃあいかんだろ。

「ちょっ、アンタら2人がそんな反応しちゃダメでしょうが!・・・大丈夫よ!今年からはあたしとすずかでスケジュールを完備したから、もう同じことにはさせないわ!というか、キリヲも3人を押さえつけるのを手伝いなさい。特に暴走しやすいはやてを」

アリサも同じ心境だったのかツッコんで、それから追加説明が入る。
え、俺って、はやてのストッパーのために誘われてる感じなの?・・・いや、考えてみりゃあり得る。だって、はやては二次でよくフリーダムな奴として書かれてたような気がするし。

まぁ・・・悪くはなさそうかな?俺だって英語や社会科についてはヘルプ使いたかったし。
行くとして、後聞くべきことを聞くか。

「日にちは?」

「キリヲにも準備があるし、明明後日からで5日間。初日と最終日は移動とかであまりできなさそうだから、実質勉強時間は3日間ね」

長いな・・・いや、量的に見たら妥当だったりするのか?

「場所は?」

「山のキャンプ場。海にしようかとも思ってたんだけど、キリヲは古傷のせいで海は無理でしょ?だから山」

うん、まあ妥当だ。
殆どが神のおかげでなくなったけど、才能である背中の古傷だけ残ってる。そこに塩を塗りたくるようなことは御免だ。

「用意するものは?」

「メールで教えるわ。あ、後でアドレス教えて。なのは達からいくらか聞いたけど、携帯はいつも持ってんでしょ?」

「まぁな」

そういや、まともに携帯が使えない時期が長く続いたから、未だにコイツらとアドレスを交換してなかったな。後でなのは達からもアドを教えてもらおうかな?

「他に来る人とかは?」

「とりあえず、これから優香も誘ってみようって思ってるわ。後はそれぞれの家族も来るってとこかしら」

「あ・・・アリサ、母さんは仕事の都合で来れないって」

「あっ、うちも・・・お父さんとお母さんは店があるからさすがに無理だって」

「ああ、そう?ならわかったわ」

「もうただキャンプ場へ遊びに行く感じになってんじゃねーか」

3人から目を背けられた。





「勉強合宿?」

「という名目のキャンプだな」

帰ってすぐ、忌束家全員を召集して学校での話を持ちかけた。すぐに話をしないと、おふくろが仕事に行っちまうし。

「うーん・・・仕事があるから、私は無理ね。あなた達で楽しんでらっしゃい」

そう言ったのはおふくろ。
まあ、仕方ないのか。5日間とは結構長い期間になるんだし。

「プレシアさん、5日間キリヲ達のことをお願いね」

「ええ、わかったわ」

今、おふくろとプレシアは隣同士なんだが・・・プレシアって何歳なんだっけ、同じぐらいにしか見えない・・・。
そう思ってたら、隣に座るアリシアが俺の肩をつついてきた。

「ねぇ、キリヲお兄ちゃん」

「ん、なんだ?」

「友達誘ってもいいかな?優芽ちゃんと汀ちゃん」

友達か・・・。よくよく考えれば、合宿の時にアリシアが浮いちまうな。
元から大人数になるんだし、子供2人増えても問題ないだろう。勿論確認は取るが。

「ああ、多分大丈夫だと思うぞ。念のために確認してからな」

「うん!」

早速有限実行。
普通の電話帳のあ行。アリサ・バニングスにプッシュ。
・・・・・・。
・・・出た。

『もしもし、どうしたの?』

「ああ、アリサ。アリシアが友達を誘いたいってことなんだがいいよな?アリシアと同い年で2人」

『ええ、構わないわよ。アンタのとこは何人行くか決まった?』

「おふくろが、仕事の関係で無理らしい。だからこっちからは3人、そしてアリシアの友達んとこの分って感じか」

『そう、わかったわ。あ、電話切った後で必要なもののリストとか集合時間とかを入れたメール、送るから』

「りょーかい。んじゃあな」

電話を切る。
少しして、メールの着信音。
メールを開く。
必要なものは・・・・・・うん、課題を持って行くこと以外は普通にキャンプに行くものと全然変わりないな。マジで遊びに行くだけだったりしないのか?


「キリヲお兄ちゃん、どうだった?」

「ん、ああ。オッケーが出た。早く誘ってやんな」

「うん!」

アリシアは立ち上がって、電話を取りに行った。

さて・・・明明後日に向けて準備でも始めますか。
あ、でも行くまでにできる限りこっちで課題埋めておいた方がいいかな・・・。

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