小説『Endless Agony -Vol. 01- 〜東西日本動乱篇〜 (執筆中)』
作者:五十嵐 繚乱()

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琥珀の飛翔の数分前…

自分達が監視されているという事もこれから起こるであろう悲劇にも気が付かずに、武装集団は個々に酒を飲んだり博打に明け暮れていた。

突然の中国政府からの支援や仕事の依頼などにより、彼らは10機あれば小国を落とせると言われる新型DAを20機以上という力と多額の資金を手に入れた。

中国政府という後ろ盾を得る前まで争っていた他の武装集団も、あまりの戦力差のため攻撃を仕掛けてくるような事もしなくなったのだ。

そして、今回も備蓄の酒が無くなったが為に最寄の町へと強奪しに行こうとDAを動かし始める。


DAを5機ほど拝借し、1列縦隊で基地の外へと出て行こうとしたところで先頭を歩いていた機体の頭上に何やら黒い物体が降って来るのを一番後ろを歩いていた機体の男が目にする。

何かと思った瞬間、先頭を歩いていた機体が一瞬にして潰れる。

同時に生々しい音が聴こえ、辺りに爆風と共に砂埃が舞い上がる。

彼らが敵襲だと理解した時には全てが遅すぎた。

砂埃の中から琥珀が凄まじいスピードで突進し、2機目のコックピットへと円錐形のランスを深々と突き刺す。

その際に発生した生命エネルギーの衝撃波により後ろの3機もバラバラに解体されていく。

紫苑の推測通り、中国製のDAの装甲はあまり強くなかった。

琥珀は動けなくなった後ろの3機に歩み寄り、それぞれのコックピットへランスを突き刺す。

彼女に情けなどない。

動けなくなった相手を嬲るという彼女の行為は残酷なのかも知れないが、彼らの今まで犯してきた行動を考えたら正解なのかもしれない。

善悪の境目など所詮その程度なのである。

5機の破壊を目にした見張り員がやっと状況を理解しサイレンを鳴らす。

非搭乗者の連中がわらわらと配置に付き、琥珀に向けてM60機関銃を連射するが、誰一人として彼女に掠り傷一つ付ける事が出来ていない。

そして、一人の男が倉庫からSMAWロケットランチャーを抱えながら走り寄ってきて琥珀に向けて発射する。

琥珀に着弾し、辺りに爆煙が舞う。

武装集団の男達は一旦、射撃を止める。

誰も一言も喋らず、誰かが息を呑む音が聴こえるほど辺りはしんと静まり返った。


「ば…化け物」


誰かの一言でやっと彼らは自分達が置かれている立場を理解する。

彼らにとって正体不明の黒い物体を化け物の一言で説明するにはあまりに説明不足すぎる事だった。

しかし彼らにはその黒い物体を化け物と言う以外に説明をする余裕など無かった。

ロケットランチャーを使う事でやっと琥珀のプロテクトスーツに掠り傷を負わせる事が出来たのだ。

男達は各々に武器を放り捨てて背走を始める。

そんな彼らに琥珀はランスを突き向ける。

ランスの先端部分が地面に落ち、ランスは巨大な砲台へと変わる。

そして背を向けて逃げ惑う男達に琥珀色のエネルギー波を放つ。


20機近くのDAが駆けつけた時には辺りは火の海と化していた。

琥珀は駆けつけた20機のDAへ向き直る。

DAの内の数機が刀剣を抜き放つと同時に、普通の人間だったら一瞬で鼓膜が破裂する程の空気の振動が辺りに鳴り響いた。


「…Purge」


琥珀が呟くと同時にランスがバラバラに展開し、中から自分の身長と同じ大きさの両手剣が現れる。

それを合図に20機と1人の戦闘が開始された。

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